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会社の4階に小さな庭がある。その136平方メートル程のささやかな庭に、狭いながら結構多種類の花木を植えてある。庭園と呼ぶには程遠いが、木々や芝生の緑、さらには運が良ければ草木の実や虫を食べに来る愛くるしい“スズメ”や“セグロセキレイ”などの小鳥も愛でる事ができ、見ているだけで少し贅沢な気分にさせてくれる。鳩も時々顔を見せてくれ
るし、時たま黒マントを羽織って訪れる烏にギョッとさせられるのもご愛敬だ。
しかも、嬉しいことに早春から今頃の季節まで比較的長い間、色とりどりの花を楽しむことも出来る。ただ、種類は多いのだが如何せん本数が少ないので公園のような華やかさはない。今の時期だと、もう盛りは過ぎたがシャラノキ(別名：夏椿）が可憐な白い花を咲かせている。今にも壊れそうなそのたたずまいに今は貴重になった“清楚な日本女性”を感じ、咲いてスグ散るその外連味のなさに“日本女性の芯の強さ”を感じてしまう。俺って古風なんだろうか？
そんな可憐な花の他に、雪解けと共に赤い花を咲かせ春を告げる椿、早春の足音を香りで届けてくれる沈丁花、植えてからまだ1回しか咲いた事がないハナズオウ、さらには花よりも紅葉が美しいドウダンツツジなど、数えてみたら9種類もの花木を植えていた。梅雨空に似合うアジサイも、プランタから植え替えたものが今では大きく成長し、目を楽しませてくれる。
シャラノキ |
沈丁花 |
ハナズオウ |
ドウダンツツジ |
アジサイ |
ツツジ |
しかし、色々な花木がある中で、植えてある本数や面積的な占有率では、ツツジが圧倒的に存在感がある。しかも、種類と日当たりの差なのか、4月の終わり頃から6月の中旬頃まで、花の大きさも色も、そして咲く場所も変え長い間楽しませてくれる。今年も大いに楽しませてもらったが、花も終わり梅雨の季節になると、気温も高くなり水分も十分補給できる為、枝葉の成長が極めて早い。暫く放って置くとアッという間に葉っぱが繁茂し、照り付ける強い日差しの下で見ると、いかにも暑苦しい。大きな面積を占有しているから尚更だ。
花が終わったら梅雨前に剪定し“お礼肥え”をやると来年もまた沢山の花を咲かせてくれるのはわかっているのだが、会社の仲間たちと世話をしている事もあって、忙しさにかまけ毎年夏直前にならないと手がつけられないでいる。今年は能登半島地震災害もあって、尚更伸び放題になってしまった。見る度に暑苦しさが増す様子が気にはなっていたが、「そろそろやらなくちゃ！」と思い続けていたら1月近く経ってしまった。
しかし、とうとう我慢できなくなって、先週の水曜日、朝と昼の僅かな時間を見つけて剪定鋏を持ち出し、“チョキチョキ”とやり始めた。にわか庭師の誕生だ。勿論我流だ。どこまで刈り込んだらいいのか皆目見当は付かないのだが、『ここら辺だろう』といった適当な判断で、まず一畝刈り込んでみてみた。センスが良いのか(？)、結構上手に刈り込めた。気を良くしてもう一山と、もう一人前の庭師気取りだ。
誰も近くにいないことをいいことに、全体を見渡して『我ながら見事だ』と独り言まで出てしまう。そうなるともう止められない。次の日も、暇を見つけては“チョキチョキ”とやり始めた。ところが、剪定は気分良くやったのだが、切り取った枝葉を熊手で集めるだけで、片付けるところまで手が回らない。一応、『夕方になったら残りも剪定しなければ』と頭の隅にインプットし、昼休みを終えた。
勤務時間も終わり『さて庭師に変身するか』と庭を除いてみると、なんとT嬢とH氏が切り取った枝葉をゴミ袋に入れ片付けてくれている。良く見ると、既に刈り取った枝葉が綺麗に片付けられている。あり難い事だ。
『すごい！ 有難う！』を連発しながら、剪定鋏をもち辺りを見回すとまだ明るい。そこで、精一杯明るい声で、一級造園の資格を持つH氏にまだ剪定していない残りがあることを告げ、今こそ有資格者の腕の見せ所である事を説明した。すると、あり難い事にH氏自らの『どうしてもやりたい』という強い申し出 (？) があり、これを直ちに聞き入れ残っていた大きな2つの畝を二人で“チョキチョキ”し始めた。素人とはいえ、二人でやると流石に速い。アオキという難物にてこずりはしたが、なんとか暗くなる前に終えることが出来た。この間T嬢は、切り落とした枝葉を丁寧に拾い集めゴミ袋に片付け、また或る時はH氏に代わって庭師へ変身と、八面六臂の活躍だ。二人には感謝、感謝だ。
ただ、H氏が持つ一級造園の資格を揺るぎないものにするには、もう少し実技が必要である事が分かった。そのためにも、次はシャラノキの剪定も頼もう。アジサイもある。きっと彼も喜ぶに違いない。
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