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暦の上では立春も過ぎたのに、全国的に寒い日が続いている。金沢でも此処に来て"冬の北陸特有の天候"が続いており、15日には2年ぶりの除雪を行った。目が覚め、寝室から車の上にモッコリと積もった雪を見た途端に、気ぜわしい朝だというのに "妙な懐かしさ" がこみ上げてきた。しかし、『こりゃ大変だ』と、トラウマとなっている除雪の重労働が"寝ぼけたままの脳みそ"を覚醒させるのに時間は掛からなかった。
慌ただしく身支度を整え、除雪スコップを持って駐車場に行くと、積雪は15cm程度と意外と少ない。それでも20分ほど雪と格闘して、やっと車が出せる状態になった。"さて出発しようか"という時、『途中まで乗せてって』と娘の声。前夜にチョコッと高そうなチョコレートを貰った手前『イヤだ』とも言えず、アッシーをする事になった。無賃乗車を決め込んでいる娘を乗せ雪がチラつくなかを走っていると、朝の労働に対するご褒美なのか、これから始まる現実の世界を忘れさせてくれるような、美しい景色が目に飛び込んできた。
濡れて黒褐色になった木々の幹や枝に、真綿のように優しく積もった新雪が、雪が舞い散る薄明かりの中でひと際白く浮き上がり、幻想的な世界を醸し出している。暗く陰湿になりがちな雪の降る街を魔法でお伽話の世界に変えてしまったような、そんな神秘的な美しさがある。まるで神様が、"降りしきる雪"を使って、人間が身勝手に作り出して来たこの世の邪悪な物を覆い隠しているようだ。木々に積もった雪の美しさに目を奪われて、造形美に欠けた画一的な車や建物に注意が行かないのも、神秘的に感じる一因なのだろう。白黒の世界だけれど、雪国の、しかもこの季節でしか見ることができない幽玄の世界だ。雪が降る地域だけに与えられた特権だ。信号待ちの僅かな時間、スムーズに走れないイライラも忘れ、しばし幻想的な美の世界を堪能させてもらった。
やがて雪も止み、朝のラッシュに引き戻されていると、カーラジオから天気予報が流れてきた。冬型は日曜日まで続くという。願ってもないことだ。『よし、明日写真を撮ろう。シャッターチャンスは朝か夕方だ』と、気持ちだけは既にプロのカメラマンだ。
そして、翌16日が来た。果たせる哉、日頃の行いが良いのか悪いのか、前日と同じくらい積もっている。絶好のチャンスだ。丁度髪も伸びて床屋に行く頃合だった事もあり、散髪と写真撮影を兼ね、床屋まで歩いていく事にした。写真を撮りたいと思っている兼六園や金沢城公園は、コースを選べば床屋に行く途中になる。凡そ片道5qの程よい散歩コースだ。今年から、週に1日はノーカーデイにする、と決めているのでそれにも叶う。因みに、往復10qでガソリンを1リットル消費すると仮定すれば、約2.3kgCO2の二酸化炭素を軽減する事になる(環境省が示しているガソリン1リットルあたりの二酸化炭素排出係数は2.31kgCO2/L)。これでもささやかなエコだ。しかも、前話で推奨した体力維持にも繋がり、美しい景色で目の保養もできる。いいこと尽くめだ。妻には内緒だが、酒もすすむというものだ。
そう思うと矢も盾もたまらず、車を出さない事をいいことに路上を簡単に除雪しただけで、リュックを担ぎ我が家を出発した。やはり徒歩は良い。車からでは発見できない素晴らしい景色を存分に堪能できる。撮ってきた写真の中から、そんな景色の幾つかを紹介しよう。神秘的な美しさが表現できているかどうかは甚だ自信ないが、駄文の目休めとして頂きたい。

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雪降る中の車と街路樹 (やはり、車は邪魔だな) |

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雪吊り松に積もった雪 |

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雪化粧した石川門 (外国人の観光客が多かった) |

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ツツジに乗った綿帽子 (左手が兼六園) |

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幹の褐色と雪の白のコントラストが美しい (石垣の向こうが兼六園) |

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松と雪 (暴れる松を雪吊の縄で大捕物しているようで躍動感がある) |

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雪に煙る石川門 (江戸時代にタイムスリップしたようだ) |

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浅野川河畔の雪景色 (春〜秋の散歩コース) |
如何だっただろうか? 皆さんが「綺麗だ」と感じなかったとすれば、その責任は全て私の腕にある。それともカメラ……? そんな冗談は別にして、少し汗はかいたが、往復2時間の散歩を十二分に楽しむ事ができた。目と心の保養もさせてもらった。ささやかなエコに感謝である。
ところが、これには後日談がある。エコに感謝までは良かったのだが、これをほぼ書き終えて迎えた17日の日曜日、"手抜き"のしっぺ返しを受けてしまった。朝起きると除雪の音が聞こえる。お隣さんがやり始めている音だ。これはまずいと、次男と二人でやり始めて驚いた。折角前夜、娘と二人で1時間も掛けて道路を除雪したのに、新たな雪が20p程も積もっている。しかも、前日手を抜いて除雪しなかった駐車場に至っては、40pを超える雪がたっぷりと積もっているではないか。妻も参加、途中で帰ってきた長男も参加して、2時間余に亘る雪との格闘と相成ってしまった。やはり手抜きはいけませんな!
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