いさぼうネット
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『単なるオタク?それとも研究者』

 

2010年6月16日

先日面白い話に出会った。番組名も出演者の名前も定かでないあやふやな情報で申し訳ないのだが、乗り込んだ車のラジオから、"脳の仕組みからみた男性と女性の違い"に関する耳寄りな情報が流れて来た。どうやら番組も終盤近くに聞き始めたらしく、話の全容は聞き逃したのだが、その内容が至極納得のいく「初耳情報」だったので簡単に紹介したい。記憶として鮮明に残っている男女の違いは、次の二つだ。

  

先ず一つは、記憶力についてだ。「男性に比べ女性は記憶力に長けている」というものだ。例えば、男性が殆ど忘れているような昔の話についても良く覚えていて、「あの時、こんな事を言ったでしょ!」と言われて、「エッ、俺そんな事を言った?」と首を傾げてみせる男性陣が多い、という。確かにそうかもしれない。我が家でも、三人の女性陣に私のあやふやな記憶を突かれ、タジタジとなりながら首を傾げた事もある。こちとらは、いい加減な性格の上に記憶の回路がだいぶ怪しくなってきている事もあり、昔の事を突かれると、正直"ぐうの音"も出ない。困ったものだ。

二つ目は、女性が二つ以上の事を同時にこなすマルチタスクが出来るのに対し、男性はひとつの事にしか集中出来ない、との厳しいご指摘だ。その証拠に、物事に熱中する「オタク」は殆どが男性だ、というのだ。確かにそうかもしれない。テレビ番組の「何でも鑑定団」に登場する玩具や骨董品などのオタクは、圧倒的に男が多い。都合の良い言い方をすれば、「子どものように純粋で一途である」となる。しかし、オタクがその道を極めれば、それはもう単なる「オタク」に留まらず、最早「立派な研究者」と言っても良いのかもしれない。

実は、これからが本題なのだが、この日本に、その「オタク」、いや「オタク」の更に上を行く「立派な研究者」、或いは「仰天オタク」とでも呼んで差し上げたいような猛者がいるのだ。また、究めた道が凄い。

  

5月24日の朝日新聞朝刊の「ひと」欄に、ある猛者が紹介されていた。読んだ方もいると思うが、奇想天外な御仁だ。今も極め続けている行動が行動だけに、堂々と新聞紙上でこの言葉が使われたのは、多分初めての事だと思われる。「オタク」と呼ぶには失礼になるほどの信念を持ち、それを貫いている話は誠に天晴れだ。しかもその突拍子も無い行動は、自然と顔の筋肉をほぐしてくれる。

突拍子も無い行動とは、「野グソ」――連呼するには少々憚られるので、以下、少し上品に「雉撃ち(きじうち)」と表記する――だ。昭和40年代前半までの田舎では、その痕跡にちょくちょくお目に掛かる事が出来た、あまり美しくない日本の原風景の一つだ。野山での作業では、今のように仮設トイレなどなかった時代であるから、必然的に手っ取り早く「雉撃ち」と相成るわけで、足下から漂う独特な臭いで痕跡を踏んだ事に気が付き、最悪な気分になった経験をお持ちの方も結構おられるのではないだろうか。ご多分に漏れず、私も加害者、被害者どちらの経験もある。

その「雉撃ち」を実践して36年というのが、新聞に登場した御仁だ。仮にAさんとしておこう。Aさんがエライのは、自分たちが排泄したものを処理する施設なのに近くに建設されるのは反対だ、という"し尿処理施設建設反対運動"を展開する住民のエゴに疑問を持ち、「自ら排泄したものは自らの手で自然に帰すべきだ」との信念で、それを長年にわたり実践している事だ。やっている事は奇異でも、確固たる考え方があって実践しているのだ。しかも、野外で毎日用を足す連続記録は、今月で10年になるというから驚く。"雨の日"も"嵐の日"もである。恐れ入谷の鬼子母神だ。

今でもトイレ施設のないところでキャンプをしたときなど、我々もAさんと同じように自然の中でしゃがむ事になるのだが、キャンパーとしては、穴を掘って埋めてくる事を最低限のエチケットとして守らなければいけない。同じようにAさんも、「穴を掘って埋め戻す」、「葉っぱで拭く」、「街に出るときは排泄のタイミングをずらす」、「同じ場所では1年以上しない」などのルールを決めているのだという。その上、土に還る時間も追跡調査しているというから立派だ。もうオタクの域は越えている。立派な研究者だ。しかも、それに相応しく、「糞土師(ふんどし)」を名乗っているというから愉快だ。

  

「雉撃ち」は、周りを草や低木で囲まれている状況で実践する事が多い為、開放感に浸るのは勿論、自然の懐に抱かれるような感覚さえ持つ事もある。だからこそであるが、時には自然の過酷さも味わう事になる。野山での仕事が多かった30、40年前には、私も自然の過酷さを何度か味わった事がある。蚊や虻の容赦ない攻撃に、ジッと耐えた事も一度や二度ではない。目の前を這って行く蛇にギョッとした事もあった。そして、何と言っても悲劇だったのは、オロロ――刺されると痛い小型の虻――に"大事な先っぽ"を突然刺された事だ。見る見る赤く腫れていくのだがどうしようもできない。今となっては笑い話だが、本当にオロロする状況だった。

Aさんの事を新聞で読み、そんな昔の事を思い出した。Aさんには足元にも及ばない私の数少ない経験からしても、自然の中に溶け込もうとすればするほど過酷な試練に遭遇する事は結構多い。それを乗り越え長年に亘り実践しているのだから、Aさんは凄い。流石、「糞土師(ふんどし)」を名乗るだけの事はある。私などオタクにさえ成れそうもない。尤も、成るつもりもないのだが……。  

【文責:知取気亭主人】

 

お口直しにナデシコの花をどうぞ

 

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.