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『偽装』

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2008年7月9日

それは突然のメールだった。ここ暫く音沙汰が無かった、静岡県の遠州地方に住む甥からだ。ハートのマークも泣き顔の絵文字も無い、たった40文字にも満たない短いメールだったが、書かれている内容は私にとって全く予期しないものだった。そして、読み終わった瞬間、「エッ、ウソッ!」と思わず小さな声を上げてしまった。驚きの内容が書かれていたのだ。

小さな画面に見入り、内容が変わるはずもないのに何度も読み返してみた。芽生え始めていたほんの僅かな自信が――思い違い・勘違いであることは重々承知していたが――、ガラガラと音を立てて崩れ落ちていった。そして、四方山話の読者に対する申し訳ない気持ちが一気に広がっていく。「知取気亭主人が食品偽装をした」という内容が書かれているのだ。我が目を疑った。

 

「○○です。四方山見たけど、イカの写真はコウイカではなく、アオリイカだに!」

 

遠州弁丸出しの愛情豊かなメールには、第260話「どげんかせんとイカん!」に掲載した下の写真に写っているイカの名前が間違っている、と書いてあるのだ。驚いた。早速折り返しの電話を入れ、いろいろと説明を聞くと、「成る程」と素直に納得してしまった。

 

まず、コウイカとアオリイカでは旬が違うという。御前崎の辺りで今の時期に釣れるのはアオリイカで、コウイカの旬は冬だという。そして、言われて「オッとそうだった」といたく納得した説明があった。コウイカの名前の由来である「甲」に関してだ。思い出してみるに、時々砂浜に打ち上げられているあの船形をした白い「甲」が確かに無かった。無かったのに何でコウイカだと思ったのか不思議だが、以前送ってくれたときに聞いた「コウイカ=別名スミイカ」が耳に残っていたのかもしれない。

 

そして、最もショックだったのが、「見る人が見れば、アオリイカだってすぐに分かるに!」の一言だ。 続けて説明してくれた「高級食材で市場には滅多に出ないイカだに。美味かったら!」に、「甘くて、すごく美味かったよ」と答えたものの、ショックが冷めやらない。そして、意図的ではないにしろ結果的に"食品偽装"をしてしまったことを読者に謝らなければ、と強く自責の念に駆られてしまった。 

浅学非才をとんでもない形で暴露してしまったが、この場を借りて訂正と謝罪をさせて頂きたい。真に申し訳ありませんでした。

 

ところで、私にも感染してしまった"食品偽装"が、根深くウナギを汚染していると報道されている。7月5日(土曜日)の朝日新聞朝刊に次のような記事が載っていた。

 

「農林水産省の統計によれば、国内で流通しているウナギは年間約10万トン、国内生産量は僅か2万トンだという。輸入の8万トンのうち約8割が中国産で、残りが台湾産だ。しかし、少ないはずの "日本産"が "中国産"と同じくらい店頭に並ぶのは不思議な事だった、と農水省の担当者は話している」

 

2割しか国産が無いのなら、本当にその通りだ。その上、同日の朝日新聞によれば、ウナギ偽装事件の渦中にあるウナギ輸入販売会社「魚秀」は、今春に256トンのかば焼きを約7億7千万円で「三河一色産」として出荷し、中国産との相場の差額約3億3千万円の利ざやを得たという。二文字から四文字になっただけで3億円以上も余分に稼げるのだ。ビックリ仰天だ。産地を変えるだけで――良く分からないが多分シールを変えるだけで――これだけ巨額の利ざやを得る事ができれば、そりゃ止められないはずだ。ウナギを扱う業者にとってこれは"悪魔の囁き"だ。

こうなると、持っていると信じたい"良心"と"悪魔の囁き"との戦いになるわけだが、産地を変えるだけで利ざやが稼げる魅力に負け、偽装に手を染めてしまう企業や個人が増えてきている。インターネットで中国産を「四万十産」と偽って販売していた業者もいたという。この茨城の業者はステーキ用の牛肉やイカの産地偽装もしていた、と報じられている。今やもう何でもありだ。本当に嘆かわしい。

扱うのが物言わぬ食材だけに、我々庶民には彼らの氏素性が分からない。産地もどんな環境で育てられたかもだ。だからこそ、食品を扱う企業の責任は重大で、安全・安心には絶対の配慮をしてもらいたい。それは企業にとっても最も基本的なことだ。

 

ついでに言わせてもらえば、呉々も私が犯したような過ちはしないでいただきたい。回転寿司で「ヒラメでないのにヒラメのエンガワ」として売られている魚に代表されるように、暫く前から正体不明の魚が出回っているが、これなども正体をハッキリさせるべきだ。"変わり雛"が在るように、聞いたこともないような名前の"変わりネタ"が在ってもいいではないか。ただ、いくら"変わりネタ"と言っても、ドジョウを「小さなウナギ」だとか「ミニウナギ」と誤魔化すのはなしだ。その昔、「オカウナギ」と称して珍しい食材を食べさせてくれた悪戯好きの人もいたが、やはり食材本来の氏で紹介すべきだ。

エッ、「オカウナギは何か?」ですって。そう、あなたがギョッとしたアレですよ。

 

【文責:知取気亭主人】


 


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