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知取気亭主人の四方山話
 

『神様仏様…、でもやっぱ銭やで!』

 

2011年2月23日

17日の朝、毎朝仏壇に手を合わせている私をガッカリさせるニュースが、カーラジオから流れてきた。あの有名な金閣寺、銀閣寺を管理する臨済宗の住職が国税局から凡そ2億円の申告漏れを指摘されていた、というニュースだ。掛け軸用に書を書いて得た収入を申告していなかった、と言う事らしい。日本が世界に誇るあの金閣寺も銀閣寺も同じ住職が務めていることにも驚かされたが、「小さな田舎のお寺では檀家が減ってお寺の収入だけでは生活できない」と聞いていただけに、同じお寺でも、いやいや同じお坊さんでも稼ぐ人は稼ぐものである。

しかし、いくら世俗を離れ、仏に近い生活を常としているお坊さんだとしても、掛け軸に書を書いて得た収入がお布施と同じように非課税になると思っていたとは、俄かには信じ難いことだ。そんなことが通れば、まさに"坊主丸儲け"だ。しかも、書を認めただけで、3年で2億円とは大層もない金額だ。高僧と呼ばれるようになると、書も随分と有難味が増すらしい。素直に考えれば、良く言われる「芸は身を助く」ということかも……。字で稼げるとは羨ましい限りである。しかし、私のミミズが這ったような字では如何ともし難い事も、かなり悲しい現実だ。

ところで、現代の僧侶に関する税制は、"坊主丸儲"と揶揄されていた遥か昔と違い、我々サラリーマンと同じように、給与所得が2千万円を超えたり、2カ所以上から所得を得たり、或いは給与以外に原稿料などの収入が20万円を超えたりすると、確定申告が義務付けられているという。そんなことは、我々俗世間の人間ならいざ知らず、仏門、しかも著名な観光寺を二つも持っている住職ならば知らない筈がない。"やっかみ半分"プラス"面白半分"で言わせてもらえば、「判っていてやったに違いない」という事になる。金稼ぎの煩悩に負けてしまったのだろう。その背景には、宗教法人に対する優遇税制がある。

  

金儲けの煩悩に負けてしまうのは、金閣寺・銀閣寺の住職ばかりではない。優遇されているその税制を利用して、脱税やら蓄財やらをしようとする輩が、どうやら国内には数多く暗躍しているらしい。1月30日の朝日新聞朝刊に、「蓄財の隠れ蓑として宗教法人が売買されている」とのニュースが大きく報じられていたのだ。しかも、紙面に大きく取り上げられていたのは、我が石川県は加賀市に鎮座しているケバイ観音様だ。

加賀温泉駅近くを走る北陸本線の車窓から外を眺めていると、突然長閑な景色に不釣り合いな巨大な観音像が見えてくる。「ユートピア 加賀の郷」というホテルや遊園地まで備えた施設だったのだが、その金色に輝く観音様が、付属するホテルなどの施設と共に売りに出されているというのだ。朝日新聞の記事によれば、97年に倒産した後、大阪の会社が落札し、寺の代表役員が死んだ今も登記上はそのままになっているらしい。

宗教法人は、楽なことに登記されている代表役員の名義を変えるだけで、事実上売買が成り立つのだという。以前にも聞いたことがあるが、新たな宗教法人の設立は面倒な上、認可されないこともあって、活動実態のない休眠状態の宗教法人を中心に、優遇税制の権利取得を目的として取引されているらしい。しかも、食品や電化製品などと同じようにネット上でも取引されている、というから驚きだ。こんなに軽く扱われたのでは、神聖さも神秘さも、ましてや有難味もなくなってしまう。売買取引の中心となる休眠状態の宗教法人は、2009年末時点で18万2千を超える数の中で、1万7千弱もあったという。凡そ10%にもなる。全ての休眠法人が取引されているわけではないにしても、煩悩に踊らされる我々一般大衆が懺悔し、拠り所とする神様・仏様が、まさか売買されているとは……。金の亡者が宗教法人とは、世も末だ!

  

新渡戸稲造は、「日本人は宗教なしでどうやって道徳教育を受けるのか」と問われて「武士道」を認めたが、私は武士道だけでなく、神道も仏教の教えも道徳教育に大きく関わっていたと思っている。昔の子供は、小さな頃から"悪事を働くと地獄に落ちる話"を聞かされ、"おどろおどろしい地獄絵"を見せられて育った。そういう環境の中で、悪い事をしてはいけないという事を学んできた筈なのだ。

蓄財自体は一概に悪い事とは言えない。しかし、宗教法人の優遇税制を逆手にとって行う脱税まがいの節税は、昔の教えに従えば明らかに悪事だ。いくら人を導く宗教法人であっても、やりたい放題が許されるわけではない。

調べたところによれば、下の表に示すように宗教法人は、非課税事業もかなり認められている上に、法人税率も一般企業の30%に比べて8%も低い。こんな優遇措置を目当てに、神様・仏様の売買が行われているのだ。そんな施設からは、「有難い説法」ではなく、「神様仏様…、でもやっぱ銭やで!」とうそぶく笑交じりの声が聞こえてきそうだ。

 

【文責:知取気亭主人】


雪の塊に屋根からの滴で開いた穴

 
 

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