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このゴールデンウィークに思わぬ体験をした。久しぶりに妻の実家に行き、家の周りを歩いていたら昔懐かしい生き物を見つけた。秋に芳しい匂いを辺り一面に放つ金木犀の葉という葉、そして細い枝に、数え切れないほどの蓑虫がぶら下がっているのだ。色は枯れ枝と同じだから決して綺麗ではないけれど、ブラブラと風に吹かれて揺れている様は、まるでクリスマスツリーの飾りのようだ。しかし、あまりの多さにちょっと気色が悪い。この歳になるまで蓑虫がぶら下がっている光景を沢山見てきたが、これほどまで多くぶら下がっているのは初めてだ。
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| 金木犀の葉にぶら下がっている蓑虫 |
蓑の中にいるオオミノガの幼虫 |
蓑の中に隠れている虫はオオミノガの幼虫で、主にバラ科やカキノキ科などの果樹の葉を食害するという。確かに、義母の話では、金木犀の前はバラ科の梅の木に鈴なりにぶら下がっていて、少し前に退治したところだという。ところが、金木犀はバラ科でもカキノキ科でもなくモクセイ科に属していて、しかも中国原産で日本には雄花しか渡来していないため果実も見られない樹木らしい。そんな木に夢中になって取り付いているとは、余程金木犀の葉が美味しいとみえる。
蓑虫といえば冬の風物詩、という思いが強い。葉っぱがすっかり落ちてしまった枝に寂しげにぶら下がっている様子から蓑虫の活動時期は冬だとばかり思っていたが、あれは越冬している仮の姿で、春から夏にかけてが本格的な活動期らしい。中でも4月から6月にかけての今の時季は、蓑虫にとって幼虫から蛹(さなぎ)に変態する踊化(ようか)と呼ばれる時期に当たるそうで、蓑の中の幼虫は栄養を蓄えようと必至に食事をとっているのだという。そのためか食欲は随分旺盛のようで、すっかり葉っぱが食べられてしまった枝がかなりある。食べ尽されていなくても、蓑虫が取り付いている葉にはポッカリと穴が開けられていたり、原形をとどめないほど周辺を食べられたりと、痛々しいほどの食害を受けている。
暫く風に揺れるのを眺めながら食害の様子をあれこれと観察していたのだが、見ているうちに金木犀が可哀相になってきた。また子供の頃、蓑の中の幼虫をつまみ出して魚釣りの餌にしていたことも思い出してきた。そんな懐かしさも手伝って、少しだけのつもりで蓑虫退治をし始めた。退治と言っても、道具を使うわけでもなく、葉や枝から直接手でむしり取るだけの単純な方法だ。ところが取っても取っても一向に減らない。左手に一杯になったところで娘にビニール袋を持ってきてもらい、結局本格的な蓑虫退治となってしまった。
「いるいる。大収穫だ!」。食べられるものであればそんな雄叫びを上げて大喜びするところだが、蓑虫ではそういう訳にはいかない。しかし面白いように取れる。夢中になって取っていると、左手の中でモソモソ動き出す奴がいる。少し手の平を広げて様子を見ると、元気なのが数匹、蓑から半分身を出して指の付け根に取り付こうと動いている。ジッと見ていると、お尻に蓑を付けながら短い足と口を必死に動かしている。娘に見せようとしたら「気持ち悪い」と逃げていってしまったが、どこかユーモラスで愛嬌がある。
取り始めのころは確かにそう思っていた。ところが、ビニール袋の中にごっそりと集められた蓑虫の大集団を見ると、もうそんな事は言って居れない。兎に角多すぎるのだ。右下の写真は“収穫”の一部だが、こんなのがゴッソリとぶら下がっている様子を是非想像していただきたい。その多さが分かっていただけると思う。
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| 頭を出して逃亡しようとしている蓑虫 |
蓑虫の大集団(これで全収穫の1/3程度)
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結局、あまりにも多すぎたので、午前、午後、夕方と都合3回も退治をする事になってしまった。午後と夕方は娘も参加しての蓑虫一掃作戦を実施し、「完全に退治した」と思っていたのだが甘かった。次の朝、取り残しがないか見てみると、手の届かないところにまだぶら下がっているのが結構目に入る。棒を使い取ろうと思ったが、この蓑虫に絶滅の恐れがあるらしいことを思い出し、見逃す事とした。
取るのに悪戦苦闘するほど沢山いるのに、絶滅の恐れとは合点がいかない話だ。ところがどうやら専門家の間では、重篤な状態らしい。インターネットで分かった事だが、蓑虫に関しては、オオミノガのみに寄生する外来種のオオミノガヤドリバエが原因で、1990年代後半からオオミノガが激減し始めているらしい。複雑なところだが、冬の風物詩が見られなくなる恐れがあるという。こんな大量発生も防衛本能の成せる技なのかもしれない。
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