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知取気亭主人の四方山話
 

『地学を必須科目に!』

 

2011年8月31日

3.11の大震災以来、過去に起こった地震・津波被害の資料や痕跡が、各地で明らかになってきている。あまり大きな津波には襲われていないだろうと思っていた能登半島でも大きな津波に襲われたことがある、という資料が発見されたりして、驚かされている。また、8月22日のネットニュースで、「宮城県気仙沼の海岸で、過去6千年の間に6回も10メートルクラスの巨大津波に襲われていたのではないかと思われる痕跡が見つかった」、との記事を見つけた(http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866918/news/20110821-OYT1T00511.htm)。北海道大学の平川教授らが発見したもので、単純計算すると、東北の太平洋岸は1千年に1回の割合で、今回のような巨大津波に襲われていたことになる。これは、凡そ今から1千年前に記録が残っている貞観地震と、今回の東日本大震災との間隔とも一致する。矢張り、歴史は繰り返す、という事なのだろう。

 

それに似たような話で、8月28日の朝日新聞朝刊にも興味深い記事が載っていた。高知大学の岡村真教授の研究チームが、四国の二つの池(高知県土佐市の蟹ヶ池、徳島県美波町の大池)を調査して、2千年ほど前に四国地方を巨大津波が襲った可能性を示す痕跡を見つけた、というものだ。

調査した二つの池は流れ込む川が無く、通常池の底に堆積するのは植物の根や細かな泥である筈なのに、2,000〜2,500年前の地層からより粒子の大きな砂の地層が見つかった、というものだ。砂を運んで来る筈の川が無い事から、この砂は津波によって運ばれたものではないか、と推定しているらしい。しかも、同じように川が流入していない各地の池や沼地を調査した結果、「砂層の厚さ≒津波の高さ÷100」の規則性を見つけた、とも書かれている。

その規則性を今回の二つの池で発見した砂層の厚さに当てはめると、計算される津波の高さは、40〜65メートルもの驚くべき巨大さになるという。もし事実だとすると、想像を絶する高さだ。東海地震、東南海地震、南海地震の三つが連動したときに想定されている津波でも、確かこの高さには遠く及ばない。この三つの震源域に加え、南海地震よりもさらに南の震源域を加えた四つ連動の可能性も指摘されているが、この驚くべき巨大津波は、もしかするとその四つ連動地震の結果ではなかっただろうか。

その四つ連動を意味しているのかどうかは書かれていないが、新聞記事によれば、東京大学の古村孝志教授も複数の震源域が連動した「大連動」と推定しているようだ。もしそうだとすれば、静岡以西の太平洋沿岸地域は、そんな巨大地震・巨大津波も想定内に入れた減災対策が必要となってくる。それは大変な事だ。しかし、大変な事ではあるが、「想定できる」という事は、ある意味素晴らしい事でもある。事前に対処が考えられるからである。

 

この「想定できる」を可能にしているのは、「地学」という学問である。2,000〜2,500年も前の日本となれば、書き残した記録など勿論無い。ところが、こういった大地に残された痕跡を手掛かりに、まるで目の前で起こったかのように、過去に起こった自然現象を解き明かすことが出来るのだ。そして、それは減災に大いに役立つことになる。今回話題にした過去の自然災害の痕跡調査を始め、地震が起こるメカニズムを解き明かす等、地学は地震と深く関わってきた。そしてこれからもそうである。

ところが、である。これだけ地震の多い日本でありながら、高校で地学を学んできた人たちが圧倒的に少ないのには驚かされる。私には25〜31歳の4人の子供がいるのだが、誰一人として地学を学んだ子がいない。「学んだ」というよりは、「選択しなかった」が正確な表現なのかもしれないが、いずれにしても教科書を手にとって学んだことが無いのだ。当然の結果として、地球の事にはほとんど関心はなく、地震や津波の事を「身近な出来事」と思わないまま生活することになる。更には、さしたる被害に接しないまま生活していくと、それが普通だと勘違いして、防災意識も低くなる。そして、一旦災害に遭遇すると、被害を大きくしてしまうのだ。

 

地震や津波災害ばかりではない。日本では、洪水や土砂崩れなど生命や財産に危険が及ぶような自然災害が頻繁に発生し、過去に何回も学習している筈なのに、毎年悲惨な報道がひきも切らない。これも、生きる知恵の教育がなおざりにされている為だ、と思っている。生きる知恵の教育、つまり自然災害の素因と誘因を学び、少なくとも自分でできる防災行動を理解し行動に移せるように教える事が必要だ。つまるところ、私の持論は、災害が毎年多発している日本の自然を十分理解し、自らの生命を自らの手で守られるように、「地学」を高校の必須科目にすることだ。

しかし、今回の未曾有の大震災を目の当たりにしても、そんなニュースは聞こえてこない。ハンマー片手に野山を歩く姿は、スーツ姿で格好良く働くトレンディードラマを見て育った世の教育ママからは「胡散臭い男」としか思われないのだろう。大企業の高層ビルも憧れの高層マンションも、地学という学問に随分とお世話になっていても、それを知らないのである。

私の知り合いから、作業着を着て踏査をしていたら、子供連れのお母さんに「勉強しないとあんな風になってしまうわよ!」と指を差された、という笑えない話を聞いた。最難関大学を出た人なのに、である。地学に対する無知も甚だしい。こんなお母さんばかりでは、ますます災害に弱い国になってしまう。矢張り、地学を高校の必須科目にすべきである。

【文責:知取気亭主人】
  


 

噴火する霧島連山(これも地学の範疇)
(写真:久野氏提供、2011年2月1日)                                                    

 

 

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