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知取気亭主人の四方山話
 

『探し物は何ですか…』

 

2009年9月24日

今となっては歌詞もメロディーもだいぶ怪しくなってきたが、流行っていた当時良く口ずさんでいた歌に、井上陽水の「夢の中へ」という曲がある。

 

探し物は何ですか

見つけにくいものですか

カバンの中もつくえの中も

探したけれど見つからないのに

まだまだ探す気ですか

それより僕と踊りませんか

夢の中へ 夢の中へ

行ってみたいと……  

 

こんな歌詞だ。この歌を最初に聴いたとき、歌詞にあるとおり「探し物はなんだろう」と、想像を働かせた事を良く覚えている。「車か部屋の鍵だろう」とか、「イヤイヤ、そんな具体的なものではなくて自分の夢だろう」とか、「相手(恋人)の気持ちだろう」などと勝手な想像をしたものだ。結局、この曲を作った井上陽水の目論見どおり(?)、「探し物は何ですか?」という事になってしまったのだが……。

 

当時は「置き忘れた物を探す」という事とはトンと縁のなかった私だが、歳とともにグッと"ご縁"が深くなってきた。余り深いご縁にはなりたくないのだが、特に多いのが携帯電話だ。家は勿論、車の中や会社でも置き忘れる事がよくある。その度に、「持ち物が増え、やる事も増えてきたからで、決して老化ではない」と自らに言い聞かせ、何とか納得させている。しかし、トイレに置き忘れた事に気付き慌てて取りに行くときなどは、照れ笑いを浮かべてはいるものの、正直に言うと心の中では一抹の不安を感じている。

それでも、「まだ自分の行動を振り返る事が出来るのだから」と一分の希望は捨ててない。ところが、自分の忘れ物ではなく、他人が置き忘れたりなくしたりした物を探すとなると、行動を振り返る事が出来ないだけに、探し当てるのは至難の業だ。そんな探し物が、我が家にちょっとした騒動を巻き起こした。

 

先週の火曜日(15日)の夕方から金曜日(18日)の明け方まで、妻が家を留守にした。仲間と一緒に、ある山に出かけたのだ。出発した日の夜、食事の支度をしていた次女が、「さて食べましょう」と準備の仕上げに取り掛かったところで、生活に欠かせない"ある大事なもの"が見当たらない事に気が付いた。箸だ。しかも家族全員の箸だ。いつもならあるはずの箸立ての中は、割り箸が二膳あるばかりで、本来の主はどこに行ったのか一膳もない。

「お母さん、きっと慌てて出かけて行って、思わぬ所に仕舞ってあるんじゃない?」と次女。「そうだな!」と言いながら探すのだが、これが中々見つからない。井上陽水の「夢の中へ」を口ずさみながら、食洗機の中、食器棚の引き出しの中、冷蔵庫の中、果てはゴミ箱まで探すのだが、ない! "見つけ易いもの"のはずなのだが……。

結局この日の大捜索は諦め、割り箸で食事、という事になったのだが、食事中の話題は勿論「どこに仕舞ったのだろう?」だ。「ひょっとして、慌てていて箸も一緒に山に持っていったんじゃない?」と次女。「その可能性もあるな」と応じながらも、また再び「しかしどこに仕舞ったのだろう?」と堂々巡りの思考が始まる。代わりがある分、無いからといって特段生活に困る代物でもないし、それどころか通常では有り得ない探し物だけに、隠し場所を探し当てる感じが結構楽しい。しかも、これまで聞いた事もない出来事だけに、至極話題性もある。当然の流れとして、「次の四方山話はこれで行こう!」と次女に宣言し、この四方山話になったわけである。

 

さて、次の日も、「♪探したけれど見つからないのに、まだまだ探す気ですか…」の歌詞宜しく、今度は次男も加わっての大捜索の再開だ。まさかそんな所には無いとは思いつつも、妻が置いていったカバンの中も、挙句の果ては冷蔵庫の冷凍室まで探したけれど、どうしても見つからない。次女がとうとう「お母さん大丈夫かな?」と言い出した。笑いを通り越して、どうやら心配になってきたらしい。

騒動が落着した後に漏らしたところによると、「いよいよお母さんに認知症が出始めたのではないだろうか?」、「そうなると私はお嫁にいけないわ!」と真剣に悩んだという。「私は」というと、多分どこかにしまってあるのだろうと思っている分、娘ほど深刻ではない。それと、私より先にもうろくして貰っては困る、という切実な願いがあるからなのだが……。オッと、これは私だけの胸に仕舞っておこう。

 

そんな「我が家の珍騒動」を知ってか知らずか、出かけたきり、妻からは何の音沙汰も無い。のん気なものだ。やっと、出発から二日後の木曜日(17日)、昼過ぎてから携帯電話が鳴った。「無事山に登ってきました。良かったよ!」と明るい声の一声だ。勿論、無事に登れたかどうかも心配ではあったが、別な心配もあり、ついついそっちが先に口をついて出た。

「お帰り、ところで箸をどこに仕舞った?」

そう訊くと、「ゴメン!皆と一緒に登りたくて山に持ってきた」と嬉しそうな声で言う。「もうろくでなくて良かった!」と胸を撫で下ろしながらも何事もなかったように、「だったらいいけど、箸の捜索で大騒動だったぞ」と言うと、「ゴメンね」と答えて、詳しくは帰ってからと電話を切った。我が家らしい珍騒動ではあったが、何はともあれ、最悪のパターンでなくて良かった!

これで、次女もお嫁に行く事が出来そうだ。無論、探しものがあれば、の話だが……。

【文責:知取気亭主人】

 

彼岸花
(23日はお彼岸の中日)

 

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