いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『何か変だよ?』

 

2010年10月6日

昔から、"夏の暑さ"や"冬の寒さ"が続く目安として、「暑さ寒さも彼岸まで」と言われて来た。夏の暑さはいくら暑くても秋の彼岸(秋分を中日として前後各3日を合せた7日間)位まで、そして冬の寒さはどんなに寒くても春の彼岸(春分を中日として前後各3日を合せた7日間)までで、それ以降は徐々に次の季節に移り変わっていく、というものだ。ここ金沢でも、秋の彼岸(9月20日~26日)を迎えた辺りから、あの夏の猛暑がまるで嘘だったように過ごしやすくなってきた。気温そのものは例年を超える日もたまにはあるのだが、吹く風は肌に心地良く、30度超えが当たり前だったつい先日までの猛暑に比べれば天国だ。それにしても、この"手の平を返したような急激な変化"はどうだ。余りにも急激すぎる。何か変だ。お陰で、体の調節機能が付いていけず、私の周りには体調を崩す人が急に増えてきた。私も何となく日曜日辺りから体調がスッキリしない。別に熱もないのだが、体が重い。何か変だ。単純に、体重が増えているせいなのかもしれないのだが……。

「何か変だ」と言えば、人間ばかりでなく動物も、「何か変だな」と思っているのではなかろうか。そんな風に思える出来事を、今年は良く耳にする。

  

秋の便りが聞こえ始めると、全国的に熊がニュースに登場するようになってくる。北陸でも、ツキノワグマに遭遇した話題が、俄然紙面を賑わすようになる。金沢もご多分に漏れず、である。冬眠に向けての腹ごしらえに人里近くまで下りてきて、人間との遭遇にお互いビックリ仰天することになるのだが、金沢での出没地点は年々中心市街地に近づいていて、今年は遂に山里を通り越し住宅街まで行動範囲を広げてきた。閑静な住宅街に位置している仲間のIさんの家の近くにも出没した、というから山裾に位置する我が家も人事ではない。市内の公園で熊に襲われ怪我をした人もいる。

山村で柿など果樹の放棄が増えてきたのが人里まで下りてくる一因だ、と言われているが、仲間の熊よりも人や車が多い住宅街にお出ましするとは、好奇心旺盛な熊だ。今年の山は餌不足なのだろうか。それとも競争相手が多すぎて、安全な山ではあぶれてしまったのだろうか。どちらにせよ、これ以上人と熊とのニアミスは避けたいものだ。熊もそう思っているに違いない。「何か変だ。怖ろしい人間どもが沢山いるこんな所に来るはずではなかったのに」と。

  

イノシシの話題を北陸で聞く様になってきたのも耳新しい。冬眠しないイノシシは、その足の短さ故に、「雪の降る北陸では腹が雪につかえて歩くことが出来ない」と嘘のような話を聞いたことがあったが、温暖化のせいか、雪の多い北陸にも勢力を広げ始めているのではないかと推測している。北陸でニュースソースになることなど20年程前には殆どなかったと記憶しているが、食害を中心にちょくちょくニュースに載るようになってきた。

熊よりもイノシシが天下を取っている静岡では、彼らによる食害は凄まじいらしい。山村で農業を営んでいる従兄弟によれば、最近では図々しくも家の周りの畑にまで頻繁に出没するようになり、丁度収穫期を迎えた農作物をごっそり食べられてしまう被害に遭い、地団駄を踏んで悔しがることも度々だという。今や、イノシシとの知恵比べの様相だという。

人間が地団駄踏む分、きっとイノシシは"笑いが止まらない"とみた。山の中で苦労して食料を見つけるよりは、食料が植え付けられている畑は楽でしょうがないだろう。品質は揃っているし、食べ頃まで育ててくれるし、栄養豊富だしで、別天地に違いない。山の畑は、彼らの楽園になり始めているのかもしれない。しかし、彼らも思っているかもしれない。「何か変だな。こんなに楽して食事が出来るなんて。でもラッキー」と。しかも、家の庭にまで出没するとは、最早人間を怖がっていないのかも知れない。人間の方は、彼らの猪突猛進を恐れているのにである。

  

静岡といえば、イノシシ以外にも厄介な動物が全国的に話題になっている。富士宮市や三島市など静岡県東部で"かみつきサル"が出没し、先月末で被害に遭った人は100人を超えたという。なかなか捕獲できないため、とうとう捕獲に懸賞金を出す自治体も現れた。三島市では、家などにサルを閉じこめた市民に20万円の懸賞金を出すことに決めた。

そういえば、2年ほど前だったか都心の渋谷を逃げ回った日本サルが話題になったが、サルも徐々に人間域に勢力を拡大しているのかも知れない。熊やイノシシと違い、サルは愛嬌がある顔付きをしていることもあって、人間とはかなり親しい間柄だと思っていた。しかし、サルの方はそうは思っていないらしい。人間の優しさに図に乗ったのか、それとも人の虐めに堪忍袋の緒が切れたのか、どちらにせよ"かみつきサル"は怒っている。あるいは、住み慣れた山に帰れないで焦っているのかもしれない。もっと言えば、「変だな、餌だと思ったのに食べられやしない」と、餌だと思って手当たり次第にかみついているのかもしれない。

  

しかし、熊にせよ、イノシシにせよ、サルにせよ、ましてや人間にせよ、お互いに被害者意識を持っていてはつまらない。格好良く言えば、「何か変だな?」と思わずに共存できる時代を創り上げる知恵と努力が、今求められている。

【文責:知取気亭主人】



蕎麦の花

 
 

Copyright(C) 2002-2025 ISABOU.NET All rights reserved.