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知取気亭主人の四方山話
 

『お帰り、行ってらっしゃい!』

 

2010年6月23日

待ち焦がれていた「はやぶさ」が、無事帰ってきた。打ち上げ当初の計画より約3年遅れての帰還だが、6月13日の火曜日、予定通りの時間と予定通りの場所に、"我々の夢"を一杯詰め込んだカプセルを無事着陸させることが出来た。その後のX線調査で砂や岩屑が採取されている可能性は低くなったが、それで「はやぶさ」の偉業が色あせるものではない。それどころか、「はやぶさ」自身のタフさと、このプロジェクトに関わった全ての技術者の不屈の闘志は、国民栄誉賞ものだ。実に7年にも及ぶ大宇宙旅行を成功させたのだから。

「お帰り、はやぶさ!」。 

  

「はやぶさ」が打ち上げられたのは、今から7年前の2003年5月9日のことだ。全くの偶然だが、この四方山話を始めたのも同じ年で、第1話は打ち上げから1ヶ月ほど経った6月13日、奇しくも「はやぶさ」帰還と同じ日である。当然の事ながら、四方山話も今年の6月13日をもって丸7年が経過したことになる。そんなこともあって、何やら他人事とは思えず、打ち上げ後の旅路をずっと注目していた。勿論、ネットで配信される「はやぶさ」関連のニュースは見逃さないようにしていたし、この四方山話の題材としても何度か登場してもらった。だから、無事の帰還は我が事のように嬉しい。

しかし、本当に長い旅路だった。打ち上げから2年半後の2005年11月にジャガイモ型小粒惑星「イトカワ」への着陸は成功したものの、数々のトラブルに見舞われ、時には「地球への帰還は難しい」との情報も流れてきたが、満身創痍になりながらも無事帰って来た。幾多の困難を乗り越え帰還が叶ったのも、技術陣のミッション達成への熱い思いと、決して諦めない執念と努力、そして高度で確かな技術力が有ればこそだ。

最先端技術の粋を集めたプロジェクトなのに「無事の帰還を祈って神頼みまでした」とのニュースに接すると、その困難さが分かろうというものだ。何はともあれ、下を向きがちな最近の日本に、久々に明るいニュースをもたらしてくれた。そして、多くの国民に感動と勇気を与えてくれた。これを契機に、再び「科学立国日本」への熱く大きな胎動が沸き起こってくれることを願っている。

そういった意味では、「月以外の天体に着陸し、史上初めて帰還した宇宙機」と「世界で最も長い年月となる2,592日の航海から帰還した宇宙機」――これまでの記録はアメリカの彗星探査機「スターダスト」の2,534日――の二つの記録をギネスブックに申請した、というのは晴れがましい事だ。子供たちが「日本の科学技術は凄いんだ!」と誇りを持ち、科学離れに歯止めが掛かる切っ掛けになってくれることを切に願っている。

切っ掛けと言えば、「はやぶさ」の帰還と入れ替わるように宇宙に向けて地球を飛び立った新たなプロジェクトにも期待している。

  

5月21日、金星探査機「あかつき」が、種子島宇宙センターから打ち上げられた。そして、「あかつき」と共に打ち上げられたのが、4つの小型副衛星と巨大な帆に太陽光を受けて進む宇宙ヨット「イカロス」だ。中でも、初めて聞く「宇宙ヨット」に注目している。正式には、小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS(イカロス)」、と言うらしい(JAXA:宇宙航空研究開発機構)。アイデアとしては昔からあったようだが、航行に成功した例はまだないという。つまり、世界初の宇宙ヨットなのだ。最初の関門は一辺約14mの巨大な帆を広げることであったが、これも無事クリヤーし、自ら放出した分離カメラにより展開された様子が撮影され、JAXAで公開されている。

「イカロス」は、帆に十分の太陽光を受けることが出来れば、僅かな光粒子の圧力で宇宙空間を進むことができるのだという。受けるのは1円玉の5分の1程度のごく僅かな圧力だが半年で秒速約100m(時速360q)まで加速できる、というから驚きだ。また、帆に通電すると光を透過して圧力を受けなくなり、その仕組みで進行方向を変えることも可能だという。何やら小説の世界のようだが、天晴れ、日本の技術がそれを実現させたのだ。今回の「イカロス」には、その実証実験という大事なミッションがある。それにしても、燃料を消費しないで飛行できるということは、凄いことだ。将来実現される宇宙旅行にはどうしても必要な基礎技術の一つだろう。

そして「イカロス」には、もう一つの重要な実証実験が行われることになっている。帆の一部に「薄膜太陽電池」が貼り付けられていて、この太陽電池から――「はやぶさ」ですっかり有名になった――イオンエンジンを駆動するだけの大電力が得られるのか、実験を行うのだという。つまり、「イカロス」は今流行のハイブリッド仕様になっているのだ。車のハイブリッド技術は日本が先鞭をつけたが、これで宇宙でのハイブリッド技術の確立もどうやら日本が世界をリードしそうだ。実に喜ばしいことだ。

  

どちらの実証実験も、将来の宇宙大航海時代を見据えての事だ。宇宙ステーションが各国の協力により日常的に運用されるようになり、私が子供の頃には夢だった宇宙旅行がグンと現実味を帯びてきたが、その最先端技術の一翼を日本が担っている、と考えるのは大変愉快なことだ。そして、失いかけた自信を取り戻せそうな気になってくる。「はやぶさ」の偉業に続き、是非この実証実験も成功させて、自信を完全に取り戻したいものだ。

それでは、航海の無事と成功を祈って、「行ってらっしゃいイカロス!」  

【文責:知取気亭主人】

 

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