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知取気亭主人の四方山話
 

『福豆』

 

2009年2月4日

ついこの間新しい年になったばかりだと思っていたら、気が付けばもう2月だ。昨年末の仲間の急逝という悲しい出来事や新年早々の母の骨折・入院騒動など、てんやわんやの年末年始だったこともあり、アッと言う間もなくひと月が過ぎてしまった。それでなくても年々月日の経つのが早く感じられるようになってきているというのに、今年は格別早かったような気がしている。世界を席巻している不景気風が強すぎて、正月気分どころではないのも影響しているのかもしれない。もう少しゆったりとした気分に浸れないものかと思案するのだが、なかなか妙案は浮かばない。実際、昔のような“のんびりとした生活”を取り戻すには、便利さを追い求めている今の生活とおさらばしなければ難しそうだ。となると、今しばらくは慌ただしい生活を送るしかなさそうだ。 ただ、慌ただしい生活ではあるけれど、せめて伝統行事だけでも守っていくことが肝腎だと考えている。時間に追われる現代生活の中で、唯一昔の人の“時の流れに対する感覚”を味わうことができるからだ。そして、なんとなく離れがちな地域の結びつきや家族の絆などを、しっかりと結びなおしてくれるのも伝統行事の良いところだ。お祭りを中心に日本の各地には素晴らしい伝統行事があり、その地域独特の文化を育んでいる。また、地域毎のお祭りばかりでなく、正月と同じように日本国中で行われる行事もある。この2月にもそういった行事がある。そう「豆まき」だ。

立春の前日、節分に行われる「豆まき」は邪気を祓う伝統行事として古くから行われており、毎年この季節になると「福豆」と呼ばれる豆まき用の豆が店先に並ぶようになる。並んだ豆を見ると、一瞬にして懐かしい昔を思い出すことができる。その名のとおり正に「福豆」だ。この「福豆」に関して、2月1日の朝日新聞朝刊に面白い記事が載っていた。 静岡県で育ち石川県で暮らしている私にとって、「鬼は外、福は内」の掛け声とともにまかれる「福豆」は当然大豆を炒ったものだと思っていたのだが、北海道や東北などでは大豆ではなく落花生をまく人の割合が高いという。「殻付だと、拾った後も汚れを気にせず食べられる」という素晴らしい理由らしいが、目から鱗の「納得!」である。確かに、殻付であれば、土間に落ちたものでも気にせず拾って食べられる。賢い人がいたものだ。 また、「大豆や落花生のほかにも、チョコレートや飴をまく地域もある」とも書かれていたが、こちらのほうは我が家でもやっていた。子供が小さなうちは紙にくるんだ菓子をまいた記憶があるから、拾う人の年齢によってまく物も変えているのだ。考えてみると、この臨機応変さが、伝統行事を守っていくためには必要だ。例えば、地域住民が参加しやすい日程に変更している祭りがあるように、伝統行事も少しずつその時代にマッチしたものを取り入れているところがある。そうしないと伝統の維持は難しくなってきているのだ。観光客をたくさん呼べるメジャーな行事は別にして、地方の伝統行事は特にその傾向が強いと感じている。地域の伝統行事が生活の中心に位置していた昔と比べると、物理的にも気持ち的にも余裕がなくなってきているからだ。言い換えると、自然のリズムを無視した生活が多くなり、必然的に自然への畏敬の念に根ざした伝統行事は影が薄くなりつつあるのだ。「自然の中で生かされている」という謙虚さが失われつつある証拠なのかも知れない。

少し横路にそれたので話を「福豆」に戻そう。近くのマーケットで変わったパッケージの「福豆」を見つけた。下の写真がそれだが、見てのとおり「犬山成田山 祈祷済」と印刷されている。「犬山」とあるから中京地域では以前から出回っていたのかもしれないのだが、私は初めて見た。しかも「祈祷済」とある。ご利益はありそうなのだが、どの時点で祈祷してあるのか疑問がわいてきた。袋詰め前の大豆を祈祷したのか、袋詰めした後に祈祷したのか、一体どちらなのだろうか。まさか「祈祷済の袋に入れた」ということだけはないと思うのだが……。

もうひとつ、違った意味で感心した印刷に気が付いた。右下の写真だ。パッケージの左下に「国内産大豆使用(遺伝子組み換え大豆は使用しておりません)」の但し書きが印刷されているのだ。時代を感じるとともに、食料問題がこんな伝統行事にも影を落とすようになってきていることに愕然とさせられた。

安全な食品であることをアピールするために印刷したのだとは思うが、しかし、豆をぶつけられる鬼はどう思うだろうか。福の神には安心感を抱いてもらいたいが、鬼には安心してもらっては困るような気がするのだが……。

【文責:知取気亭主人】

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