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4月から新しい健診・保健指導がスタートした。皆さんご存知の、あの腹回りを測る健康診断とその保健指導だ。ぽってりとしたお腹の持ち主には、少々気になるところだ。40歳から74歳までの全員を対象にしたこの健康診断は、数年前から言われだしたメタボリックシンドローム対策として、厚生労働省肝いりで導入するもので、正式には「特定健康診査」と呼ばれている。誰が命名したのか、お硬い名前だ。その上、説明がないとどんなことをするのかさっぱり分からない。それもあってか巷では「メタボ健診」と呼ばれているらしく、この方がずっと分かりやすい。したがって、小文でも以後は「メタボ健診」と表すことにする。
腹回りが男性で85p以上、女性で90p以上あると糖尿病や高血圧症などの生活習慣病にかかりやすい、と発表になってから、85pはおじさん世代にとって一時健康のバロメーターとして君臨していた感がある。しかし、都合の悪い事はすぐに忘れるもので、メタボ、メタボと"笑い話のつま"としては度々登場していたものの、バロメーターの機能はほとんど果たしてこなかった。ところが今回の新しい健診・保健指導のスタートにより、しっかりとバロメーターの役割を果たしていく事になりそうだ。
そもそも何で「メタボ健診」がスタートするかと言えば、財政破綻の信号が点滅している中で、高齢化の進行に伴って増大し続けている医療費の支出を抑えることが焦眉の急となっているからだ。国民医療費は、厚生労働省が発表した「全国医療費適正化計画(案)」によれば、多い年では概ね年間1兆円ずつ増える傾向にあり、平成20年度の予測で見てみると、医療制度改革を実施しなければ37兆円程度掛かるとみられている。これが医療制度改革を実施する事により35兆円と、2兆円もの削減が出来るとしているのだ。その制度改革の一翼を担っているのが、やはり4月から導入され、名前も含め何かと批判の多い「後期高齢者医療制度」であり、この「メタボ健診」だ。
前出の「全国医療費適正化計画(案)」によれば、国民医療費に占める生活習慣病の割合は約3分の1にも上るという。恥ずかしながら、高血圧の治療を受けている私もそのうちの一人だ。その多くが酒の飲み過ぎや飽食による因果応報とはいえ、3分の1とは凄い割合だ。そこで厚生省は、「メタボ健診」とその後の生活指導を実施することにより、約2,000万人いると考えられているメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群:以後メタボと表す)の該当者と予備軍を、平成27年度末までに対平成20年度比で25%減とする数値目標を立てた。その結果として医療費を抑制しようというものだ。
確かに国民医療費の抑制も重要な課題だが、個人としても諸物価高騰のおり医療費抑制は焦眉の急だ。健康維持ができ、その上医療費が抑制できるとすれば、喜んで受け入れたいと思っている。ただ、「果たして85pが妥当なのか」が気になるところだ。
調べたところによると、国際糖尿病連合(IDF)では「男性90p、女性80p」を基準としているのに、日本肥満学会では「男性85p、女性90p」となっている。女性では10pも違うのだ。どちらの数値を使うのか個人の裁量に委ねてくれれば問題はないのだが、どうもそう都合良くはならないらしい。男性には厳しく女性には緩い(?)、日本肥満学会の数値と同じ値を厚生省も使うことになっている。
腹回りだけではなく、BMI(肥満指数:体重kg/身長m/身長m)が25以上の人も対象になり、@血糖値が高い、A血圧が高い、B血中の脂質が多い、C喫煙歴がある、の4つが追加リスクとして判断項目に加えられる。この追加リスクの幾つにチェックが入るかが、同じメタボと診断されても、保健指導の関わり方が変わってくることになる。
例えば私の場合をみてみよう。私の体重管理は、第66話「我が家の最先端マシン」で紹介した体重計で行っている。BMIや体脂肪率を測定できる優れものだ。その最先マシンに厄介になり測定した直近の値で私の体を解体すると、次のようなことになる。
| 身 長 |
: |
177p(昨年の縮んだデータは、誤差として無視) |
| 体 重 |
: |
72.4kg(直近の一番都合のよいデータを使う) |
| B M I |
: |
23.1 < 25 |
| 体脂肪率 |
: |
22.7 (22が標準らしい) |
| 腹 回 り |
: |
88p > 85p |
| 血 糖 値 |
: |
正常(< 空腹時血糖値 100mg/dl → 一般検診よりも厳しい) |
| 血 圧 |
: |
薬を飲んで正常(70−130) |
| 血中脂質 |
: |
正常 (中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール) |
| 喫 煙 暦 |
: |
あり (29年前に禁煙 → もうそろそろ過去は忘れてほしい!) |
ナルシストの傾向がある私としては結構バランスの良い体形をしていると思っているのだが、厚生省の基準でいくと、体脂肪率がほぼ正常であるにも拘らず、腹回り88pが効いてメタボの該当者になってしまう。その上、治療中の高血圧と喫煙歴の追加リスクにチェックが入るため、積極的な保健指導を受けなければならないことになる。ところが、国際糖尿病連合(IDF)の90pならば該当者から外れてしまうのだ。たかだか5p、されど5pだ。
勿論、涙ぐましい努力を続ける覚悟はできているつもりだ。今年の1月中旬から始めたスクワットや腕立て伏せ等の運動を今後も続け、夏ごろには是非85pを切りたいと思っている。しかしどうせなら、90pにまで緩めてくれるとありがたいのだが……。
3月18日の日経産業新聞に、肥満に関する面白い記事が載っていた。肥満は一種の感染症だ、という米ハーバード大クリスタキス教授の論文に関する記事だ。ある人が肥満になると親しい友人も肥満になりやすく、特に親友だとそのリスクは2.7倍にもなるという。そればかりでなく、驚くべき事にインターネットを介した肥満の感染も起きている、というのだ。それが真実だとしたら、「メタボ健診」よりもインターネット使用禁止の方がメタボ抑制には効果があるのかもしれない。何せ、体脂肪を1kg減らすためには、驚くなかれ7,000kcalも消費する必要があるというから、ちっとやそっとの運動や食事療法ではダメだ。ましてやそれを持続させるのはもっと難しい。インターネット使用禁止は運動や食事療法の努力よりも簡単で、しかも広範囲に効果が発揮できるのではないか、と密かに思っているのだが如何だろうか。尤も世界の経済が止まってしまう事を覚悟の上での話だが……。
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