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『稽古?しごき?殺人?』

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2007年10月3日

最近、角界の周辺が騒々しい。週刊誌への絶好の話題提供と、テレビの視聴率をたっぷりと稼いでくれた朝青龍問題がやっと沈静化したと思っていたら、今度は力士の急死問題が持ち上がり、刑事事件に発展する様相を呈している。ワイドショーで、新聞で、そして週刊誌であれだけ騒がれていた朝青龍問題も、すっかり霞んでしまった感がある。

 

“すもう”は、「相撲」とも「角力」とも書く。使う側としてはどちらか一方に決めてくれれば楽なのに、どうした訳か両方とも残っている。一般的には「大相撲」のように「相撲」の字を使い、「角界」など歴史を感じさせる記述には「角力」が使われていると、そんな勝手な解釈をしている。単なる私の感じ方なのだが、「角力」と書く方が力強さと歴史がより伝わってくる。江戸時代の筋骨隆々とした力士の錦絵を彷彿とさせるのは、やはり“力”の字が使われているのがよい。したがって、私のこだわりとして、今回はあえて「角力」を使うことにする。

 

大辞林によれば、日本の国技とも言われる角力は、日本書紀にまで遡る事ができるほど歴史は古く、「奈良・平安時代には“相撲(すまい)の節会(せちえ)”として宮中の行事となり、江戸時代には勧進相撲が盛んになった」と説明されている。『女性を神聖な土俵に上げるのは如何なものか』と議論されるときに、必ず引合いに出される歴史的な重みの話だ。“角力道”とその道の専門家が呼ぶように精神修行の域まで進化(?)したのも、1,000年を超えて存在し続けているそのゆるぎない事実故なのだろう。

太田房江大阪府知事がどれだけ懇願しても、これまでの歴史的事実を盾に、女人禁制の重い扉は一向に開かれようとしない。『それでは……』と思ったかどうかは詳らかではないが、9月場所でかなり勇敢(?)な女性が神聖な土俵への登場を決行して、すんでのところで取り押さえれれるハプニングがあった。このときも、角力関係者は、『神聖な土俵の中には入られなかったから良かった』との感想を述べていたが、手続きを踏まずに強行突破しようとした今回の事件は別にして、もうそろそろ女人禁制の禁を解いてもいいのではないだろうか。少なくてもその体格差ゆえ、大角力に女性力士が登場することはまず有り得ない。そんなことからすると、せめて表彰する側の登壇に女性が含まれていたとしても、私としては許される。時代錯誤的な「女性は不浄」との意識を払拭してもいい頃だ。

かと言って、古い因習に縛られた世界ではあるけれど、これまで頑なに変革を拒んできた訳ではない。テレビが登場し、“栃若時代”と呼んで角力人気が高かった頃からこれまで、何度か人気凋落の危機があり、その度に「仕切り時間の変更」や「外国人力士の入門許可」など、これまでの慣習を見直し危機を乗り越えてきた。新たな人気力士の登場に負うところも大きかったが、曲がりなりにも、その時代に合わせた変革も行ってきているのだ。

ところが、今回の時津風部屋の力士急死問題では、稽古のあり方も含め、閉鎖社会の中で長年行われてきた因習が、問われようとしている。

 

日本相撲協会は財団法人だ。当然公益性が求められる。しかし、私の知っているだけで、「元横綱輪島の親方株抵当問題」や「横綱双羽黒(北尾)の立浪親方との大喧嘩とこれによる力士廃業(角界追放)事件」、「貴乃花と若乃花の兄弟確執問題」、さらには「朝青龍問題」など、現役力士として最高位まで上り詰めた人たちの問題行動がこれだけ起こっている。こうした現実を知ると、角界の因習に“公益”の文字が意識されているとは甚だ疑問だ。朝青龍問題での親方や協会の対応も、内向きだし、その上お粗末だ。常に取り沙汰されている八百長疑惑も、閉鎖社会のなせる業だ。そして、今回の急死問題だ。

日本相撲協会の発表によれば、過去10年間に現役で亡くなったのは、今回も含め5人だという(2007年9月29日、朝日新聞朝刊)。これまでの死亡原因が今回と同じように全て刑事事件疑惑があるとは決して思わないが、食事も健康管理もされているプロスポーツ選手としては、かなり多いほうだろう。しかも、試合中に不慮の事故で死亡することの多いボクシングと違い、力士が試合中に亡くなった事を聞いたことがない。閉鎖社会の中で、日々の稽古の中で、何が行われているのだろうか。相撲協会の在り方そのものが問われている。今回の事件を切っ掛けに、これまでの膿が出尽くすことを望んでいるのだが……。

 

スポーツの世界には、どんな競技であれ、シゴキと呼ばれる荒稽古や猛練習が多かれ少なかれ付いて回る。しかし、そんなシゴキも強くなるためのもので、ビール瓶で殴るのは明らかにその域を逸脱している。しかも、親代わりの師匠がやったとなれば、家庭内暴力とおんなじだ。もはや練習ではなく、立派な犯罪だ。その上、稽古場以外での兄弟子たちの暴行もあったという。いくら反抗的な態度をするからといって、暴力は絶対にいけない。

角力は格闘技である以上、負けん気の強い若者が多いことは容易に想像される。俗に言うヤンチャ坊主だ。彼らを指導するのは大変なことだと思う。ましてや、生活水準が上がり“我慢”という二文字を意識せずに育つことができる今どきの若者は、特に大変だろう。そんな彼らだからこそ、社会人、角力人としての常識を身に付けてやらなければいけない。

10月2日朝、「日本相撲協会は時津風親方を解雇した」とのニュースが流れてきた。解雇になると、角界への復帰は叶わないのだという。さらに、警察の調査が進めば、傷害致死も立件されるかもしれない。そうなった時、時津風部屋だけの問題として片付けられるのか、あるいは角界全体の問題として捉え協会の改革を断行するのか、これからも角力が国技として国民に愛されていくために残された時間は少ない。

 

【文責:知取気亭主人】

 


 

ブラシノキ
(日本名:金宝樹)
 

 

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