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知取気亭主人の四方山話
 

『DNA、その摩訶不思議な遺伝子情報』

 

2009年6月10日

つい先日、今回のタイトルに使ったDNAに関して衝撃的な出来事があった。テレビなどの大々的な報道で皆さん既にご承知のことと思うが、女児を殺したとして逮捕・服役させられていた無期懲役囚の再審請求で、逮捕の決め手となったDNA型の鑑定が覆ったのだ。逮捕時に出されたのは、「DNAの型が一致した」との鑑定だった。それが今回一転して、検察・弁護双方の鑑定人から、全く逆の「型は一致しない」の再鑑定結果が出されたのだ。これを受け、1991年12月の逮捕・拘留から約17年半もの長きに亘って身柄を拘束されていた(足利事件の)菅家さんは――無罪が確定したわけではないが――、6月4日、刑の執行が停止され釈放された。新たな事実が認定されたからといって、「17年余も冤罪で身柄を拘束されていた事実」が消えるわけではないが、過ちを犯し続けることを止められたことだけでも何よりだった。

それにしても、人の一生を左右しかねない判定に使われる鑑定が、そんなにも頼りないものだったとは驚きだ。映画やサスペンスドラマを見ていて、「DNA型鑑定は絶対だ!」と思い込んでいただけにショックだ。ただ、鑑定技術が格段に進歩した今に比べると17年前当時の判別精度はかなり低かった、というから致し方ないところでもある。

朝日新聞(2009年6月5日朝刊)によれば、「DNAの型が一致した」との鑑定を出したときの検査法は「MCT118」と呼ばれるもので「1千人に1.2人」の確率で識別が可能だったものが、最近は「STR」と呼ばれる検査法が導入され、技術の進歩も相まって「4兆7千億人に1人」もの識別精度に向上したという。地球上の人口が70億人としても、全ての人一人ひとりを識別することができるのだ。凄いことだ。

 

ところで、良く耳にするこのDNAとは、一体何なんだろう。調べたところによれば、DNAはdeoxyribonucleic acid(デオキシボースを含む核酸の総称)の略称で、物質の名前らしい。その塩基配列の中に符号化された遺伝情報が含まれていることから、一般的には「遺伝」、あるいは「遺伝子」の意味を含んで使われているのだという。そういうことであれば、ここでもそういった意味で使うことにしよう。

さてそれでは、身近なところで、私のDNAを少しばかり紐解いてみることにしよう。

 

私は若いときから白髪が多く、今ではすっかりロマンスグレーになっている。母も真っ白だし、母方の祖父も綺麗な白髪だったと記憶している。我が家に伝わるこの「白髪遺伝子」は、本人の「受け継ぎたくない意思」を完全に無視した上に、しかも確実に引き継がれるように仕組んでいるらしく、30間近になった長男の髪にもめっきりと目立つようになってきた。私以上に私の父親似の顔に加え、白髪、となれば我が家のDNAをしっかりと受け継いでいることは、まず間違いが無い。この外、首の付け根から肩にかけてタップリと肉が付きやや猫背なところ、目が弱いところなども、私と長男はよく似ている。

ところが、である。残念なことに、私が気に入っている「飲兵衛遺伝子」は受け継いでいないらしいのだ。私は自他共に認める酒好きだし、父親も、ウワバミとまではいかないまでも可也いける方だったらしい。ところが長男は、私の「飲兵衛遺伝子」と妻の「下戸遺伝子」が程よく混ざり合ったらしく、飲むとすぐ赤くなりほろ酔い加減になる。しかも、少し飲み過ぎると眠くなってしまい、とても「飲兵衛遺伝子を受け継いでいる」とは言い難いのだ。

こうしてみると、この摩訶不思議な物質DNAは、似て欲しいところは遺伝させず、似て欲しくないところはしっかりと遺伝させる、天邪鬼な性格を持っているらしい。

 

元々遺伝子と呼ばれるものは、生き残るために突然変異を繰り返してきた結果身についている術のようなもので、必要なものは子孫に受け継がれ、必要でないものは受け継がれないで淘汰されていくものだ。そう考えると、度が過ぎる「飲兵衛遺伝子」は淘汰されていく運命なのかもしれない。しかし、だからと言って、「白髪遺伝子」が生き残るために必要だとも思えない。私のDNAの「生き残るために必要な……」の判断基準は、一体どうなっているのだろうか。

 

そんな訳の分からぬ私のDNAはさておいて、「遺伝子」について書かれた面白い本を紹介しよう。人類が生き残るために突然変異を繰り返し進化を遂げた結果、その進化の過程で受け継がれた遺伝子によってある民族では特有の病気に罹りやすい体質になっている、との説を分かりやすく解説している「迷惑な進化」(シャロン・モアレム、ジョナサン・プリンス著、矢野真千子訳、日本放送出版協会刊)だ。

「鉄をためこむ遺伝子」だとか「伝染病に強い遺伝子」の話、「糖尿病と気候変動の関係」や「人類の歴史と高血圧の関係」など生活習慣病についての話題も面白い。そして、何と言っても注目すべきは、遺伝子が例え受け継がれたとしても、遺伝子のスイッチがオンにならなければ、その特徴は発現しないのだという。さしずめ、白髪など似て欲しくない遺伝子はスイッチがオンし易い、という事か?

いずれにしても、DNAという摩訶不思議な遺伝子情報の世界に、思わず引き込まれてしまう面白い本だ。活字を見るとすぐに眠くなる遺伝子を受け継いだあなた! これから始まる梅雨の夜、雨音を子守唄代わりに、神秘の世界に是非どうぞ!

【文責:知取気亭主人】

 

『迷惑な進化』
病気の遺伝子はどこから来たのか

【著者】シャロン・モアレム /ジョナサン・プリンス

【出版社】 日本放送出版協会
【ISBN】 978-4-14-081256-3
【ページ】 253p
【サイズ】 
単行本
【本体価格】 \1,890(税込)

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