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『浅野川の野鳥』

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2008年10月1日

9月25日、「Nipponia Nippon」の学名を持ち、日本の特別天然記念物、そして国際保護鳥にも指定されている「トキ」が、27年ぶりに日本の大空に飛び立った。1981年(昭和56年)に一斉捕獲された後2003年に日本産トキは絶滅したものの、中国の協力と佐渡トキ保護センターの長年の努力の甲斐あって、やっと10羽の試験放鳥にこぎつけたものだ。これで、「朱鷺色」と呼ばれるあの淡いピンク色が再び日本の各地で見られる日も夢ではなくなった。失ったものが復活される、そんな大きな一歩となる放鳥だ。また、一足早く実現した兵庫県豊岡市のコウノトリ放鳥に続く、嬉しいニュースでもある。

しかし、この試験放鳥に喜んでばかりはいられない。絶滅の危機に瀕した野鳥が「絶滅危惧種」の指定解除を受けるには、まだまだ越えなければならない高いハードルがある。トキが沢山生息していた頃と比べると大きく悪化した今の自然環境の中で彼らが果たして生き残っていけるのか、固唾を呑んで見守っているのが正直なところだ。汚染されていない餌や営巣地の確保、天敵や鳥インフルエンザなどからのリスク分散、こういった諸問題を解決しなければならない。しかし是非これらのハードルを越え、多くの国民に美しく優雅な飛翔を見せてほしいと願っている。

 

ところで、トキにしろコウノトリにしろ、絶滅の危機に瀕した原因は乱獲や人為的な環境変化によるものであることはよく知られているところだが、絶滅の瀬戸際まで追いつめたのも人間ならば絶滅から救おうと懸命の努力をしているのも人間、つくづく人間とは身勝手な動物だと思う。尤も、私自身の飽くなき欲望を考えると、「それも人の性か!」と素直に認めざるを得ない。大なり小なり、人は皆そんな性を持っているものだ。しかし、トキたちの野生復帰を成功させるには、そんな事を言ってはおられないし、もうこれ以上の人間の身勝手は許されないのだ。何としても成功させたい。その為には、私たちが多少なりとも環境のことを気にかける必要があり、そうする事によって飽くなき欲望にも少しはブレーキをかけられるのではないかと思っている。

例えば、散歩の途中で良く見かける野鳥に注意を払う事などでもいいのだ。どんな種類の野鳥が家の近くにはいるのか。そして、その鳥は増えたのか減ったのか。そういったことに注意を払っていると、思わぬ鳥に出会う事が出来るし、貴重な姿を見ることもできる。そして、出会った鳥たちが何を餌にしているのか知っていれば、鳥を見かける地域の自然がどのような状態になっているのか凡その様子を知ることが出来る。

私が散歩コースとして良く歩く浅野川の中流域で見かける野鳥を紹介しながら、浅野川の自然を考えてみたい。

 

金沢市中心街を流れる中流域では、護岸のすぐ近くまで住宅が立ち並んでいる事もあり、他の野鳥に比べると人間に対する警戒心がやや薄いカモ類やカラス(ハシブトガラスが多い)、そのカラスと良く喧嘩をしているトビがこの地域には目立って多い。そして、10年前に比べると、カモを見かけるのが少しずつ上流に広がっているように思える。カモ類は藻や草を餌にしているから、比較的富栄養化の進んだ水域に多く見かけられるのだが、浅野川も段々汚れが進んできたという事なのだろう。

 


トビ


コサギ


アオサギ


ゴイサギ

 

カモ類と生息域がややオーバーラップして、住宅地から少し離れたところで良く見かけるのがサギ類だ。写真で示したように、コサギ、アオサギ、ゴイサギ、この他にシロサギも良く見かける。サギ類は小魚やザリガニ、あるいはカエルなどの小動物を餌としているので、この近辺の浅野川は多少汚れてはいるものの、市街地を流れる川としてはまだ小魚などが生育する比較的恵まれた環境にあると言える。ただ、サギの縄張りにも少しずつカモ類が進出し、肩身が狭くなってきているのではないかと心配している。

 


セグロセキレイ


カワセミ

 

サギ類は比較的頻繁に見ることができるのだが、たまに見かけるのがトビケラ類などの昆虫を餌とするセグロセキレイだ。浅野川ではカモ類よりも上流で見かけることが多く、低草木が繁茂している中州や高水敷が広がっていることもあり、それだけ餌となる昆虫が豊富だという事なのだろう。

セグロセキレイにもまして珍しいのがカワセミだ。子供の頃遊んだ田舎の渓流では良く見かけた鳥だが、10年以上も散歩コースにしてきた浅野川ではまだ一度しか出会っていない。浅野川にとっても、私にとっても大変貴重な鳥だ。このカワセミは、かなり綺麗な水のところに生息しているイメージが強いのだが、調べたところによると環境が悪化するに従い生息適地も減り、汚い河川や小さな池でも見かけるようになったという。確かに、子供の頃の記憶ではサギ類と同じテリトリーのイメージは無い。しかし、浅野川ではしっかりと重なっている。同じような餌を捕食するのだから当然といえば当然なのだが、途中で排水される水路の汚れた水を見ていると、餌となる小動物もかろうじて生息できている状態なのではないか、と心配になってしまう。いつまでもカワセミが生息できる浅野川であって欲しいと願うばかりだ。

これ以上汚れて、宝石のヒスイの名前の由来になったと言われる綺麗な青い羽が観られなくなるのも辛いし、汚い水で汚れるシーンも想像したくない。もう少し私たちの身近な環境に興味を示すことが私たち自身のためにもなるのだが……。因みに、ヒスイもカワセミも漢字では翡翠と書く。

 

【文責:知取気亭主人】

 

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