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『変革(CHANGE)』

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2008年11月12日

アメリカの次期大統領に民主党のバラク・オバマ上院議員が当選を決めた。対立候補だったジョン・マケイン上院議員(72歳)に比べて際立つ若さの47歳、アメリカ合衆国の憲政史上初めてのアフリカ系大統領の誕生だ。そして、初めての黒人大統領とも言われている。かつてはKKK(Ku Klux Klan)に代表される白人至上主義の人種差別がはびこり、今でも少なからず差別意識が残っていると思われるアメリカで、その人種の垣根を越えて彼が選ばれたのは凄いことだ。選んだ国民も凄い。

ただ、黒人の父親と白人の母親の間に生まれ、黒人の血が50パーセント、白人の血も50パーセント、どちらの血も半分ずつなのになぜ「黒人」と呼ぶのか、そのところが私にとっては不思議だ。「肌の色だろ?」との呼称基準を示した友人もいるが、肌の色からすればちょっと日に焼けた日本人となんら変わらない。それでもヤッパリ肌の色なのだろうか?そうなると、黒人の血が100パーセントだったとすると、果たして彼は選ばれていただろうか。そんな疑問もなくはない。

尤もそんな事はどうでもいいことだ。そんな他愛もないことはさておくとして、「初の女性大統領か、それとも初めての黒人大統領か」と叫ばれ、ヒラリー・クリントン上院議員と激しい予備選挙を戦っていたつい3ヶ月ほど前には、黒人に対する激しい差別意識を持つ有権者の映像も流されていたのに、それを跳ね除け見事に勝利した。正式には、選挙人の投票が12月に行なわれ、その結果で決まる選挙制度になっているらしいが、選挙結果が変わることは殆どないというから、現実にはこれで初の黒人大統領誕生が決定したことになる。それにしても、4年に一度の一大イベントとはいえ、国を挙げての加熱ぶりには本当に驚かされる。と同時に、羨ましくもある。

 

オバマ氏が当選を果たすまでの予備選挙も含めた激しい選挙戦は、多くのメディアを通じ世界に流されてきた。また、アメリカの国民ばかりでなく世界の人々も、超大国アメリカの将来を誰がどの様に舵取りしていくのか、大いに注目していた。そんな大統領選挙だったのだが、この選挙を通じて私が感じたのはアメリカという国の底力だ。それは、政治に対する国民の意識の高さ、特に若者の意識の高さを感じるからなのだろう。

例えば、ボランティアで応援活動をしている若者たちの様子が度々ニュースで流されていたが、彼らの活動振りを見るにつけ、政治離れが年々ひどくなる日本の若者との違いを感じずにはいられない。自らの意思で活動する彼らを見ていると、どうしても「しぼんでいく日本、躍動するアメリカ」という対立軸で日本を見てしまい、いくら背伸びをしても届かない超大国アメリカの超大国たる所以を垣間見たような気になってしまう。間接的にしろ、積極的に国政に参加しようとする若者があんなにもいるアメリカは、疲労感を漂わせ政治への無関心を標榜する若者が多い日本と比べれば、遥かに若さに溢れ、これからも超大国であり続けるだけのパワーがある。そう感じてしまうのだ。

さらに加えれば、有権者の多くが「肌の色」ではなく「アメリカ船の船長として誰がふさわしいか」で選んだところに、アメリカの懐の深さを感じている。果たして、日本だったらどうなっていただろうか。親が政治家だったから、というだけの理由で政治家になっている二世、三世議員に代表されるように、「日本をこのような国家にしたい」という政治理念も無い――育っていないと言うべきか――政治家をこれまでのしがらみで国会に送り出してしまう国民性を考えると、日本だったら「肌の色」で選んだのではないかと想像してしまう。日本人は、正にオバマ氏が標語として訴えていた「変革(CHANGE)」を好まないからだ。

 

アメリカ発の金融不安や他国への軍事介入に見られるように、アメリカのシステムや政治思想が全て正しいというわけではない。間違いも、身勝手な行動も数多くある。許しがたい暴挙もある。しかし、「間違いを正し、変えていこう」と言う意思が芽生えたとき、しがらみに囚われることなく行動できるアメリカに、若さや力強さを感じるのだ。それは、中国、インドに次ぐ世界第3位の人口(約3億人)を抱え、先進国の中では数少なくなった「未だに人口が増え続けている国」であることが、大きな要因となっているのではないか。加えて、移民でもアメリカンドリームを実現することができる土壌が、そこにまだ残されているからに他ならないのではないか、と思っている。変えていくことこそがアメリカンドリームの実現に繋がると、多くの国民が理解しているのに違いない。だから、「変革(CHANGE)」に対して違和感が無いのだろう。

 

オバマ氏の選挙資金を支えたのは、その多くが5ドル、10ドルといった小額の寄付金だったという。厳しい生活費の中から工面した人もいるのだろう。私が定期購読しているメールマガジンの中には、生活を切り詰めて寄付した学生のことが書かれていたものがあったが、羨ましい思いで読ませてもらった。日本にもそんなときが来るのだろうか。

翻って、解散風が吹いたり止んだりしている日本の政治を見ていると、「今の時期に○○したら選挙に不利だ」とか「有利だ」とか、国民不在の身勝手な声しか聞こえてこない。何ともせせこましい政治家が多いことか。しがらみを棄て、そんな代議士を選ばないことが日本の政治に「変革(CHANGE)」をもたらす第一歩だ。そういう意味では、しがらみの世界にどっぷりと浸かってきた我々年寄りたちこそが、自ら変わらなければならないのかもしれない。

【文責:知取気亭主人】

 

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