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2010年2月10日
2月4日、横綱朝青龍が突然引退した。初場所開催中に起こした「泥酔暴行騒動」の責任を取って、彼なりにケジメをつけた格好になった。しかし、騒動を起こしたにも拘らず初場所では25回目の優勝を飾り、「まだまだ強い横綱を見られる」と誰もが思っていただけに、相撲ファンならずともビックリだ。「大横綱と言われた"北の湖"を抜き、史上三位となった優勝回数をどこまで伸ばすか」も大いに興味のあるところだった。一方で、そういった興味や期待とは裏腹に、以前から「横綱としての品格が…」の見方もあり、良いに付け悪いに付けとにかく話題の多い力士だった。
そんな日本での評判が伝わっているのだろう、出身地のモンゴルではかなりエキセントリックな報道が目に付く、とテレビニュースは伝えている。尤も、彼の出処進退には日本国内でも賛否両論あるようだから、情報が乏しい上にまだまだ活躍が期待された国民的英雄の電撃引退だっただけに、モンゴルの人達の気持ちは分からないでもない。しかし、その手の難しい話は皆さんに譲ることにしよう。それよりも私が気になったのは、テレビから流れてきた次のようなアナウンサーの言葉だ。
「朝青龍は身長184センチで、角界では平均的な体格であったが……」
平均的な身長が184センチとは、エライでかい。確かに、縦も横もビッグな大男たちが繰り広げるスポーツだが、お相撲さんの平均身長は180センチを切るぐらいだろうと思っていただけに、そんなにも高かったとは驚きだ。もう暫く前になるが、私の好きだった"舞の海"は、新弟子検査のときに合格ラインの173センチに満たなくて頭にシリコンを入れて何とか検査をパスした、という逸話を聞いたことがある。小兵の"舞の海"が活躍していた頃には既に"曙"や"小錦"など大柄な外国人力士が活躍しており、番付の上位には比較的大型力士が多かった記憶もある。しかし、それよりも少し前の昭和時代の後半の頃は、まだ小兵力士も多く、大相撲のテレビ中継を観ていた印象からすれば、大方の力士は今の平均身長よりも結構低かったように記憶している。いったい、いつの間に平均身長がこんなにも伸びたのだろうか。
曙や小錦といったハワイ出身の大型力士が活躍した頃は外国人力士も数が少なかったのだが、少し前から朝青龍を始めとするモンゴルや東欧出身者など、体格の良い外国人力士がかなり増えてきた。そういった体格の良い外国人の関取が増えてきたのに相まって、日本人の体格そのものも食生活の西洋化に伴って徐々にではあるが大きくなってきていることも、平均身長を押し上げている理由なのだろう。
今時の日本人成年男子の平均身長は170センチを僅かに超えたあたりだと記憶しているが、それに比べるとモンゴル人や東欧人はかなり体格がいい。オリンピックなどでテレビ中継される相撲以外のスポーツを見ても、一段と小柄な日本人との体格差は明らかだ。また、以前会社に居た中国人に依れば、同じ中国人でも東北地方の人は大柄で、南地方の人は総じて小柄だという。中国に何度か行ったとき、確かにそれは実感した。それを裏付けるように、情報の出どこは何だったか忘れたが、「寒さが厳しいところでは人も動物も大きくないと寒さに耐えられない」との情報を得た記憶もあり、北極圏に暮らす白熊の巨大さに素直に納得したものだった。
一方、日本人成人男性(30歳)の平均身長も、古い横綱の名前で申し訳ないが"千代の山"や"照国"などが丁度活躍していた時代である1950年(昭和25年)の160.3センチから、55年後の2005年(平成17年)には171.6センチと、10センチ以上も伸びている(厚生労働省「国民健康・栄養調査」)。これは、食糧事情の改善のたまものだろう。因みに、朝青龍に優勝回数で抜かれた"北の湖"は179センチ、今回相撲協会の理事選挙で話題を集めた"二代目貴乃花"は185センチである(日本相撲協会)。どちらも日本人としては大柄だ。
ところで、横綱朝青龍の電撃引退を大々的に伝えた2月5日の日本経済新聞朝刊に、沖縄県の石垣島で日本最古の人骨が沢山見つかった、という記事が載っていた。放射性炭素年代測定法で調べたところ、約2万〜1万5千年も前の旧石器時代の人骨だったという。随分古い。彼らは何を見、何を食べていたのだろうか。また、身長はどれ位だったのだろう。
記事には「全身骨格」の文字が無かったから、断片的な骨から彼らの体格を推定することになるが、現代に比べて極めて"不安定で劣悪"な当時の食糧事情を考えると、お相撲さん達の平均身長184センチには勿論、今から60年前の平均身長160.3センチにも及ばないことは確かだろう。先ほど述べた55年間の身長の伸びを見ても、食糧事情の良し悪しが体格に大きく係わっていることは明白だ。
ただ、食料自給率が40%当たりをウロチョロしている日本なのに、体格だけこんなに立派になっていいものなのだろうか。どこかに"無理"があるのではないだろうか。上位で活躍する力士の多くが外国人力士であることを考えると、今の日本人は"体力"や"気力"が伴わないで"体格"だけが立派になっている、とは余りに穿った見方なのだろうか?
【文責:知取気亭主人】 |