10月25日、43年ぶりに実施された「全国一斉の学力テスト」の結果が発表された。26日付の朝日新聞朝刊にも、全国47都道府県の成績(正答率)が掲載されていた。我々の世代も同様のテストを受けた経験があるが、のんびりしていた時代もあってか、個人レベルでは然程競争意識も無かったと記憶している。ところが今の時代、個人は勿論、クラスや学校、あるいは地域や都道府県間の競争は、教える側も教えられる側も評価を意識し過ぎるのか、結構熾烈らしい。今回のテストでもご他聞にもれずで、新聞もそれを煽るような書き方をしているから、各県の教育委員会などは大変だ。
小学6年生と中学3年生を対象にした今回のテストでは、全国で約220万人が受け、約77億円の費用が掛かったという。これだけの経費を掛けただけの価値があったのか、議論のあるところのようだが、それにも増して、成績の良し悪しに何が関連しているのか興味がそそられるところだ。色々な指標で見ると、確かに朝食を毎日食べているグループと、そうでないグループとではハッキリとした差があるようだが、都道府県間の格差は然程大きくないようだ。各都道府県の教育委員会もホット胸を撫で下ろしているに違いない。やはり義務教育で地域間格差があったとしたら、それは大変まずいことだ。
ところが、小泉内閣で実施されることに決まった「三位一体改革」では、当初から懸念されていた地域間格差が極めて大きいことが、財務省でまとめた資料で明かとなった。次表でそれをみてみよう。
上の表は、10月25日の朝日新聞朝刊に掲載された、「税源移譲と補助金削減の都道府県別収支」の表を基に、収支の上下15位までを整理し直したものだ。表中の「税源委譲額」は“収入が増えた分”、そして「国庫補助金減少額」は“収入が減った分“と読み替えてみると分かりやすい。その差が収支だ。
収支が良好な上位15位までを示した左側の表を見ると、黒字になっているのは47都道府県のうち僅か11都県で、しかもその殆どは経済が好調で元気な関東圏と中部圏の都県であることが分かる。特に関東7都県はすべて黒字だ。一方、下位15位までを示した右側の表を見ると、収支が大幅赤字になったのは、以前から財政悪化が話題にあがる大阪府を除けば、北海道、九州、東北、四国など、中央から遠く離れた地方に集中していることが明らかだ。懸念されていたとおり、中央と地方の格差がハッキリと現れている。補助金という麻薬を打ちすぎた地方自治体は、健全さを取り戻し、自然治癒力を回復するのにこれから大変だ。
税源移譲は、国税である“所得税”の税率を引き下げ、代わりに地方税である“住民税”の税率を引き上げるなどして行い、補助金の減少は“補助金”と“地方交付税”を減らすことによって行った。したがって、所得水準が高く納税者が多い都市部は税源移譲による恩恵が大きく、一方、税収が少なく補助金に頼る傾向のあった地方は補助金削減の影響をもろに受けた格好になった。要するに、お金持ちのところは益々お金持ちに、貧乏なところは益々貧乏になるということだ。
元々人口が少なく高齢化が進んだ地方では、納税者そのものが少ないため、住民税の税率を上げたとしてもその効果は薄い。折しも、日本で一番人口の少ない鳥取県は、29年ぶりに60万人を切ったという(10月25日、朝日新聞朝刊)。国税調査によれば、東京都の人口が2000年から2005年までの5年間で約50万人増えているから、乱暴な計算をすれば、鳥取県の総人口は最近6年間で増えた東京都の人口と同じことになる。しかも、人口が減った鳥取県は他の減少自治体と同じように高齢化率が高く、反対に、人口増の東京は働き盛りが増えていることは想像に難くない。当然のことながら、住民税による税収に益々差が出てくることになる。
地域間格差は、一朝一夕で埋りそうも無い。特に、補助金漬けに慣れ親しんだ地方の疲弊は、相当なものだ。どうやって疲れを癒し、体力をつけていくか、県民の知恵と行動力、そして政府も含めた首長の指導力が問われている。
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