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『職業差別?』

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2008年09月03日

暫く前から気になっている事がある。この歳になっても未だに興味のある女性の事でも、一向に興味の薄れて来ない酒に関する事でもない。テレビや新聞など、報道関係者が使う"ある言葉"にすごく違和感を持っているのだ。先日も「東京のマンションで51匹もの毒蛇を無許可で飼っていた"港湾作業員"が逮捕された」との仰天報道がなされていたが、このニュースで使用された「作業員」という言葉がそれだ。「毒蛇に餌をやろうとして指を咬まれて入院していた」とか、「極普通のマンションで無造作に51匹もの毒蛇を飼っていた」とか、話題性やその特異性もさることながら、「作業員」という言葉の使われ方がすごく気になって仕方がない。何故かと言えば、報道で使われる「作業員」には"職業差別の心理"が隠されているような気がしてならないからだ。

通常、事件・事故の被害者や加害者を報道するときは、「会社員○○○○」とか「××市職員△△△△」、或いは「無職□□□□」などの職業が必ず付いてくる。「そんな必要性なんて無いのに」と思っているのだが、職業別犯罪統計でも取っているのか、兎にも角にも職業が付いて回っている。その職業と同列に「作業員」が使われているのだ。果たして同列に扱えるものなのだろうか?

 

広辞苑によれば、「作業」とは「肉体や頭脳を働かせて仕事をすること」とある。また、スーパー大辞林では、「仕事。主として肉体労働を伴う仕事をいう」と表記されている。どうやら、言葉としては肉体労働の意味合いが濃いようだ。用い方として「手作業で完成させた」とか「農作業に精を出す」などが思い浮かぶから、確かに体を使った労働が多いのかもしれない。すると、反対語は肉体をあまり使わない「事務」ということになるのだろうか。

今一度広辞苑で「事務」を引いてみると、「事業経営などに必要な各種の仕事、主として机に向かって書類などを処理するような仕事をいう」とある。やはり、「作業員」と対をなす言葉としては「事務員」が妥当のようだ。しかし、テレビや新聞で、「事務員△△さんが被害に遭った」などの表現にお目に掛かった記憶はないし、通常そのような事務を主な業務としている人に対しては「会社員△△さん」、あるいは「パート従業員△△さん」として表現されているのではないかと思う。つまり、職業の他には"どの様な形態"で、或いは"どの様な立場"で雇用されているか、で表現されているのだ。だとすれば、雇用形態を表す言葉ではない「作業員」という表現は、明らかに不適切だ。

 

作業員であっても事務員であっても、法人格を持った会社に正規雇用されていれば規模の大小に関係なくれっきとした会社員であるし、臨時職員であればパートやアルバイト、或いは派遣社員ということになる。しかも派遣社員であっても、派遣会社の正社員であれば、これも立派な会社員だ。したがって、今回報道された「港湾作業員」も、「会社員」か「臨時職員」のどちらかで表現できる筈だ。

もっと現実的に考えれば、社員数に限りがある中小企業では、あるときは営業をやり、またあるときは経理事務をやり、現場が忙しくなれば現場作業を手伝う、そんな社員がいる筈だ。そういった社員は、手伝いに出る現場では作業員として、経理事務をやっているときは事務員として、呼称が変わってしまう事になる。しかし、会社員である事に変わりはない。つまり、「会社員」で十分表現できるのだ。然るに、何故「作業員」なのだろうか。

不思議に思って朝日新聞社に電話を入れてみた。すると返ってきた答えはこうだ。

 

「新聞報道で使われている職業は、警察の発表をそのまま使っているので、どういう基準で使っているかは分かりません」

 

どうやら、警察の発表がニュースソースになっている場合には発表された表現をそのまま使っている、という事らしい。とすると警察に、「作業員」に対するある種のねじれた固定観念がある事になる。それこそ私の穿った見方かもしれないが、戦後の一時期、雇用の場として多くの労働者を受け入れていた建設工事現場では前科者や気の荒い者もいて喧嘩や傷害事件が多かったと聞くが、そういった時代の経験や思い込みが警察にはまだ残っているのではないだろうか。そうとしか思えない。

 

その昔、士農工商なる身分制度が大手を振っていた時代があった。まさかその時代の"士(官吏)"の意識を警察がそのまま引きずっているとは考えにくいが、肉体労働者である作業員は農工商のどこに当てはまり、どこの組織に属する事になるのだろうか。

農業にしろ、工業にしろ、勿論商業にしろ、体を使う労働が基本にあるからこそ成り立っている。かつての日本では、「身を粉にして働く」という表現があるように、体を使って一所懸命に働く事が美徳とされていた。ところが大多数の官吏(士)から見れば、身を粉にして働く事は美徳としては映らなかったのかもしれない。江戸、明治、大正、昭和と連綿と受け継がれてきた職業差別の潜在意識が未だに残っている、とは私の思い過ごしなのだろうか。

【文責:知取気亭主人】

 

金宝樹(俗称:ブラシノキ)
(差別意識を無くしたいな!)

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