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2010年8月18日
お盆の帰省ラッシュに合わせたわけではないだろうが、民族大移動のこの慌しい時期に、忘れかけていた厄介者の台風が日本列島を舐めるように縦断し、暴れていった。昨年は確か一度もなかったから、久し振りの台風上陸だ。
8月8日に宮古島の南海上で発生した小型の台風4号は、東シナ海を北上して朝鮮半島の南端に達した後進路を東に変え、朝鮮半島をかすめながら西日本の海岸線を沿うように日本海を進み、秋田県に上陸し三陸沖に抜けた。発生してから上陸するまでの間、中心気圧は990ヘクトパスカル前後と比較的高く、また暴風域もない――ただし強風域はあった――、勢力としては弱い台風であったが、各地で大雨を降らして行った。そして、その大雨と強い風の影響で、飛行機の欠航や列車ダイヤの乱れが相次ぎ、帰省客の足も大いに乱してくれた。また、直接この台風の影響を受けたわけではないのだが、梅雨が無くこの時期雨が少ないはずの北海道でも時ならぬ大雨により道路冠水などの被害が出て、梅雨明け以来続いていた全国的な炎天日が一転して豪雨に襲われることとなった。
初盆で家内の実家に移動した12日の昼過ぎ、私も静岡県の掛川市で猛烈な雨に遭遇した。翌日お参りに来てくれた親戚の人の話では、あの激しい雨で床下浸水したという。激しく降ったのは2時間ほどだから、時間にすればそう長くないのだが、兎に角降り方は尋常ではなかった。
しかし、暑さにしても降雨にしても、この激しさはどうだ。子供の頃、夏休みの自由研究で調べた気温では、30度を越す日は今ほど多くなかったと記憶している。ところが、今年は30度を越す真夏日は毎日のことで、35度以上の猛暑日すら珍しくなくなってしまった感がある。時間雨量などの降雨強度も各地で記録が塗りかえられ、テレビや新聞では「観測を始めて以来の猛烈な雨を記録した」と度々報道されている。これまで数十年間の気候が比較的穏やかだったこともあるのだろうが、最近のこの激しい気象は、「異常気象」と認識すべき事態と考えていいだろう。そしてこの異常気象は、日本ばかりでなく世界の各地に深刻な被害をもたらし、地球規模の問題となり始めている。
日本のテレビニュースでも取り上げられている様に、「ロシアの酷暑と自然火災」、「中国における大雨による大規模な土石流災害や洪水の被害」、さらには「南半球の南米各地を襲う寒波」など、世界各地で異常気象による被害が報告されている。特に、寒いイメージのあるロシアの首都モスクワで、連日30度を越す気温が記録されている上に、猛暑と乾燥で周辺の森林が自然火災を起こし、その火災に因るスモッグが市内を覆い脱出する市民も出ている、とのニュースには驚かされる。そして何と、7月29日には観測史上最高の38.2度を記録したというから凄い(8月10日、朝日新聞朝刊)。北緯56度付近(日本の最北端、宗谷岬で凡そ45度30分)の亜寒帯に位置するモスクワが、猛暑日を記録したのだ。「短い夏の太陽と酷寒のモスクワ」というイメージは、これからはもう当てはまらないのかもしれない。
一方、ロシアは旱魃の被害も深刻らしく、「ロシア政府は年内の穀物輸出禁止を決めた」と報じられており、これにより小麦の国際価格高騰が危惧されている。また7月25日の朝日新聞朝刊に依れば、モスクワよりも更に北に広がるシベリアも猛暑に襲われているという。ツンドラ地帯に広がる永久凍土の融解は地球にどんな深刻な影響を及ぼすことになるのだろう。二酸化炭素よりも地球温暖化の効果が高いと言われているメタンガスの放出は……。
しかし、何が原因でこのような異常気象は起こるのだろう。「今起こっている異常気象の原因の一つは偏西風の蛇行だ」というのだが、ではその"蛇行"を発生させた原因は何だろう。地球の自転がグラついている訳でもなさそうだし、風神様が悪戯をしている様子も無い。この程度の偏西風の蛇行は地球の長い歴史の中ではよくある事だ、という意見も聞く。果たして、そう楽観していて良いのだろうか。
偏西風の蛇行に「海水温の上昇」、あるいは「地球温暖化」は関与していないのだろうか。海水温の上昇は上昇気流を活発化させ、台風やハリケーンの大型化は勿論、思わぬ所での大雨や洪水をもたらす危険性を高めることになる。そして、その海水温の上昇は地球温暖化がもたらしていることは、ほぼ間違いのないところだ。
仮に、偏西風の蛇行に地球温暖化が関与していないとすれば、「異常気象への偏西風の蛇行による影響」は極めて限定的だと言えないだろうか。それだけ、異常気象の根本的原因は地球温暖化だ、と私は考えている。そして、賛否両論はあるが、地球温暖化は人間の営みが人工的に作り出してきたものだと言われている。つまり、今起こっている異常気象は、これまで欲望に任せて好き放題をしてきた人間の営みの付けだ、とも言えるのだ。
8月16日のニュースで、秋刀魚の不漁が伝えられていた。海水温の上昇やそれに伴う海流の変化など、魚たちにとって大きな、そして厳しい環境変化が海の中で起こっているのだろう。このままいけば、50年後には落語の「目黒の秋刀魚」を理解できる日本人は居なくなっている可能性も出てきた。そうならないためにも、人間勝手なエゴな生活は止め、エコな生活を送る工夫をしていく必要がある。そういう意味でも、秋刀魚は炭火で焼くのに限る。
【文責:知取気亭主人】 |