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知取気亭主人の四方山話
 

『テレビの品格』

 

2011年8月10日

今年も鎮魂の8月がやってきた。人類史上初めて使用された原子爆弾によって市民が大量殺戮された6日の「広島原爆の日」、3日後に再び投下され惨劇を繰り返した9日の「長崎原爆の日」、更には先祖や親族の御霊を迎える仏教行事の通称「お盆」、そしてそのお盆の最後の日となる15日の「敗戦記念日」と、8月は鎮魂の日が多い。毎年のことながら、このむせ返るような暑い季節になると、戦争や原子爆弾の悲惨さを今に伝えるニュースが多くなる。特に、広島・長崎の原爆の日と敗戦記念日は、新聞のトップページで報道され、日本国民にとっては忘れることの出来ない日となっている。

加えて今年は、3月11日に発生した東日本大震災によって福島第一原発に甚大な被害が発生し、原子力の利用には目に見えない大きな危険が伴っていることを、改めて日本国民に思い知らせることとなった。安全神話が瓦解し、地元の福島県で多くの避難民を生み出しているばかりか、東日本の広い範囲で放射能に汚染された肉牛等が見つかり、その被害は今なお拡大の様相を示している。そんなことを考えると、「今年の原爆の日は、被爆者のみならず今を生きるすべての国民にとって、原子力について考える特別な日だ」と言って良い。そんな思いで6日の朝、広島で執り行われていた「広島平和記念式典」のテレビ中継を見ていたのだが、遊びのつもりで動かしたチャンネルで違和感を覚えることがあった。少し前に中国の上海で開かれていた「世界水泳」の報道に関してもそうだったのだが、今回はその時以上に違和感を覚えてしまった。イヤ、違和感と言うよりは、「テレビの本性を見た」と言った方が適切なのかも知れない。

 

暫く前に、数学者の藤原正彦氏が書いた「国家の品格」が話題となり、その後「女性の品格」なる本も出版され、一時「○○の品格」が流行言葉となった。今回は、その「品格」がテレビには欠けているのではないか、と思える事態に遭遇したのだ。以前から、大宅荘一氏の「一億総白痴化」の名言を引用させてもらい、テレビ番組の低俗化を心配してきただけに、「やっぱりな!」と再確認してしまった感がある。

つまり、「テレビの品格」、もっと分かり易い言葉で言えば「番組作りの良心」、或いは「真実を伝えるという報道の基本理念」という事なのかも知れないのだが、そんな「テレビの品格」なるものがあるとすれば、昨今のテレビはどうも品格に欠ける、ということなのだ。今に始まった事ではないが、こうもハッキリやられると腹立たしささえ覚える。

 

NHKの「広島平和記念式典」を見ていて、丁度菅総理の挨拶が中継され始めた頃にチャンネルを切り替えてみた。他局ではどんな報道をしているのか興味があった為なのだが、チャンネルを動かして驚いた。我が家で見ることが出来る民放は4局あるのだが、どれ一つとして中継していないのだ。4局ともそれぞれ大新聞がバックにいる大手テレビ局から番組を供給されている筈なのに、である。どこもバラエティー番組花盛りで、「戦争のこと、原子力のことを、被爆国の国民として今回の原発事故を踏まえ真剣に考えよう」等という雰囲気は微塵もない。今日ばかりは特集を組んでいると思ったのに、である。

それでも“もしや”と思い、「中継は既に切り上げた」ということかも知れないと、新聞の番組表を調べてみた。確かに、2局は8時から始まる番組内容の最後に――深読みすればメインでないことは直ぐ分かる書き方で――「広島原爆の日…中継」と書いてあった。後の2局には、「広島…」の文字さえない。近年、諸外国の要人でさえ参加するようになり、原爆に対する反対気運が高まってきているというのに、あまつさえ原発事故で大変な状況になっているというのに、日本のテレビ局のこの体たらく、恥ずかしい限りだ。

 「新聞は社会の公器」と呼ばれた時代があったように、テレビは正に今の時代の「社会の公器」だ。しかし、ニュース番組もバラエティー化するようでは、本当に「一億総白痴化」になってしまう。もう一度、テレビ人の奮起を期待したい!

 

奮起を期待したいのは、民放ばかりではない。NHKも一緒だ。2年に一回開かれる水泳の世界選手権が、7月16日から凡そ2週間に亘り上海で行われた。来年開催されるロンドンオリンピックの前哨戦として注目された大会で、日本は3大会ぶりに金メダルゼロに終わったものの、競泳陣は銀メダル4個、銅メダル2個の活躍を見せた。民放が特番を組み独占放映していて、NHKでは放映されていなかったのも事実だが、そこは天下のNHK、結果が既に分かっている筈の夜のニュース、特にスポーツコーナーでは流石にメダル獲得のニュースは流すものだと思っていた。

ところが、である。民放で銀メダル獲得の手に汗握るレースを見た後、もう一度その活躍シーンを楽しもうとNHKにチャンネルを動かしたのだが、一向に放映されない。とうとう、世界選手権の話題すら上らず番組は終了してしまった。つまり、世界第2位の大活躍をしても結果すら報道されなかったのだ。まるで、子供が意地を張って“すねている”のと同じだ。大人気ないというか、余りにも短絡的すぎる。一体、国家の名誉のために戦っている選手たちに、どうやって申し開きをするのだろうか。それとも、栄誉をたたえる気持ちよりも「意地」の方が勝っているのだろうか。

 

テレビ各局には、「公器としての役割」と「真実を伝えるという報道の基本理念」を今一度良く考え、私のような“意地悪爺さん”でも納得のいく番組作りをしてもらいたい。そして、「品格あるテレビ」に成ってもらいたいものである。  

【文責:知取気亭主人】
  


向日葵(見せ方によって随分違う)
 

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