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先日、田舎の友人が私の大好きな柿を送ってくれた。夕焼けがそのまま焼きついたのではないかと思われるような美味しそうな色づきの、直径が7、8pにもなろうかという立派な次郎柿だ。私が育った静岡県周智郡森町が原産の柿で、森町には今も原木がある(筈だ)。
しかし、友だちとは有り難いものだ。最近は年賀状のやり取りだけで顔を合わせることも無いのに、今頃の季節になるとこのように忘れずに送ってくれる。おかげで懐かしい旬の味を毎年楽しむ事ができる。
柿は丁度今が盛りで、金沢でも甘柿として富有柿や筆柿などが良く出回っているが、小さな頃から慣れ親しんだこともあり、私の中では矢張り次郎柿が一番だ。種が無いのも食べやすくて良い。ちょっと硬めのやつを皮付きのまま"ガブッ"とかぶりつくのが大好きだ。あの食感がたまらない。口一杯にほおばっていると、下校のときにおやつ代わりに失敬した"はなたれ小僧の頃"を懐かしく思い出す。
ところで、送ってくれた柿も代表的なものだが、「実りの秋」と呼ばれるだけあって、今頃の季節になると一気に食材が豊かになる。くだんの柿、そしてリンゴ、ナシ、ミカン、サツマイモ、栗、イチジク、アケビ等々、果物をパッと数えただけでもこれだけの種類が思い浮かぶ。サツマイモが果物か野菜なのかの議論は置いといて、米やソバ、ヒエ、粟等の穀類、或いは眺めるだけのマツタケを代表選手とするキノコ類、更にはタラ、カニ、寒ブリ等の魚介類を含めれば、今が旬の食材は優に両手両足に余る。正に「実りの秋」、「食欲の秋」である。そうなると、"旬の食材を使った料理"や"食べ過ぎ"等の話題とともに、身の回りでちょくちょく耳にするのが「ガスの効用、ガスの害」である。
ガスと言っても、燃料として使われるプロパンガスや都市ガスのことではない。サツマイモやニンニク等を食べて暫くすると、「プー」とか「プスッ」、或いは元気良く「ブリッ」等の個性豊かな音色を伴ったり、遠慮がちに音なしの構えだったりするのだが、時折"えも言われぬ芳香剤(?)の害"を撒き散らす、あのガス、のことでもない。食材、特に果物から放出されるガスのことである。よく知られているのがリンゴだ。
ガスの正体は、エチレンガスだ。エチレンガスは化学物質だが果物や野菜等にとっては植物ホルモンのひとつで、老化ホルモンとも成熟ホルモンとも言われているらしい。このエチレンガスが、言われている俗称の通りいろいろと外の果物や野菜に影響を与えるのだ。
我が家でもたまにやるときがあるのだが、熟していないキウイ等の果物をリンゴと一緒の袋に入れておくと早く食べごろになる、などはその代表的なものだ。あるいは、リンゴをジャガイモと一緒に入れておくとジャガイモの萌芽が抑えられる、というのもそのひとつだろう。ただ、このジャガイモの萌芽を抑制する効用に関しては、リンゴを使う方法はあまりお勧めできない、とする意見もインターネットでは見受けられるから、実際に応用するには十分調べてから行う必要がありそうだ。
さて、このようにいろいろの効用が確認されているエチレンガスだが、「過ぎたるは猶お及ばざるがごとし」とか「薬も過ぎれば毒となる」と言われるように、必要以上に効果を発揮してしまうと、効用から一転して害となってしまう。エチレンガスに対する主な反応としては、「熟成させる」という効用の外に、噛んだときのサクサク感がなくなる「リンゴの日焼け」やナシ等の「腐敗」、オレンジ等での「カビの発生」等の害もあるという。
例えば、腐ったリンゴの例え話として「リンゴ箱の中に腐ったリンゴが一つでもあると、次々と周りのリンゴへ伝播して腐っていく」というのがあるが、成熟したリンゴは周りのリンゴへの影響も強めるだけでなく、食べ頃を過ぎてもなおエチレン生成を止めないため、ついには腐敗へと導いてしまう。したがって、マーケット等でビニール袋に入ったリンゴを買ったときには、相互作用を避けるため、なるべく早く袋から出したほうが長持ちする事になる。ガスを充満させるような密閉度の高い袋等での保存は極力避けるべきだ。
ただ、果物の中でも、その熟成にエチレンが関与するタイプのものと、関与しないタイプのものがあるという。したがって、リンゴと一緒に袋に入れても熟成が促進されないのもあるわけだ。関与するタイプとしては、リンゴ、西洋ナシ、バナナ等があり、関与しないタイプのものにはミカン、ブドウ、イチジク等があるそうだ。しかしどちらのタイプにしても、食べごろを過ぎ過度に熟成が進んだ果物は、その殆どが腐敗へと進行してしまう。リンゴ、ミカン、ナシ、ブドウ、キウイ等々、私の知っている果物は皆そうだ。
そう言った意味では、くだんの柿は特殊な果物だ。リンゴ等他の果物と違い熟成が進んでも腐敗しない。軟らかくなるという難点はあるが、熟成が進めば進むほど甘味が増し、形が残っている間は食することが出来る。こういった果物を外に知らない。そしてそれは、柿にとって極めて優れた特徴なのだが、私にとってはあまり好ましくない特徴でもある。
歯を立てる必要が無い柿は、私にとってはもう果物ではない。しかも、甘すぎるのも私は苦手だ。しかし、妻や母のように、硬い間はそれほどでもないのに"すすれるほど軟らかくなったそれ"が大好きな人もいる。必然的に我が家では、意識して硬いうちに食べないと熟成の極致に向かうことになる。「人それぞれ」、「果物もそれぞれ」ということか…。
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