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知取気亭主人の四方山話
 

『自然の猛威』

 

2010年12月8日

「ナラ枯れ」、こんな言葉を聞いたことがあるだろうか。「平城遷都1300年で賑わう"奈良"が人口流出によりかつての賑わいを失い枯れた様になる」などという、取って付けたような意味ではない。"ナラ"はブナ科の樹木の事で、クマの好物として話題に上ることの多いあのドングリが生る木、と言えば分かり易いだろう。かつては燃料の薪として利用されたり、木炭に加工されたりすることも多い、里山では馴染みの木で、甘党には欠かせない材料となるクリの木もナラの一種だ。そのナラの木が立ち枯れする事を「ナラ枯れ」と呼んでいる。11月24日の朝日新聞朝刊によれば、その被害が最近増えているのだという。

確かに、北陸自動車道を走っていると、まだ夏真っ盛りなのに紅葉が既に始まっているのではないか、と思えるほど赤茶けた葉っぱの木々を見ることが増えてきていた。周り中美しい緑の葉が生い茂っているのにそこだけが赤茶けているため、運転しながら山を見ていても良く目立つ。しかも見るからに大きな木が多く、随分前から話題になっていた「松枯れ病」の松とは樹形が明らかに異なっているため、「何の木が枯れているのだろう」と不思議に思っていたのだ。金沢から米原にかけての北陸自動車道は山間部が多く、そんな立ち枯れの光景をよく目にするようになってきた。しかも、気のせいか今年になり特に増えてきたように感じていた。見様によっては、「松枯れ」よりも多いのではないか、とさえ思う。

  

ナラ枯れを起こすのは、体長4〜5oほどの小さな虫、「カシノナガキクイムシ」が運ぶ病原菌によるらしいのだが、山の管理に人の手が入らなくなったのも大きな要因の一つだという。独立行政法人 森林総合研究所 関西支所発行の「ナラ枯れの被害をどう減らすか ――里山林を守るために――」(インターネットでダウロードが可能)によれば、"放置された里山林"や"高齢のナラ類を残して林内植生を刈り払うやり方の公園"は、――人間ではないからこう呼ぶことにする――"犯虫"の繁殖に格好の場所になるのだという。ところが、ある程度成長すると薪や炭の原料として伐採し、常に若齢林に戻し低林管理を行っている林は、"犯虫"の繁殖には適していないのだという。つまり、人の手が入り伐採・管理され、しかも若返らせている林では「ナラ枯れ」は発生しにくい、と言う事らしい。それは、"犯虫"である「カシノナガキクイムシ」が、高齢の大径木を好んで繁殖する事が関係しているだという。

常識的に考えれば、若い木のほうが柔らかく被害に遭い易いように思うのだが、かの"犯虫"はとうが立った高齢の木を好むのだという。どうしてなのだろう。若い木は、虫が好まない薬効成分でも滲出させているのだろうか。それとも、ある樹齢を超えると"犯虫"が好むフェロモンでも出すのだろうか。そう考えると、高齢木に成る程衰える「成長の勢い」が、絡んでいるように思えなくもない。

それはともかくとして、「高齢の…」などと聞くと、高齢者を手玉に取る振り込め詐欺を思い出してしまって、余り良い気分がしない。「弱い者いじめをするな」と叫びたい気分だが、ひょっとして、木も人間と同じように、年輪を重ねる毎に弱点が増えてしまうのかもしれない。勢いもなくなるし……。

  

それにしても、体長1センチにも満たない小さな虫が、「間接的に」ではあるが、大木を枯らしてしまうのだから凄い。正に、ナラに襲いくる「自然の猛威」と言っていい。一時猛威を振るった「松枯れ」もそうだ。しかし、自然の猛威に晒されているのは、勿論日本ばかりではない。どこの国・地域でも起こりうることだ。今は、遠く離れた南半球のオーストラリアでも自然の猛威に晒されているらしい。

  

12月6日(月曜日)の朝、「オーストラリアでイナゴが大発生し、ちょうど収穫時期を迎えた小麦や大麦が大きな被害を受けている」とのNHKラジオニュースを聞いた。75年ぶりの大発生で、深刻な被害を出しているのだという。正に、パール・S・バックの小説、「大地」そのものだ。気象と同じように、こういった生物による自然の猛威は、「人間の手ではおいそれとコントロールできるものではない」と思っている。「コントロールできた」と思っても、必ずどこかで誰かが、その妄想を打ち砕いてくれる。それほど、地球の自然というのは、極めて微妙なバランスの上に成り立っているのだ。間違っても、「コントロールできる」などと不遜な考えは持たない方が良い。

そういう意味では、これだけ科学技術が発達した現代でも、自然に対してもっと謙虚にあるべきだ。そして、そっと手を添えるように関わっていくことが、人里近くの自然から求められているのだ。そうすることによって、自然の活動は穏やかになり、猛威を多少なりとも和らげることが出来るようになるのではないだろうか。だって、我々にはまだ知らないことが一杯あるのだ。  

【文責:知取気亭主人】

ドングリ

 
 

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