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知取気亭主人の四方山話
 

『お食い初め』

 

2011年1月26日

人が集まり住むと、そこに風習が生まれ地域としての特色が出てくる。必然的に、世界の民族や地域、或いは国家にはそれぞれの歴史があり、歴史があるところには受け継がれてきた伝統的な風習があるものである。そういった風習、特に未来を占ったり"こうあってほしい"と願ったりする風習の中には、科学技術が未発達な時代に発生した為に科学的な裏付けがなく時代錯誤的なものも結構多い。しかし例えそうだと分かっていても、イザその伝統的な風習を執り行う段になると、誰しもが敬虔に、そして真摯になるから不思議だ。

長い歴史を誇り、国民の多くが八百万の神々に畏敬の念を抱いてきた我が日本にも、当然のことながらそんな習わしが沢山ある。皆が知っている正月の"初詣"や"どんど焼き"など国民的イベントもあれば、ある地方だけで執り行われるものもある。しかし、日本全国に共通して言えることは、"お宮参り"や"厄払い"など人の一生に係る風習が多いことだ。風習が始まった遥か昔、人生50年とも60年とも言われていた時代には、無事一生を全うすることが難しかったことが背景にあるのだろう。「健やかに成長することへの祈り」や「無事成長してきたことへの感謝」を表すことは、当時の人たちにとって大切な儀式だったに違いない。特に、赤ちゃんが誕生し、成長していく節目節目で執り行われる各種の儀式は、愛らしい子供が主賓となるだけに、家族にとって目出度さも嬉しさも格別なものである。

その格別なことを、我が家も昨年から楽しませて貰えるようになった。昨年9月に初孫が生まれたからだ。これから暫く、折りに付けそういった祝い事や儀式を楽しませてもらうことが出来る。楽しませてもらうだけでなく、その儀式を通じて、健やかに成長してくれていることへの感謝の念を改めて感じることになる。と同時に、子育ての大変さと喜びを、息子たち夫婦も味わうことになるのである。

  

早いもので、初孫が生まれて今月の22日で4カ月が経った。我が家の子供たちの時はやらなかったのだが、丁度此の頃「お食い初め」と呼ばれる儀式が行われる。この「お食い初め」、インターネットで調べると「100日とか120日に行われる」と書かれていて、何時するかは地方によって違うらしい。「生まれてきた赤ちゃんが将来食べることに困らないように」という願いを込めたものらしく、平安時代から続く日本古来の儀式だと説明されている。

勿論、100日とか120日では離乳食も始まっていないから、本当に食べさせるのではなく真似事をするのだという。地域によっては「百日祝(ももかいわい)」、「箸祝」,「歯固め」などとも言われていて、食事に関する名前が多いところを見ると、この時期というのはそろそろ乳歯が出始めるころなのかも知れない。そう言えば、我が家の孫娘も最近良く唾液がでるようになってきた。"そろそろ乳歯頭出し"のサインなのかも知れない。

  

ところで、食べる真似事だから何でも良いように思えるのだが、こういった儀式は縁起が重要で、「お食い初め」の為に用意する道具や料理、そして手順が決まっている。かといって、余りこだわる必要はないようではあるが……。

まず代表的な道具を紹介すると、「柳箸」、「男の子には朱色の容器」、「女の子には外が黒で内側が朱の容器」、「氏神様の境内から拝借する石」である。そして用意する料理は、一般的な習いとして、鯛などの尾頭付き焼き魚、煮物、香の物、お吸い物、赤飯の一汁三菜だという。そんな情報を得て我が家で用意した道具と料理が、下の写真だ。柳箸の代わりに頂いた離乳食用のスプーンとフォーク、"香の物"の代わりに"酢の物"を、小さいながらも尾頭付きの鯛も用意した。その他、プリントアウトした資料の「3個用意する」には2個足りないけれど、神社からお借りした石も用意した。この"石"は食べるものではなく、口に当てたり、そうでない場合は石に触れた箸を歯茎に当てて、「石のように丈夫な歯が生えてくるように」と願うのだという。何とも素朴な儀式だ。

  

  

さて、いよいよ食べる真似だが、親族で一番長寿のおじいちゃん・おばあちゃんの膝に赤ちゃんを抱いて行うのが一般的らしい。これは長寿にあやかるという意味で、男の子なら男性、女の子なら女性が務めるのだという。そして、鯛などの食べ物を口にもっていき食べさせる真似をするのだが、食べ真似の順番は飯→汁→飯→魚→飯の順で、これを三回行うという。随分と手が込んでいる。これから成長していく赤ちゃんにとっての「お食い初め」とあっては、当然の事なのかも知れない。

ここまで書いた儀式はほぼ古式に則ったやり方なのだが、インターネットで調べて驚いた。「箸ではなく銀のスプーンを使え」と書いてあるサイトがあったのだ。まさか平安時代に銀のスプーンがあったとは思えない。こんな幼児の儀式にも商業主義が入り込んでいるとは恐れ入る。時代によって変わることはある程度仕方ないとしても、売らんが為の商業主義が見え隠れすると、がっかりだ。だって、箸は今でも日本人の最もポピュラーな食事の道具ではないか。とは言うものの、今回我が家の「お食い初め」で使ったのがプラスチック製とは言えスプーンとフォークだったから、余り強くは言えないのだが……。

【文責:知取気亭主人】

 

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