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知取気亭主人の四方山話
 

『味なコラボ』

 

2009年2月18日

日本三名山の一つ白山の麓に、石川県白山市桑島(旧白峰村桑島)という小さな集落がある。特にこれといった観光名所もないのだが、中世代ジュラ紀末期頃から白亜紀前期にかけての恐竜や亀、あるいは植物などの化石が数多く産出する「桑島化石壁」があるところとして、専門家や化石ファンには良く知られている。金沢市から国道157号線を南に下ること凡そ1時間、もう少し走ればすぐ福井県という手取川の上流に位置する山間の小さな集落で、石川県の中でも最も雪深い地域のひとつだ。

その桑島に、堅豆腐と呼ばれる美味しい豆腐がある。名前の通り堅く良く締まった豆腐で、縄で縛って持ち上げても型崩れしないほどだ。しかも、水気が少なく堅い分、味も濃い。刺身にして食べると、しっかりとした歯ごたえとほのかな甘みが堪らない。日本酒の肴には最高で、私の知り合いにも隠れたファンが多い。「上野とうふ店、堅とうふ、あぶらあげ」と書かれた看板がなければ見逃してしまうような、こぢんまりした店で作られているのだが、誰やらの口真似で言うところの"いい仕事をしている"のだ。

以前から仕事の帰りや行楽の帰りに寄っては買い求めていたが、これまでその製法など詳しいことも聞かず、何年に一度かの味わいを楽しみにしていただけだった。ところが、先日立ち寄ったときに、偶然買いに来た地元のお爺ちゃんから美味しさの秘訣を聞いた。

爺ちゃんの話では、美味しさの秘訣は「生絞り製法」だという。店の人から詳しい話を聞く時間もなかったので、インターネットで豆腐の製法を調べてみた。堅豆腐ではない一般的な堅さの豆腐の生絞り製法の手順は、おおよそ次のようなものだ。

 

 ① (水に漬けておいた)大豆に水を加えすりつぶして"呉"をつくる。

 ② 呉に熱湯を加え、これをこし袋で絞って"豆乳"と"おから"に分ける。

 ③ 豆乳をひと煮立ちさせて、火を弱め5〜10分煮る。火を止めて、にがりを加える。

 ④ 上澄みと白い固まりに分離したら、型枠に入れる。

 ⑤ 15〜20分ほどで型枠から外し、20〜30分水にさらしておく。出来上がり。

 

普通の豆腐作りだと、②の段階で、呉を煮てから"絞り"の工程を行い、"豆乳"と"おから"に分けるのだそうだ。生の状態の呉を絞るから「生絞り」と言うらしい。くだんの爺ちゃんの話では、他の店では普通の製法による堅豆腐も売られているが、普通の製法に比べ「生絞り」は甘みがあり味も良いという。好みの問題もあるのかもしれないが、我が家で食べ比べてみたところ、やはり生絞りに軍配が上がった。勿論、"味の濃さ"など、一般的な絹ごしや木綿ごし豆腐などは問題にならない。私が食べた中ではピカイチの豆腐だ。

 







左が桑島の堅豆腐、右が普通の豆腐

 

そのピカイチ豆腐が大豆兄弟の味噌と出会い、更にビックリするような大変身を遂げるのだが、これがまた堪らなく美味しい。豆腐の味噌漬けだ。堅豆腐を180日間じっくりと味噌に漬けこんだもので、風合いはまるで柔らかなチーズのようだ。その濃厚で奥深い味は、ひと舐めぐい飲み一杯、といったところだろうか。とにかく酒が進む。日本酒ばかりでなく、ワインやウイスキーなど洋酒のツマミとしても相性はばっちりだ。私はもっぱら酒の肴としてそのまま食しているが、熱々のご飯に載せても美味そうだ。豆腐も味噌もどちらも大豆食品であるから、栄養価もかなり高く、酒飲みにはもってこいのツマミだと思っている。

 

パッケージ

風合いはまるでチーズ

 

私が「味なコラボ」と呼んでいるこの豆腐の味噌漬け、インターネットのお世話になったところによれば、熊本県南部にずいぶん前から伝わる保存食だという。それが全国に広がり石川県にも伝わったのか、県内にはこの桑島の堅豆腐以外の味噌漬けも売られている。確かに、この濃厚な味をもってすれば、全国に広がっても不思議はない。ただ、堅豆腐でなければ、水っぽくてとてもチーズのようにはならなかったに違いない。そういう意味では、「味なコラボレーション」は必然の出会いだったのかも知れない。

ついでに言わせてもらうと、私にとってはこの"豆腐の味噌漬け"と"酒"の出会いが、どうやら必然のようだ。気が付くと、いつもより酒の減りが早い。蒸発したのか……? 不思議なことがあるものだ!

 

最後に、豆腐好き、酒好きの読者の為に、堅豆腐と豆腐の味噌漬けを製造・販売している店のホームページを記載しておく。是非、石川の味をご賞味あれ!

 

 堅 豆 腐:上野とうふ店(http://www.katatofu.com

 味噌漬け:ウメサ食品(株)(http://www.umesa.net

【文責:知取気亭主人】

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