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知取気亭主人の四方山話
 

『捨てたもんじゃない』

 

2011年1月19日

正月気分も未だ抜けきらない先週の土曜日(15日)、今の季節を一層寒々と感じさせる、嫌なニュースがまたもメディアを賑わした。46歳にもなる男性会社員が、凡そ2年も前に母親が死亡していたにも拘らず、死亡届も、勿論葬儀も出さず遺体をそのまま放置していたとして逮捕された。インターネットの記事には「葬儀を出す金が無かった」と書かれていたが、亡くなった母親の年金を引き出しているのが確認されているところをみると、「金が無かったから放置していた」のではなく、「金がほしかったから生きていることにしておきたかった」というのが本音だろう。母親の遺体は布団の中で一部白骨化して見つかった、というから哀れだ。実の息子がいたにも拘らず……。

以前の四方山話でも愚痴ったが、いつの頃からだろうか、寂しいことにこういった殺伐としたニュースをチョクチョク耳にするようになってきた。似たような話は昔からあったとはいえ、これ程頻繁ではなかったと思っている。例えば、近代日本の黎明期である明治11年に東北・北海道を旅行したイギリス人イザベラ・バードは、その旅行記「日本奥地紀行」(高梨健吉訳、平凡社)で、「世界中で日本ほど、婦人が危険にも無作法な目にもあわず、まったく安全に旅行できる国はないと信じている」と書いている。日本人が持っていたそういった"礼節"や"美徳"は、今の日本では過去の遺物となってしまったのだろうか。そんなことは無い、と切に願っているのだが……。

  

そんな"切なる願い"が届いたのか、昨年の暮れから、殺伐としたニュースを吹き飛ばす勢いで、心温まる運動が広がりを見せている。日本中を温かい気持ちにさせているのは、ご存じ「タイガー運動」だ。漫画の主人公を名乗ったこの慈善運動は、ごく普通の市井の人々に共感と感銘を与えたのだろう、運動の輪は急速な勢いで日本中に広まっている。驚いたことに子供の運動家も現れたという。そうした報道を聞くと、既に大きな社会現象となっている、と言っていい。こういった慈善運動を支持し参加する人がこれだけいるとは、まだまだ日本も捨てたもんじゃない。

そんな思いにさせてくれるこの善意の運度は、暮れも押し迫った12月25日、群馬県中央児童相談所(前橋市)に10個のランドセルが届けられたのを皮切りに、あっと言う間に全国的な広がりを見せ、僅か半月ほどで47都道府県全てに同様なプレゼントが届けられているという。ランドセルに始まり、文房具、玩具、衣類、現金など贈られる物は多種多様だが、貰った子供たちは勿論、子供たちに接している職員は言うに及ばず、ニュースを聞く私たちの心でさえ温かくしてくれる。本当に素晴らしい運動だ。「選挙に勝つためには……」が露骨に見え隠れする「子ども手当」に比べれば、何と私心や裏心が無いことか。

  

プレゼントの届け先は――保護者がいなかったり虐待を受けたりした子供たちを受けいれている――児童養護施設が中心だが、1月16日の朝日新聞朝刊によれば、2009年度末で全国575カ所の施設に3万594人(原則18歳未満)が入所しているという。この数字が多いのか少ないのかは、「何を」基準に、或いは「どこと」比較するかによって異なるが、"発展途上国"や"戦禍や大規模災害によって混乱している国々"を別にすれば、曲がりなりにも経済大国を自認している先進国としては素直な感想で言えばかなり多い。

入所する子供たちが多いのは、事故のために身寄りが亡くなった場合を除けば、「物質的な欲望を満たすこと=幸福」の短絡的思考が一般的になり、道徳観念が希薄になってきたことが原因なのではあるまいか。冒頭の死体遺棄事件も、その感が強い。もしそうだとすれば、日本の何がそうさせてしまったのだろうか。私は、かつて大宅荘一が「一億総白痴化」と看破した、テレビの影響ではないかと思っている。特に最近は、ただ単に面白可笑しいだけの番組が多い。そんな番組を届けることが使命だと錯覚しているテレビ関係者の責任は極めて重い。こういった報道関係者の質が……。

おっと、せっかく心温まる話題だったのに重苦しい話になってしまった。歳を取るとどうも愚痴っぽくなっていけない。子供でさえ慈善運動に参加しているというのに、愚痴ってばかりいては全国の伊達直人さんたちに申し訳ない。重苦しい話のお口直しではないけれど、可愛らしい写真を紹介して、話を終えよう。

  

下の写真は、私の友人である蛭田剛司氏が提供してくれたもので、ハワイ・オアフ島でのスキューバーダイビング中に突然岩陰から現れたアザラシの一種だという。正式名称をハワイアンモンクシールというらしいが、何とも愛らしい。プレゼントを送った伊達直人さんたちも、そんな目で子どもたちを見ているのだろう。皆さんもこの写真を見てホッとしていただければ幸いである。

【文責:知取気亭主人】

 
 

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