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知取気亭主人の四方山話
 

『炬燵の魔力』

 

2011年11月30日

師走の足音が次第に大きく聞こえるようになり、今年も暖房が恋しい季節となって来た。街路樹のイチョウがひと風毎に寂しくなっていく様からすれば、恋しくなるのが随分遅い気がしないでもないが、今月の半ば過ぎあたりからとうとう痩せ我慢も厳しくなってきた。特に、日が落ちてからの冷え込みは、中途半端な肉付きの私には暖房がないときつい。ところが、いつもの年だと真っ先に部屋の真ん中に鎮座している筈の炬燵が、諸般の事情により出せず仕舞いで、グッと我慢の日を続けざるを得なかったのだ。27日の日曜日になって、やっとスイッチが入れられた。例年よりひと月ほど遅いデビューだ。

しかし、炬燵は不思議な暖房器具だ。椅子での生活時間が増え、畳に座る時間がめっきり少なくなっているのに、冬が近くなり、暖房が恋しい季節になると、不思議と畳の上に出した炬燵で暖を取る時間が増えてくる。昔に比べると最近は色々便利な暖房器具が売られているにも拘らず、今でも我が家では炬燵が主役を張っている。何故かといえば、私の大好きな他の暖房必須アイテムとの相性が、抜群に良いからだ。家内や娘には伏せてあるのだが、癖になる相性の良さだ。尤も、癖になっている事は、とっくの昔に見透かされている可能性もあるのだが……。

それは兎も角として、私がお薦めの相性抜群アイテムを紹介しよう。まず一つ目が、冬の定番、鍋料理だ。体を温めるには、体の外側からばかりでなく、体の内側、体の芯からも暖めるのが理想だが、その体の芯から温める強力な体内暖房アイテムが鍋料理なのだ。炬燵に入り、鍋を囲んで一家団欒、良いですな! これには皆さん、異存はないだろう。

そして二つ目の相性の良いアイテムは、本当は真っ先に挙げたいのだが、「またか!」と言われそうでグッと我慢した、日本が世界に誇る伝統技術の傑作だ。日本の冬、料理は鍋、と言えば? そう熱燗だ。そして、鍋料理、熱燗とくれば、やはり炬燵だろう。これらは、炬燵から連想される、お決まりの三点セットだ。

私が愛してやまないこの“強力三点セット”に勝る暖房セットは、他では一寸思い当たらない。そして、この三点セットを完成させるには、エアコンや石油ストーブではしっくりこない。炬燵がどうしても不可欠なのだ。私以外の我が家の住人は理解不能なのだろうが、私にとっては、強力暖房三点セットを最高の状態で楽しむための炬燵は無くてはならない冬のアイテムとなっている。もっと言えば、私の中ではもはや「日本の冬の原風景」に成り切っている。炬燵の上に鍋料理、和服を着た妙齢の女性が「おひとつ如何?」なんて言いながらお酌してくれ様ものなら……。最高だね!

 

また始まった妄想は置くとして、くだんの電気炬燵を始めとして子供の頃の定番だった火鉢、両親の実家で夏でも冬でも活躍していた囲炉裏、短い期間だったが独特な臭いで一世を風靡していた石炭粉末を固めた練炭・豆炭の炬燵、さらには3.11の大震災以来見直されている薪ストーブ、今の主流となっている石油ストーブ・エアコン等々、暖房器具には色々な種類がある。名前を挙げたこれらの暖房器具の中には、その効果が低くて今は殆ど使われなくなった火鉢や、使いたいのだけれど今の狭い住宅事情では設置できない囲炉裏等、一般家庭では日の目を見なくなってしまった道具もある。ところが炬燵だけは、熱源を炭から豆炭に、そして電気へと進化させながら、今でも日本の多くの家庭で使われている。息の長い暖房器具となっている。どこにそんな魅力があるのだろうか。先に述べた強力暖房三点セットの必須アイテムになっている事も含め、炬燵が持つ不思議な魔力に、多くの人が魅せられているからなのだろう。  

 

ドラエモンの「どこでもドア」ならぬ「いつでも寝床」は、そんな炬燵が持つ不思議な魔力の代表的なものだ。“飲み疲れ”でなくても、座り疲れてゴロンと横になれば、たちどころに睡魔に襲われ、夢の世界に入っていく事が出来る。炬燵に入った時には全く眠くなくても、不思議と眠りに落ちて行くのだ。そして、それをこよなく愛する人たちも多く、暖を取りに行くのではなく、最初から寝る事を目的としている達人も結構いる。実は、我が家の住人にはそんな得意技を持ったのが多い。ン、全員か?  

炬燵に入っていると、下半身を中心として特に手足が温まる。乳幼児の手足が暖かくなると「眠たくなってきたな」と判断するのと同じで、きっと大人でも手足が温まると眠たくなるのだろう。そして、眠たくなったら、移動する事もなくその場所でゴロンと横になり寝る事が出来る。つまり、「眠たいときに寝られる」というこの上ない贅沢を、炬燵では実践できるのだ。寝不足が常態化している現代人にとっては、滅多にない至福の時間を味わえる事になる。素晴らしい魔力だ。

 

そして、もうひとつの魔力が、絆を深められる事だ。時には足と足が触れ合い、手を伸ばせば体に触れる事が出来る程の近さで、同じ話題で盛り上がれば、大人でも子供でも絆は強くなる。一体感が生まれるのだ。同じ料理を食べ、同じ遊びを楽しみ、同じ話題を共有すれば、もうすっかり仲間だ。長男の嫁は、そんな魔力の加勢を得て、結婚する前にすっかり我が家の一員になった。炬燵は、そんな仲間作りを応援してくれる数少ないアイテムのひとつと言っていい。

暖かくて不思議な魔力を持つこの炬燵、これから暫く大活躍してくれそうだ。                      

【文責:知取気亭主人】

 



 


  
 

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