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『変』

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2008年12月17日

毎年恒例となったその年一年の世相を表す漢字として、今年は「変」が選ばれた。今年が「変」だと知ってまず思い浮かんだのは、オバマ次期米国大統領が選挙戦を通じて米国民に訴えた「変革(CHANGE)」だ。流行語にもなった「Yes ,we can」とともに、日本人でも分かりやすいそのフレーズは、多くの国民の心を捉えた。国民を魅了するその熱い語り口や、わだかまりを捨て実績重視で登用する組閣人事のニュースに接すると、「変革」を何としても成し遂げようとする強い意思が伝わってくる。他国の大統領ながら大変頼もしい。そして、羨ましくもある。

では、ところ変わって日本ではどうかというと、悲しいかなオバマ氏の「変革」に比べると余りにも程度の低い話題が真っ先に浮かんできてしまう。総理大臣が1年ばかりでコロコロ変わる"異常事態"のことだ。総理大臣ばかりではない。各省庁の大臣もそうだ。組閣の間隔が極めて短い上、不祥事や失言で着せ替え人形のように変わってしまうため、今の大臣の名前すら浮かんでこない省庁が沢山ある。ハッキリ言って、「元○○大臣」の肩書きを乱発しているようなもので、「肩書き製造組閣」といっても言い過ぎではあるまい。これでは、コロコロ変わる大臣が"変わらない官僚"を必要としてしまうのも頷けるし、官僚が強くなるのも"必然の成せる業"と妙に納得してしまう。

しかし、「変」の字に関して直ぐに浮かぶのが同じ政治に関することであっても、オバマ氏と違って"怒りすら覚えるような出来事"で日本の大臣達を思い浮かべてしまうとは、日本国民としては極めて不幸なことだ。そんな日本の政治を見ていると、外国人ならずとも「指導者があれだけコロコロ変わるとは、日本とは変な国だ」と思ってしまう。政治の話になると、相も変わらず心貧しく恥しい話題ばかりだ。

 

一方、そんな政治の世界から経済の分野に目を転じると、政治以上にグローバルで重大な変化が世界を席巻している。世界経済の激変だ。米国に端を発した金融危機は、世界経済を急激に後退させ、それまで輸出企業を中心に比較的堅調だった日本経済をも急速に悪化させている。また、潤沢なオイルマネーで我が世の春を謳歌していた中東の産油国でも、原油価格の下落に伴い、景気後退がハッキリしてきているという。ドバイの不動産投資にも陰りが見えてきたらしい。オバマさんではないけれど、これまで欧米が中心となって牽引してきた金融資本主義経済が破綻した今、正に次の経済システムへの「変革」が求められているのだ。

このあまりにも急激な、そして世界的規模で進行している景気の悪化を目の当たりにして、「100年に一度来るか来ないかの未曾有(みぞう)の危機で、これは最早世界恐慌だ」とその深刻さを喧伝する経済評論家も出てきた。そして嫌な事に、「この不況脱出には最低でも1年は掛かるだろう」と言われている。先の見えないトンネルに突入したようなものだ。おかげで世界中に"不安"が蔓延している。1日でも早く、この不況から脱する「変化の兆し」を実感したいものだが、多くの企業では、「変化の兆し」を実感するまでどうやって持ちこたえるかが最大の課題となっている。特に中小企業はギリギリの状態だ。

こうした世界的な景気変動を見ていると、最早"自国だけ良ければ"の発想では自国経済をも成り立ってゆかないことが明白だ。その昔、江戸の町民は「宵越しの金は持たない」を江戸っ子の心意気としていたそうだが、そろそろ世界の大金持ち達や投資ファンドにも、「儲けられるだけ儲ける」の強欲さを棄てて節度ある健全な経済成長をさせる「心の変化」が求められている。そうしなければ再び戦渦の暗雲が世界に垂れ込める事になりかねない、と心配する向きも多い。そんな事は絶対に避けなければいけない。しかし恐ろしいことに、世界の経済は明らかに悪い方に"変化"している。この世界不況に端を発した紛争や戦争が起きなければいいのだが……。

 

さて、社会にも目を転じてみよう。今年も凄惨な事件や事故が多発した年であった。その中で「変」に関わるとすれば、「事故米」などという実態が良く分からない"変な名前"を付けた米騒動がその代表格だ。農薬に汚染された輸入米も「事故米」と呼んでいたそうだが、買い付ける前の段階で汚染されていたのだから、事故などというものではない。尤も、「安全だと思って輸入したら農薬に汚染されていた。事故に遭ったようなものだ」という意味で使っていたのなら、分からないでもないが……。

暗い話ばかりを紹介してきたから、最後は明るい話で締めくくる事にしよう。今年は、4人の日本人科学者がノーベル賞を受賞した。凄いことだ。中でも、小林誠氏と一緒に物理学賞を受賞した益川敏英氏の愛すべき変人ぶりが話題となっている。迎合主義がはびこる日本社会にあって、一滴の清涼剤のように感じるのは私だけではあるまい。しかも、そのキャラクター故か、益川氏に関するニュースを見ていると、何となく笑みがこぼれるから不思議だ。魅力のある人だ。文科省のゆとり教育を批判したように、これからも愛すべき変人ぶりを大いに発揮してもらいたいものだ。

【文責:知取気亭主人】

 

冬景色への変化の兆し

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