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2010年9月15日
かの心理学者フロイトは、「夢は"抑圧された願望(無意識的願望)"の代用品で、夢を見ることによりそれら願望の充足がみられている」と説いた。つまり、夢は深層の意識として持っている願望をある程度満足させるための手段である、というのだ。果たしてそうなのだろうか。仮にそれが正しいとして、我が家族が見たユニークな夢から判断すると、それぞれどんな願望を持っているのだろうか。これまで見た愉快な夢を材料に、どんな抑圧された願望があるのか遊んでみたい。
まず手始めとして、私の夢を俎に載せよう。私が見た夢の中で最もユニークなのは、なんと言っても次の二つだ。以前この四方山話でも紹介したことがある(2005年10月26日の第122話「奇妙な夢」)、「皇室の結婚式に招待され、恐れ多くも祝辞を述べた夢」と「男なのに妊娠・出産をしてしまった夢」だ。
結婚式の夢を見た人は結構いるだろう。私が見た夢も確かに結婚式には違いないのだが、ところがどっこいそんじょそこらにある結婚式ではないのだ。披露宴の会場がなんと"皇居"だ。そう、あろうことか皇室の結婚式に招待されたのだ。夢から覚めた本人は勿論、聞いた家族もびっくりの夢であった。しかも、恐れ多くも祝辞を述べている。私の体には皇室の血が流れているのではないか、と錯覚してしまうほど現実にはあり得ない夢であった。ひょっとすると遠い祖先は"やむごとなき家柄"だったりして…。すると、フロイト張りに判断すると、今の"平民"の生活が抑圧されたものであって、いつかは"やむごとなき家柄"に戻りたい、という願望が…。有り得ない!
「男なのに妊娠・出産をしてしまった夢」も奇妙きてれつだった。2001年の春に見た夢だ。私はタケノコ料理が大好きで、その日も腹一杯食べてしまい、寝床に入る頃になると腹が張ってゴロゴロと鳴ってきた。そんな状況で眠りに就き、気が付くと、不思議なことに男の私が今にも生まれそうなお腹をして産婦人科の病室にいる。陣痛らしきものが始まり、分娩台に乗せられたのだが、そこから何故か隣の分娩室が見える。しかも、隣はなんと皇太子妃の雅子さんだ。そして、『おめでとうございます。女の赤ちゃんです』と言う声が聞こえる。『そうか、女の子だったんだ』と思ったとたんに、私も急激な陣痛に襲われた。『いきんで!』と言う声が聞こえ、言われるとおりに思い切り"いきんだ"。"いきんだ"途端に生まれた。イヤ、排便した。そこでハッとして眼が覚めた。急いでお尻に手をやった。濡れていないことを確認して安心したと同時に、急に便意をもよおしてきた。と、こんな夢だ。
「雅子様御懐妊」の発表を聞いた直後に見た夢だ。朝、早速家族に夢のことを話し大笑いした後、全員に「雅子さんの赤ちゃんは女の子だ」と予言したのだが、この夢から判断するとどんな抑圧された願望があったのだろうか。「排便したい」という願望があったことは容易に想像つくのだが、懐妊とはあまりに突拍子もない。妊娠したい……。まさか、想像もしたくない!
次に、長男の夢を俎上に載せよう。長男は昨年の11月、耳の手術で3週間入院したのだが、手術中に排尿用バルーンカテーテルをセットされた。管が差し込まれ、寝たままでも排尿できるやつだ。このときの感触――残尿感があるなど――が余程悪かったのか、退院後暫く経ってからもカテーテルの夢を見たという。この夢は嫁から聞いたので、その話から始めよう。
朝、長男を起こしに行くと、「まだオシッコが出きってないから起きられない」と寝言で答えたという。「エッ、まさか?」と、嫁は急いで布団を捲り失敗していないか確認をした、というのだ。失敗は取り越し苦労だったようだが、その後そのときのことを本人に話すと、「ダラダラと流れ出る感触と残尿感が嫌でそんな夢を見たのだろう。別にオシッコがしたかったわけではない」と言う。本人の意志で排尿できなかった、という抑圧されたものがハッキリ出ている。こういった夢は分かりやすい。その後も同様な夢を見ている、とは聞いていないのでその後の排尿生活には満足しているのだろう。排尿力がやや弱って来た我が身としては、チョッピリ羨ましくもあるのだが…。
さて、次は次女だ。次女は良く変わった夢を見るらしい。中でも取って置きのものを紹介しよう。金沢から静岡の田舎へ里帰りする夢だという。それも豪勢に自家用ジェットで。機長は私だ。快適に飛行中、日本アルプスの辺りで突然長男が、「ジャ、俺行ってくるわ」と言ってコックピットから後方に歩き始めたという。私は「おう!」と答え、妻は「気をつけてね」と声を掛けたという。ところが次女は、飛行機の中で何のことを言っているのか分からず、後方に歩いていく長男の方を見た。そして思わず息を飲んだ。驚いたことに機体の後ろ半分が無いのだという。飛び去る後方の景色が丸見えだったという。そりゃそうだろう、後ろ半分がないんだから。
さらに驚いたことに、長男がパラシュートも付けずに外に飛び出した。ビックリして私たち夫婦に「○○ちゃん、大丈夫?」と聞くと、操縦しながら「大丈夫じゃない?」と平然と答えていたという。奇想天外な夢だ。
こんなユニークな夢として現れた願望とは何だろう。どんな状況になっても生き抜く逞しさを求めているのだろうか。それとも少々壊れても動く機械がほしい、ということなのだろうか。何れにしてもユニークすぎて素人には判断不能だ。
次の夢は、取り様によっては続きのある夢、しかも異なる三人があたかも同じ夢の続きを見た、という珍しい話だ。まず、第一部を見たのは長女だ。昨年の11月、まだ嫁の妊娠が明らかになっていない早い時期に、長男夫婦に女の子がいる夢を見たというのだ。子供好きの長女らしい、可愛らしい「予知夢」なのかもしれない。
第二部は嫁だ。出産予定日(9月12日)の3週間ほど前に、可愛らしい赤ちゃんを産んだ夢を見たという。ところが、予定日より前だったこともあって、「もう少しお腹に入っていたら?」と言うと、喋られないはずの赤ちゃんが「そっか、じゃあ戻るね」と答えてお腹に戻っていったというのだ。しかも、"臍の緒"を付けたまま。ドジョウすくいを踊る嫁らしくほのぼのとした奇妙な夢なのだが、その夢の話を聞いた妻が、つい先日、「その続きらしき夢を見たよ!」と嬉しそうに報告してくれた。
"嫁の話を聞いていたから見た夢"であることは間違いなさそうだ。赤ちゃんが出たそうにしているので、「もうそろそろ良いよ」と言うと「ニコッと微笑んだ」というのだ。まさに嫁の続き、第三部の夢だ。こんな楽しい夢を見るのも妻らしい。
さて、この三人の抑圧された願望とは何だろうか。夢の内容と現実の状況から判断して、夢を見た原動力は、どう考えても「早く赤ちゃんと会いたい」という家族の願望としか思えない。フロイトの言う「抑圧された願望」なんてことは全くない。抑圧どころか、他の家族もそうだが、三人とも楽しみで仕方がないのだ。どうやら、楽しみにしていることも夢に見るらしい。
こうしてみると、フロイト先生のご高説が全ての夢にあってはまる、というわけにはいかないようだ。特にユニークな夢には、判断もユニークなものが必要なのだろう。今回登場しなかった次男の夢も入れて、「我が家の夢物語」を作ってみるのも一興かもしれない。フロイトに勝る夢判断を見つけられるかも…。
【文責:知取気亭主人】 |