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今年になって振り込め詐欺の被害が増加しているらしい。29日に放送されたNHKラジオのニュースによれば、その被害額はもう既に昨年の被害額の250億円を超え、年末までには300億円を超えるのではないかという。日銭に換算すると、毎日、毎日、8千万円を超す途方も無い金額が騙し取られている事になる。
騙す手口は益々巧妙になり、これだけテレビや新聞などで「振り込め詐欺防止キャンペーン」が繰り広げられているのに、被害に遭うお年寄りは一向に減る気配もない。ATMの前でいくら注意を喚起しても、"激減した"との報道は未だ無い。それどころか、ATMを使わない新手の手口も考案され、イタチごっこの感さえするのはなんとも腹立たしい。
しかもその一人ひとりの被害額たるや、とても一朝一夕に貯められる額ではないから尚更だ。なかには1千万円も騙し取られたお年寄りもいるという。何十年もかけて貯めた老後の生活資金なのだろうに、本当にひどいことをするものだ。"子を思う親の気持ち"をもてあそぶ卑劣な手口だ。断じて許すわけにはいかない。何とか防止する手立ては無いものだろうか。
「交通事故を起こしてしまった。示談金が必要だ」、「会社の金を使い込んだ」、「セクハラがばれた」などなど、よくもこんなシナリオを考え付くものだ、と感心するぐらいにあくどい手口が明らかになっていく。その時話題になっている事件・事故をも参考にしているというから、騙される側にすると、聞いた途端に「エッ!家の子も」と動揺し、疑いを持つ余裕すら無くすぐに信じてしまうのだろう。また、ラジオでも盛んに流されている防止キャンペーンの中に「大人になった我が子の泣き声を聞いたことが無いから、電話口で泣かれると信じてしまう」というフレーズがあるが、尤もだと思う。話の信憑性を高め、疑いを持たれないために、あの手この手で罠を仕掛けてくるのだ。
良く考えれば、誰も「何か変だな?」と気が付く点がある筈なのだが、そうさせないために、"動揺させ、考える余裕を与えない"のが彼らの手口の基本中の基本となっている。そのために、話題になっている事件・事故をも利用し、次々と電話口の相手を変えることまでやるのだ。交通事故を装った詐欺の場合には、警察官や弁護士役まで揃えているというから恐れ入る。「そんな知恵が有るのならもっと真っ当な事に使え」と言いたいが、犯人たちの耳にはおいそれと届きそうにない。労せずして大金を手にすることができるその手法に溺れた彼らの耳は、悪魔の囁きしか聞こえないのに違いない。
ところで、犯人たちはどうやって電話番号を知ったのだろうか。NTTのあの分厚い電話帳からお年寄りに多い名前の電話番号を選び出し、一軒一軒電話を掛けているのだろうか。それとも、闇雲にボタンを押し、手当たり次第に電話を掛けまくっているのだろうか。いや、どちらも違うようだ。もっとたやすく確実な方法、例えばどこからか名簿を手に入れ、それを情報源にしていると言われている。
幼稚園や小学校、中学校、或いは高校等の卒業名簿には、実家の電話番号や住所が掲載されている。そして、卒業年次を見れば、卒業した子供の現在の年齢は勿論、親の年齢も容易に類推がつく。そういった名簿は、同窓会名簿を筆頭につい最近まで盛んに作られ、容易に手に入れることが出来た。私が卒業した高校でも、氏名、住所、電話番号は言うに及ばず、ご丁寧に勤め先や進学先まで載った立派な装丁の同窓会名簿が印刷され、卒業生を対象にではあるが販売もされていた。したがって、色々な手づるを使えば至極簡単に手に入れることが出来る。こういった名簿を悪用しているのだろう。
しかも、名簿は学校関係ばかりではない。会社関係、OB会、町内会、マンションやアパート関係などなど、あらゆる組織で整備されている。そして、使用基準や保管体制がしっかりしていないと、個人情報保護法の施行以前ほどではないにしろ、たやすく第三者の手に渡ってしまう。何しろ、こういった情報までもが売買されている、とも言われているのだ。犯罪者にとって宝の山となってしまっている。
名簿に載っている番号に電話をして、ほんのチョッと芝居をするだけでビックリするような金額を手にする事ができる。しかも、報道される手口を真似れば、素人でもたちまち詐欺師になってしまう。中には、"遊びの延長"ではないかと思えるような、高校生や大学生グループが関与した詐欺事件も報道されている。悲しいかな、低年齢化が進んでいるのだ。
こうしてみると、かつては日本人の美徳であった「額に汗して働く」は、若者を中心にした犯人たちにとって完全に死語となっていることが分かる。嘆かわしい限りだ。しかも、騙す相手の殆どがこれまで身を粉にして働いてきたお年寄りであり、加えてその騙しの手口の多くが親の愛情をもてあそんでいることが、いかにも腹が立って仕方がない。結局、そんなニュースに接するたびに地団太を踏むことになるのだ。
こんなとき、つくづく昔の時代劇が羨ましくなる。劇の上ではあるが、弱いものが苛められるこんなときにこそ、正義の味方が颯爽と登場し、「てめえら人間じゃねぇー、たたっ斬ってやる」と悪者退治をしてくれたものだ。だが、乱れたとはいえ、法治国家の今の世の中ではそんな事も望むべくもない。しかし、せめて「求む! 桃太郎侍」の大募集広告を出したいものだ。
そして、お願いついでに、「ひと〜つ 人の世の生き血をすすり、ふた〜つ 不埒な悪行三昧、みぃ〜つ 醜い浮き世の鬼を 退治てくれよう桃太郎」と、決めてくれたらどれだけ気持ちのいいことか。ねぇー、皆さん!
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