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2010年4月28日
のっけから私事で恐縮だが、後5ヶ月程経つと、私たち家族にとって大変嬉しい出来事が待っている。順調に行けば、9月に、待ちに待った初孫が誕生する予定なのだ。長男夫婦が結婚して以来、――と言っても未だ1年しか経っていないのだが――孫の誕生を心待ちにしていただけに、妊娠したことを聞いた時の嬉しさは例えようがない。聞いたその日は、勿論祝杯だ!
ただ、私は祝杯を挙げて良い気分になったのだが、多くの妊婦さんがそうであるように新たな命を授かった嫁には通らなければいけない関門が待っていて、 "つわり"に苦しめられていた。しかし、小さな生命の成長は早い。超音波検診のたびに撮影される胎児の写真を見せてもらうと、月を追う毎に成長していくのがハッキリと分かり、今では頭など身体の輪郭がおぼろげながら分かるようになってきた。小さな命の成長をお腹の上から確認できるなんて凄いことだ。しかし、もっと凄く、そして感激することがある。0.1ミリ程だと言われる小さな小さな受精卵が、お母さんのお腹の中で細胞分裂を繰り返し、やがて人間の姿に成長していくことだ。なんと神秘的な出来事だろう。
よく成長過程の写真として雑誌などに載っている、どことなく爬虫類に似た胎児の姿を見ると、「人間の胎児の成長は地球の生命の歴史そのものだ」ということが良く分かる。何億年もかけて進化してきた生命の歴史を、出産に至るまでの僅か十月十日(とつきとうか)の期間で再現している様に思えてならない。しかも、人類が発展させてきた科学技術に一切頼ることなく、正確に時を刻みながら成長していく。だからこそ、「出産予定日」が割り出せるのだろう。正に神の領域だ。
ところで、このような「生命の誕生」とは全く違う分野の話だが、私にはもう一つ楽しみにしている「予定日」がある。この予定日は、科学技術に一切頼ることなく予定される前述の話とは全く逆で、"神業"と呼んでも良い様な人間の知恵と技によって実現可能となったものだ。しかも、嬉しいことに日本人の手で実現されようとしている。その「予定日」が、つい最近発表された。
2005年11月9日付けの四方山話第124話「遙かな旅路」でも取り上げた小惑星探査機「はやぶさ」が、7年もの長旅を終え、6月13日に無事地球に帰還する予定だというのだ。打ち上げ以来、ずっと気にしていただけに大変嬉しい発表だ。当時の文章を読み返してみても、ミッション成功への期待の大きさが分かる。その一部を紹介しよう。
2003年5月に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」が約2年半もの長旅の末、今やっと地球から約3億km離れた小惑星「イトカワ」にわずか約3.5kmまで近づき、ある任務を成功させるべく最終段階に入っている。
「イトカワ」は、日本のロケットの父「糸川博士」にちなみ名付けられた小惑星で、新聞に掲載された写真を見ると"細長いジャガイモ"のような形をしている。大きさは長さ約500m、幅約300mと宇宙の中では芥子(けし)粒にも満たない大きさだ。この小惑星に着地して直径約1cmの金属球を打ち込み、衝撃で吹き飛んだ砂や岩石の破片を採取して地球に持ち帰ることが、「はやぶさ」に課せられた任務だ。成功すれば、月以外の天体から試料を持ち帰る人類史上初めての快挙となる。日本の宇宙開発技術もたいしたものではないか。順調に行けば地球への帰還は2007年6月だという(2005年9月13日、朝日新聞朝刊)。足掛け4年に及ぶ遥かな旅路だ。
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早いもので、これを書いた日から既に4年半も経った。また、当時帰還予定としていた時期からもやがて3年が過ぎようとしている。この間、燃料漏れやエンジンの故障など幾多の困難に遭遇し、一時は地球への帰還も不可能と思われた。しかし嬉しいことに、そういった困難を無事乗り越え、満身創痍となりながらも地球帰還が実現出来そうなのだ。正に快挙だ!
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が4月21日発表したところによれば、小惑星「イトカワ」での岩石採取試料が入っている可能性のあるカプセルは、予定通りに行けば6月13日、オーストラリア南部のウーメラ砂漠に落下するという。この時、「はやぶさ」の本体は、大気圏突入の際に燃え尽きる計画だ。当然カプセルも燃え尽きる危険性があり、燃え尽きさせないで地上に落下させることが最後の難関だという。何しろ大気圏突入速度は秒速12キロという物凄いスピードだ。少しのミスが命取りになる。最後の神業に今一度期待したい。
しかし、凄い旅をしてきたものだ。飛行距離は、往復で45億キロになるという。気の遠くなるような距離だ。因みに太陽からの距離でその凄さを実感してみよう。太陽を出発した「はやぶさ」は、地球は勿論、木星、土星を遥かに通り過ぎ、ほぼ海王星(最小で44.64億キロ、最大で45.449億キロ)にまで到達してしまう事になる。視点を変えて、グッと近場の地球と月との関係で見てみると、地球と月との平均距離が38.44万キロ (理科年表より)であるから、月旅行を凡そ5900回もした勘定になる。5900往復といえば、全くの概算だが、丁度7年間として計算すると、毎日2.3往復し続けなければ達成できないことになる。凄い!
また、飛行時間にしても凄い。ほぼ7年間、約6万1千時間も飛び続けていることになる。こんなに働き続ければ故障もする筈だ。改めて、凄いことを成功させようとしているものだ。岩石試料が上手く採取されていれば、地球を始めとする惑星誕生の謎を解く手がかりが見つかるのではないかと期待されている。日本の威信に懸けても是非成功させてほしいものだ。
いずれにせよ、どちらの予定日も無事成就することを祈ってやまない。
【文責:知取気亭主人】 |