暑い!兎に角暑い! 8月に入り日本列島は猛暑、猛暑の毎日で、遂に1933年に山形市で記録された40.8℃の最高気温を74年ぶりに更新してしまった。15日に群馬県館林市で40.2℃を記録し「今夏初の40℃越え」と騒がれたのも束の間、翌日の16日には、埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市で40.9℃の新記録が観測されたのを皮切りに、両市を始めとする本州内陸部の5箇所で40℃を超えた。あまりの暑さに、お年寄りを中心として熱中症で亡くなる人も16日だけで10人を超えた。そして水の事故も後を絶たない。
『夏は暑いものだ』と意地を張り、止せばいいのに日光浴がてら散歩でもしようかと外に出ると、ギラギラと照りつける日差しに肌が痛い。その上、長時間炎天下にいると、連日の暑気払いが祟ったのか頭がクラクラとしてくる。やはり無茶は出来ない。
これだけ日差しが強いと、「暑い」より「熱い」が相応しく思え、やけっぱちな気分にもなってくるから不思議だ。虫たちさえもあまりの“暑さ”に熱中症でダウンしたのか、夜中に田園地帯や山中の高速道路を走ってもフロントガラスにぶつかる蛾など殆どいない。今まで殆ど経験したことがない“猛暑による珍しい恩恵”だ。オッともう一つ忘れていた。大手を振って冷えたビールが飲めるのも至極有り難い恩恵だ。
それにしても暑い! 今年の5月に書いた四方山の第203話「南高北低」で
……最近の夏を振り返ってみると、35℃は勿論、38℃さえ超す日が少しずつ増えているような気がする。だとすれば、至極順当な判断だ。ただ、もう少し先を見越せば、「猛暑日」も極一般的な発現回数になってしまい、それこそ「40℃以上」の猛暑が観測される日も近いのではないだろうか。そうなると、40℃以上の呼び名も考えておく必要があり、それに合わせて35℃を超える日の名前を付けるのが手順としては正しそうだ。
例えば、35℃以上の日を「猛暑日」とするなら、40℃以上は「熱射日」などはどうだろうか。あるいは、体温に関係付けて、35℃以上の日を「平熱日」、40℃以上を「高熱日」とするのは……
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と冗談交じりで予測した40℃越えが、早々と現実のものとなってしまった。15、16日に館林市で、16、17日には多治見市で、各々二日連続して40℃を超えたのを筆頭に、今年になって40℃以上となった延べ日数は7日を数える(15日:館林、16日:熊谷・多治見・越谷・館林・美濃、17日:多治見)。気象庁の資料では、3日続けて40℃を越えたのは初めてだという。やはり、40℃以上の日の呼び名を真剣に考えておく必要がありそうだ。
熊谷市では日本最高気温を逆手にとって観光資源にしようとする動きもあるようだが、最高気温の更新に歓声を上げてばかりいられない。報道によれば、熱中症で病院に搬送されたり亡くなったりする人が例年以上に多いという。安全だと思っていた家の中で死亡しているお年寄りの記事も目に付く。こまめに水分や塩分を補給しないと、家の中と雖も冷房設備のない部屋、特に閉め切った部屋の中では、室温が下がる事はなく熱中症になりやすい。体力のないお年寄りや乳幼児は、こまめに様子を見てやることが必要だ。
水1グラムが気化するときに必要な熱量は、気圧や水温を無視すれば凡そ0.6kcalだから、汗1ミリリットルが蒸発するとほぼ同じ0.6kcalが放散される。したがって、1リットルの汗が全て蒸発すると約600kcalの熱が放散されることになり、その分体温上昇を抑えることが出来る。最高発汗時には1時間に1〜1.5リットル、1日10リットルに及ぶというから、発汗の体温調節能力は凄い。この発汗機能によって人の体温は、個人差はあるものの概ね36.5℃前後に保たれている。「人体は小宇宙だ」と言われるのが良く分かる。
兎にも角にも、この原理を使って人間は体温調節しているわけだ。ところが、発汗作用によって同時にNaやK、Ca、Mgなどのミネラルも体外に排泄されてしまう。特に、排泄され過ぎて体内のNaが不足すると、血清電解質濃度が低下するためこれを維持しようとして脳は発汗を停止してしまうらしい。すると、気化熱が奪われなくなって、熱は体の中にこもってしまい体温は上昇し、熱中症になってしまう。そして、42℃を超える体温が数分続くと、治療を受けても死に至るケースが増えるという。体温調節機能が高いと思われる若い人でも熱中症で死亡するのはこのためだ。
普段汗をかかない人や、体力が低下していて「玉の汗」が出る人は、なおのこと要注意だそうだ。高齢者も勿論だ。しかも高齢者は、若いときと比べると元々体内の水分量が減っている為、発汗機能が低下していて暑さへの抵抗力も低い。したがって、“暑さにさらされない”のは勿論の事、こまめに水分と適度な塩分を取る事が、熱中症対策の基本だと言える。こうなると水と梅干が必需品だ。
また、生活習慣の改善・工夫を行う事によって、体を暑さに慣らしておく事も、熱中症予防対策として大事なことだ。例えば、私も実践している事だが、クーラーへの依存度を減らし、自然の風や扇風機あるいは打ち水などを利用して、少々の暑さには慣れておく事をお勧めする。少しばかり暑い思いをし、汗もかくが、それが体温調節機能を高めることに繋がるのではないかと思っている。変人扱いもされるが、結果的に熱中症のリスクを下げ、猛暑日の発現回数を抑制する事に繋がっていく事になる。
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