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知取気亭主人の四方山話
 

『復活』

 

2010年11月17日

日本で開かれていたバレーボール女子世界選手権で、日本チームが「銅メダル獲得」という快挙をやってのけた。同大会でのメダル獲得は、実に32年振りだという。随分長いことメダルから遠ざかっていたものだと、メダル獲得の瞬間に沸き上がった大歓声を聞いていて改めて実感させられた。

昔は、オリンピックの中でも良い成績を取ることが出来た数少ない女子競技の一つで、アニメにも登場するくらい人気もあったのだが、ここ暫くは大型選手を擁する外国チームに押され、成績も人気も余りパッとしなかった。しかし、今回活躍した代表選手が産まれる遙か前には、日本が世界のバレー界を牽引していた一時代があったのだ。中でも、鮮明に記憶があるのは、1964年に開催された東京オリンピックで当時のソ連を破り見事金メダルを獲得し、日本中が歓喜に沸いた試合だ。「東洋の魔女」と呼ばれるほどの強さだった。ただ、30年もメダルから遠ざかっていれば、日本にそんな黄金時代があったことを知らない人が増えても致し方ないことだ。そして悪いことに、目立った成績を残さなければ、人気は低迷し優秀な選手が集まらなくなり成績も低迷したままになる、そんな悪循環に陥ってしまうのだ。ここ暫くは、そんな低迷時代が続いていた。

ところが、どうだ。そんな昔の黄金時代が再び蘇ってくるのではないか、と思わせるような今回の活躍だ。銅メダルを賭けたアメリカとの3位決定戦――全セットを見たわけではないが――を見ていると、回転レシーブを使って拾い捲っていた東洋の魔女達を髣髴させるような見事な戦いぶりだ。アメリカも負けず劣らずで、ラリーの応酬には敵味方関係なく感動してしまった。その上、その見事な戦いを日本が制してくれたのだから、もう言うことはない。「東洋の魔女」の生みの親で「鬼の大松」と恐れられた、当時の日本代表チーム監督の大松博文氏が生きていたら、さぞ喜んだに違いない。尤も、「何をもたもたしていたんだ」との厳しい言葉が聞こえそうな気もするのだが……。

  

ところで、「東洋の魔女」にしても「鬼の大松」にしても、実に端的に言い表していて、その言葉を聞いただけで活躍していた当時の様子が思い起こされる。昔は、我らのヒーロー、ヒロインにそんな端的な表現を充て、短い言葉ながらも最大限の賞賛をしていたのだ。

例えば、有名なところでは、1932年の第10回ロスアンゼルスオリンピックで、東洋人初の100m6位入賞を果たした吉岡隆徳は「暁の超特急」と呼ばれていた。オリンピックに限れば、吉岡から60年後の1992年、バルセロナオリンピックの400m走で決勝進出を果たした高野進を含めて、先の北京オリンピックの400mリレーで銅メダルを獲得するまで、この二人以外に男子短距離走競技――女子では依田育子が80mハードルで入賞している――での決勝進出者がいないことから、いかに吉岡が速かったかが分かる。また、その走る様を列車に例えたところが、いかにも素晴らしい。当時走っていた蒸気機関車の車輪の動きを、腕の振りと足の動きに見立てたのだろう。超特急と聞くだけで、速さと共に力強さも伝わってくる。そういう意味では、「暁の超特急」とは正に言い得て妙だ。

また、昨年亡くなった水泳の古橋広之進は、「フジヤマのトビウオ」と呼ばれ、日本水泳界の英雄だった。「暁の超特急」同様、この言い方で呼ばれていた選手時代の古橋選手を知っているわけではないが、昭和30年代には事有る毎に古橋選手にまつわる話がラジオから流れてきた。また、彼が我々と同じ静岡県出身だけあって、身近なところでは母からも良く話を聞いた。荒廃し自信を無くしていた戦後の日本人に、勇気と希望を与えてくれたヒーローとして、良く話題にも上った。「フジヤマのトビウオ」とは、全米選手権に参加した彼の活躍を見たアメリカのメディアがそう呼んだと聞くが、これまた言い得て妙だ。古橋広之進の名前を知らない今の若者が聞いても、「水泳選手の名前だ」と教えれば、トビウオのように水面を切って泳ぐ姿を想像できる、素晴らしいネーミングだ。

  

このように、昭和の中頃までは、世界で活躍したアスリートには世界でも通用するキャッチコピーが付けられ、それを聞けば誰の事だか直ぐに判るほどだった。では、今の時代はどうだろうか。世界のスポーツ事情に疎いこともあるのかもしれないが、日本人選手でそんな愛称を付けられた人は、少し前に「アジアの鉄人」と呼ばれたハンマー投げの室伏重信氏ぐらいしか思い出せない。息子の室伏広治選手に関しては、アテネオリンピックで金メダルを獲得したにも拘らず、記憶に残るキャッチコピーは聞いた覚えがない。映像付きの情報が瞬時に世界を駆け巡る今の時代には、殊更大仰な古めかしい呼び名など流行らないのかもしれない。また、突出した力で長期間に渡り頂点を極めていること自体、スポーツ人口が急激に増えてきた現代においては極めて難しいことでもある。

そう考えると、尚更「東洋の魔女」の復活を大いに期待したい。東京オリンピックでアメリカのテレビが「オリエンタル・ウィッチ(東洋の魔女)」とコメントしたことが「東洋の魔女」の由来になったといわれているらしいが、再びそうコメントしてもらえるような強い日本の復活を望んでやまない。ガンバレ日本!

【文責:知取気亭主人】

ハゼノキ

 
 

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