いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『楽しい疑念』

 

2009年3月25日

先日、生まれて初めての、嬉し〜い出来事があった。これまで「そんなことは到底ありえないだろう」とはなから諦めていたことが、なんと実現できたのだ。それを可能にしている人たちを秘かに羨ましく思い、「俺は死ぬまで無理だろうな」と実現できることなど考えてもみなかったことが、ナント可能になったのだ。普通に考えれば有り得ないことが起こったのだから、私の喜びようも分かろうというものだ。本当に、バンザーイだ! しかし、こんなに私が喜んでいることも、実は、他の人が聞けば「何だ、そんなことか!」と鼻で笑われそうな他愛もないことなのだ。エッ、「勿体ぶらずにサッサと種明かしをしろ!」ですって? 仕方がない、恥しいけれどお教えしよう。

 

私の足が大きいのは、既に四方山話の第69話「足格」で白状した。そこでも披露したように、私の足のサイズ(大きさ)は、いやいやもう少し正確に言えば「私がこれまで買っていた靴のサイズ」は、何を隠そう28センチと"標準よりも少しだけ大きめ"だ。実際のところは27.5センチでも履けるだろうと思っているのだが、なかなかそのサイズの靴が店頭になく、結局泣く泣く28センチの靴を履き続けている。ところが、27.5センチの中途半端サイズは勿論、28センチ以上の"標準より少し大きめサイズ"が置いてある店となると、金沢では本当に少なく、探すのにいつも苦労している。

靴だけではない。めったに履くことはない下駄を筆頭に、サンダル、スリッパ、靴下、その他"足に関わる商品"選びには、足が立派に成長した高校以来、随分と苦労させられていて、これらのサイズが合わないのも苦痛だ。しかし、踵が半分だけはみ出しているのを我慢すれば、なんとか履ける。ところが、靴はそうはいかない。「悪し(足)からず」と言って、足に無理強いして窮屈なサイズで我慢してもらうわけにもいかず、やっと捜し求めたものを、靴のほうから「もうダメ!」と悲鳴を上げるまで履き続けることになる。チョッとだけ標準サイズと違う、という個性なのに……!

 

そんな中、ビジネスシューズの底が磨り減りくたびれて来たことや、息子の結婚式が間近に迫ったこともあり、久し振りに靴を新調することにした。ところが、以前運動靴を買った靴屋に行って驚いた。最近のビジネスシューズはロングノーズが流行とかで、やたらとつま先の長い靴が多い。数少ない28センチの靴を見つけ履いてみたのだが、それでなくても大きな靴が、30センチを優に超えるガリバーサイズの巨大靴に見える。思わず店の人に、「これだけ大きいと、普通の下駄箱に納まりきれないね」と冗談のつもりで軽口を叩いたところ、「そうですね、入らないかもしれませんね!」とマジの答え。ムッとした表情をしたのだが、果たして気が付いたかどうか……。

下駄箱に入らないのでは、店に入るのに靴を脱ぎ下駄箱に仕舞うタイプの居酒屋には行けなくなってしまう。飲みにいけないのは決定的にまずいし、第一私の「本当は27.5センチのサイズで十分だ」という自尊心が、このロングノーズでは益々傷つけられてしまう。ということで、「流行など追えるか!」と捨て台詞を頭の中で繰り返し、なるべく小さく見えるズングリムックリの普通の形を探したのだが、誰の企みなのかロングノーズ以外は27センチまでしか置いてない。仕方なく、「私の足に合う、流行に左右されないクラシカルな靴はどこだ」と広域捜査をすることになってしまった。しかし、毎度のことながら、なかなか足にフィットする靴がない。ある店では、「お取り寄せならできますが?」というが、靴は履いてみないと合うかどうか分からないから、と丁重にお断りした。

 

ところがである。遂に、見つけたのだ。しかも、ここからが大事なのだが、しかも、26.5センチの靴に私の足が入ったのだ。27.5ではなく26.5センチですぞ! 店員の言う「26.5センチでピッタリですね!」に我が耳を疑った。確かに、試し歩きをしても何の違和感もない。もしかして27.5センチの間違いではないか、と靴底に記されたサイズを何度見ても、間違いなく26.5センチだ。26.5センチの革靴など、これまで履いたことがない。生まれて初めての経験だ。あまりの嬉しさに、急いで家内に電話を入れた。

 

「靴があったぞ! しかも驚くなよ、26.5センチだぞ!」

「エエッ、ウソッ、信じられない! 本当に大丈夫なの?」

「俺も信じられないけど、それが大丈夫なんだ!」

「そう! 良かったじゃない、そんなこともあるんだ!」

 

と、こんな他愛もない会話で初めての喜びを分かち合ったのだが、なぜこんな思いもよらぬサイズに入ったのか、合点がいかず定員に聞いてみた。すると、靴はメーカーによって多少サイズが違い、特にこのメーカーのものは大きめだという。しかし、いくらバラつきがあるといっても、26.5センチと28センチでは1.5センチも違う。靴のサイズなど結構いい加減なものだな、と思い始めたとき"ある疑念"が浮かんだ。

「ひょっとして、俺がこれまで履いていた靴は小さめに作るメーカーのものだったのではないか?」

「俺の靴のサイズは、本当は26.5センチだったのでは?」

「これまで28センチだと思い続けてきたことは、間違い?」

「きっとそうだ!」

そんな、バカバカしくも楽しい疑念が浮かび、思わずにやけてしまった。

【文責:知取気亭主人】

 

 

 

ミツマタ
(アカバミツマタ)

 

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.