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7月24日深夜、岩手県沿岸部を震源とする強い地震が発生し、青森県から宮城県に掛けての広い範囲で震度5弱以上の強い揺れを観測した(最大震度は6強)。各所で土砂災害を中心とする被害が発生し、怪我人も100人を超えた。「岩手・宮城内陸地震」で大きな被害を受けた地域でも、僅か40日で再び大きな揺れに見舞われた。さぞや驚かれたことだと思う。これだけ立て続きに激しい揺れに襲われると、雨による二次災害が心配だ。地震によって緩んだ地盤は、雨に対してとても脆弱になっている。大きな雨が降らなければいいのだが……。そんな心配をしていた矢先、思わぬところで豪雨による水害を体験してしまった。
私の地元金沢には、男川と呼ばれる"犀川"と女川と呼ばれる"浅野川"の2本の2級河川が、市内中心部を流れている。その女川が氾濫したのだ。
28日、ゲリラ豪雨が北陸を襲い、石川・富山の県境付近を中心に大雨となった。この豪雨により浅野川が55年振りに氾濫し、上流部では渓岸・護岸浸食を中心として住宅・道路・田畑の流失や土砂の堆積、市街地では床上浸水などの被害を発生させた。アッという間に増水して、アッという間に引いていった洪水だった。
同じ日、金沢から遠く離れた兵庫でも、長さがたった2km程の都賀川で鉄砲水が発生し、水遊びをしていた親子など5人が亡くなった。監視カメラが瞬く間に増水する衝撃的な瞬間を捉えていたが、あれでは逃げる間もないはずだ。短時間に降った強い雨(午後2時37分〜47分の10分間で15mm)の仕業だ。このように、近年、ゲリラ豪雨による災害が多発するようになってきた。地球温暖化や都市部のヒートアイランドの影響で局所的に大気が不安定になりやすいのだという。浅野川の水害も正にそんな感じの水害だ。
金沢市では携帯電話に「防災情報」を配信するサービスを行っているが、そのメールを見てみると、如何に急激な増水だったかが良く分かる。そこで、私の携帯に配信された履歴を辿りながら、浅野川の水害――特に金沢市中心部での浸水被害――発生までの時間経過を、簡単に再現してみたい。ただし、「※1と「※2」の情報はメール配信ではない。
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28日4時28分 金沢気象台は石川県加賀北部に「大雨・洪水警報」を発表 |
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※1 7時20分頃浅野川中流部の橋を車で渡る ⇒ まだ被害無し |
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7時40分、水防警報を発表(避難判断水位を超えた) |
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※2 8時30分頃、中心部で水が溢れる(北陸中日新聞、2008年7月29日朝刊)
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8時45分、避難勧告の発令 |
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8時50分、避難指示の発令 |
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10時45分、避難指示が解除 |
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11時30分、水防警報が解除 |
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14時50分、大雨洪水警報解除 |
以上が大まかな経過だが、慣れとは恐ろしいものだ。通勤途上で見た浅野川の様子からすれば――確かにこれまでにない水嵩だったが――、まさかこんな被害が出るとは思ってもみなかった。家を出たときには既に雨が止んでいた上に、長い間大きな水害に遭遇していなかった事もあり、大した危機感を抱かなかったのだ。8時50分の「避難指示発令」のメールを見たときもそうだった。
ところが、昼直前になって、同僚からとんでもない情報が飛び込んできた。「T先生から、浅野川の水害の様子を全国版のトップニュースでやっているが大丈夫か、と安否確認の電話が入った」と言うのだ。エッ、そんなにひどいことになっているのかと、早速テレビを覗いてみてビックリ仰天だ。朝、通勤途上で見た川とは大違いの様子が映し出されている。散歩で見慣れた街並みが泥水に洗われているのだ。繰り返しになるが、家を出たときから既に金沢中心部では雨が止んでいたため、その惨状が俄には信じられなかった。
"避難勧告"が発令されて、僅か5分後に"避難指示"が発令されていることからも、如何に急激な増水だったかが分かる。それは、観測された雨量データからも伺い知れる。
県によって浅野川上流部の山間地に設置された「芝原橋」観測所では、6時〜8時の2時間で225mmの猛烈な雨を観測している。その雨の様子をグラフにしたのが下の図だ。激しい雨は8時までで終わり、8時から9時の1時間に3.0mmの弱い雨を観測して以降は、1mm以上の雨は全く観測されていない。5時〜6時のデータを含めると、凡そ250mmもの雨が、たった、本当にたった3時間に集中しているのだ。短時間にこれだけ降れば、上流域の被害が甚大であることも頷ける。時間雨量20mmで「バケツをひっくり返したような」と比喩されている事を考えると、そのもの凄さが分かろうというものだ。

県央土木総合事務所発表の「雨量観測日表(60分)」より作成
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そして、上のグラフには市街地の観測所である「県央土木総合」の観測データも併記してある(黄色)が、このデータと比べると「芝原橋」付近に降った雨の凄さがより際立ってくる。5時から8時にかけての3時間に「県央土木総合」で観測された雨量は、「芝原橋」の1/8にも満たない。数値で言えば30.0mmだ。しかも、私の言葉を裏付けるように、7時以降夕方まで、雨は観測されていない。要するに、市街地では、トータル雨量でも大して降っていないし、水防警報が出されたときにはもうとっくに雨は止んでいたのだ。ところが上流では未だ豪雨が降っていた事になる。こんな降り方をされたら、川の様子を見ていない人たちが、雨も止んだしこれで峠は越えた、と考えても不思議はない。
どこに出没するか分からないから「ゲリラ」なのだが、雨の降っていない地域の住民の油断を誘うところなども、「ゲリラ」の戦術に似てなくも無い。予想が付かないのだ。この四方山を書いている8月5日にも、東京で下水道作業をしていた人達が、ゲリラ豪雨による急激な増水で流される事故が発生した。悲しい事に、2人が死亡し3人が行方不明になっている。作業している人達にとっては、「想定外」というのが正直なところだろう。
残念ながら、これからもこんな事故が増えていく事になるに違いない。悲しい事故を撲滅する為には、ゲリラ豪雨の発生を予測し、時々刻々の雨量から河川の状況を迅速にシミュレートできる技術が必要だ。そして、それらの情報を流域住民や河川利用者に確実に伝えられる情報網の確立も大切だ。
しかし、何はさておいても、水害に対する危機意識を我々一般市民が持っている事が、自らの命を守る基本である。そのためには川との関わりを無くさないことだろう。更に付け加えれば、地球温暖化防止対策に一人一人が真剣に取り組んでいくことが、ゲリラ豪雨の抑止に繋がっていくのではないかと考えている。「エコがゲリラを撃退する」。こんな言葉を合い言葉に生活するのも一計かも知れない。
最後に、今回の浅野川水害の情報を掲載している「いさぼうネット」のサイトを紹介しておこう。今回取り上げなかった上流部の被災写真も多数掲載しているので、是非ご覧になっていただきたい。
▽「平成20年7/28豪雨災害の関連情報」 − 「いさぼうくんの豪雨災害レポート」
http://isabou.net/TheFront/disaster/asanogawa-gouusai/index.asp
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