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知取気亭主人の四方山話
 

『人を感動させるということ』

 

2010年3月31日

日本時間の3月22日、10日間に亘って開かれていたバンクーバー冬季パラリンピックが閉幕した。期間中、ニュース映像ではあったが、各国選手の素晴らしいパフォーマンスを楽しませてもらった。しかも嬉しいことに、日本選手が大活躍をしてくれた。日本は金メダル3個、銀メダル3個、そして銅メダル5個の計11個ものメダルを獲得し、金メダル数でもメダル総数でもオーストリアと並んで堂々の7位となった。素晴らしいことだ。

クロスカントリーの新田佳浩選手が圧倒的な強さで金メダル2個を獲得したのにも興奮したし、金メダルを獲得した狩野亮選手や銀・銅2個のメダルを獲得した森井大輝選手など、アルペンスキー座位クラスに出場した選手の大活躍にも本当に興奮させられた。特に、アルペンスキーのあのスピードは凄い。見ているだけでもその高速に圧倒される。しかも立位競技に比べて目線が低く地上に近い分、選手達が感じるスピード感は物凄いに違いない。座位スキー競技に使われるマシンの進化も高速化に繋がっているらしいが、それにしても彼らの身体能力の高さには驚かされる。半端なパフォーマンスではない。

勿論、持って生まれた身体能力の高さだけでは、あのパフォーマンスを発揮することはできない。大会期間中の報道で知ったのだが、自身の獲得メダル数を10個に伸ばした大日方(おびなた)邦子選手のように、練習環境を求めてあえて職場を変えたアスリートもいれば、クロスカントリーで銅メダルを獲得した大田渉子選手のように、単身フィンランドに留学したアスリートもいるという。輝きを放つパフォーマンスの陰に隠れた"日々の努力"も、これまた半端ではないのだ。

そんな彼らの努力が報われた嬉しい出来事があった。

  

パラリンピックで最も印象深い選手に送られる「ファン・ヨン・デ功績賞」を、アイススレッジホッケー日本チーム主将の遠藤隆行選手が、日本人として初めて受賞したのだ。アイススレッジホッケーの銀メダル獲得も勿論素晴らしかったが、その銀メダルに大きな花を添え、金メダル獲得以上の素晴らしい表彰があることを我々に教えてくれた。と同時に、障害を持つ日本人アスリートに、また障害のある人のスポーツ振興に携わる関係者に、大きな自信と勇気を与えた受賞と言っていいだろう。素晴らしい出来事だ。

「素晴らしい出来事だ」とは書いたが、実を言えば、そんな素晴らしい賞があることを今回初めて知った。「ファン・ヨン・デ功績賞」は、22年前のソウル大会で韓国人医師によって設立された賞で、最もパラリンピック精神を反映する活躍をした男女選手1名ずつに贈られるのだという。今年の大会の男子受賞者が、嬉しいことに日本の遠藤選手だったというわけだ。因みに女子は、カナダのColette BOURGONJEという選手が受賞したという。

  

ご存知のように、アイスホッケーは北米や北欧の国々がお家芸にしている競技で、日本が強いというイメージは、私も持っていなかったし、開催国であるカナダの人達も持っていなかった筈だ。その日本が準決勝で優勝候補の地元カナダを破ったのだから凄い。そのニュースを聞いた瞬間、思わず家族で「ヨッシャッ!」と気勢を上げてしまった。当然、負けたカナダの観客はガッカリしたに違いない、と思っていた。ところが、インターネットで関連ニュースを調べてみると、彼らにとって敵である筈の日本チームの活躍・勝利に、カナダの観衆からもスタンディングオベーションが出たという。自国チーム敗北の悔しさを忘れてしまうほど、日本チームの戦う姿に感動したのだ。勿論、敵味方の分け隔て無く、素晴らしいパフォーマンスには惜しみない敬意を払うカナダ観衆があってのことで、彼らのスポーツを観戦する態度も金メダル級だ。

更に嬉しいことに、「勝利の感涙にむせる日本チームに、とても深い敬意を感じた」との組織委のフーロング会長の談話も載っていた。必死に戦う姿と勝利後の感涙の姿に、"勝利に対するひたむきな思い"と"乗り越えてきたものの大きさ"を多くの観衆が感じ取ったのだろう。例え障害があっても、一流のプレイヤーが全力で戦う姿は、敵味方の関係なく見ているものに感動を与えるものだ、ということを改めて教えられた。

これほどまで多くの人々に感動を与えた遠藤選手に、アイススレッジホッケー日本チームに、そして今回参加した世界の全てのアスリートに、改めて大きな拍手を贈りたい。

  

ところが、そんな感動話と対極の話題が甲子園から伝わってきた。21世紀枠の高校と戦い破れた、高校野球部監督の不適切で不用意な発言だ。「21世紀枠の高校ごときに負けるとは、末代の恥だ」との主旨の発言が、あろう事か試合直後のインタビューで語られ、高校野球ファンに驚きと失望を与え折角の好ゲームを台無しにしてしまった。熱戦を制した方にも、残念ながら悔し涙を飲んだ方にも、さらには両チームの健闘に拍手を送った観客にも、言いようのない後味の悪さだけが残ってしまった。しかも、その発言の主が野球部の監督だ、ということも情けない。

前述したように、スポーツには観ている者を魅了し感動させる力がある。それには、日々の練習に裏打ちされた"高度なパフォーマンス"と、競技に望む"真摯な態度"が必要不可欠だと思う。そして、そういったものが観ている者の胸に伝われば、アイススレッジホッケー日本チームの遠藤選手のように、例え敵の応援団にでも感動を与えることができるのだ。それがスポーツの力なのだと思う。そう考えると、指導者足るべき者、特に青少年スポーツの指導者はそのこと知って初めて「良き指導者」への道を歩むことができるのだ、と言いたくなるのだが……。

【文責:知取気亭主人】


キンセンカ
 

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