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知取気亭主人の四方山話
 

『63年前と今』

 

2012年4月25日

4月は私の誕生月である。丁度一週間前に63歳になった。歳をとると、誕生日を迎えてもさしたる感慨も無い。ところが、いざ大勢の家族から祝ってもらうと、そんな強がりは何処へやら、幾つになっても、“オメデトウ”と言われる喜びを味わう事になる。特に、孫のたどたどしい発音で“オメトゥ”と言われると、細い眼は益々細くなり、眼尻は下がりっぱなしになってしまう。人間、どんなに歳をとっても、祝ってもらうのは嬉しいものなのである。

そんな人間の心理を十分理解・活用しているのだろう、生命保険の外交員が、可愛い花の鉢と共に、面白いプレゼントを持って来てくれた。私が生まれた昭和24年やその10年後、20年後に、世界で起こった出来事などを箇条書きに認めた、A4サイズ1枚の新聞だ。日本生命保険相互会社が発行している新聞で、「おもいで新聞」のタイトルの横には、「覚えていますか?あの頃のこと」の言葉が添えられている。

生まれた年の出来事が記憶に残っている筈もないが、10年後、20年後の出来事も、「そんな事もあったな」と懐かしく思い出すことばかりで、夫々の年に書かれている5項目は、どれも「ヘェー!」の声を出してしまう。光陰矢の如し、とは良く言ったものである。それでは、私が生まれた昭和24年――敗戦からようやく立ち上がろうとしていた頃――の五つの出来事を転載してみよう。

 

@ 世界最古の木造建築・法隆寺の金堂が全焼。

A 京都大学・湯川秀樹教授、日本で初めてノーベル物理学賞を受賞。

B 日本プロ野球団、2リーグ制となる。

C GHQ、日本円に対する公式為替レート設定。1ドル360円。

D お年玉付き郵便ハガキが発売開始。

 

どうだろう。皆さんからも、きっと「ヘェー!」が出た筈だ。ただ、湯川博士のノーベル賞受賞については、ノーベル賞のシーズンになるたびにニュースとして取り上げられているから、よく知られているところで、私も既に承知していた。しかし、他の4項目については、初めて知ることばかりだ。特に、「円=360度」から1ドル360円の為替レートになったとはものの本で知っていたが、それが私の生まれた年だったとは驚きだ。こうしてみると、昭和24年にも、節目となる大きな出来事があった事が分かる。しかし、今の時代にも大きな影響を与えた事柄についてとなると、重大なことが抜けている 。

 

「団塊の世代」といえばピンとくると思うが、出生数、あるいは人口増加についてである。 「団塊の世代」と呼ばれる昭和22年、23年、24年は、出生数が飛び抜けて多く、いずれの年も260万人を超えている。総務省統計局に依れば、この3年が、データのある明治5年以降の出生数上位1、2、3位を占めている(http://www.stat.go.jp/data/chouki/02.htm)。最も多いのは昭和23年の270.2万人で、私が生まれた昭和24年が僅かに少なく、269.4万人でこれに次いでいる。ところが、“出生数”ではなく、出生者数から死者数を引いた「自然増減」に焦点を当てると1、2位が逆転して、昭和24年が、175.6万人の増加で最も多くなる。多分、データの無い明治4年以前を含めても、日本の歴史上最も人口が増えたのが、昭和24年だと思われる。それに比べると少子高齢化が叫ばれて久しい近年は、人口に関しては激減の一途をたどり、出生数は僅か4割ほどになり(平成21年で108.7万人)、総人口も増えるどころか減り始めてしまっている。寂しい限りである。

 

折しも、今月の17日、総務省から2011年10月1日現在の人口推計が発表された。それに依れば、「自然増減」が18万人減となって、過去最大の減少となったことが分かった。しかも、入国者数から出国者数を引いた「社会増減」の7.9万人減を足すと、前年に比べ25.9万人も人口が減ったことになる。これも、比較できる昭和25年以降で最大の下げ幅らしい。東日本大震災による影響もかなりあるとは思われるが、63年前とはえらい違いである。

人口の増減だけが国力の物差しではないが、活力の物差しにはなりそうな気がする。ヒトの体と同じで、国家においても、新陳代謝は活発な方が良い。そういう意味では、「人口の減少=少子高齢化」の図式を端的に表す人口の減少は、国家の活力が減退してきている事を暗示していることになる。「63年前と同じ出生数に戻れ」とは言わないが、せめて人口の減少だけでも止めたいものである。

 

そんな思いを強くしていたら、ヒトの世界ではなく鳥の世界の話ではあるが、鳥口の減少に歯止めが掛りそうな嬉しいニュースが今日本中を駆け巡った。その数が激減し、絶滅の瀬戸際まで追い詰められた、国の特別天然記念物トキのヒナが36年振りに自然界で誕生した、というビッグニュースだ。23日夜には、1羽だけではなく3羽も誕生していたことが分かり、地元では喜びに沸いている。これで、トキの自然増加の可能性も見えてきた。

鳥の事ではあるが、この嬉しいニュースで、日本の人口問題にも明かりが挿した気がするのは、思い込み過ぎなのだろうか。人間の手厚い保護があるとはいえ、鳥に出来て、我々日本人に出来ない筈はないのだ。是非、トキにあやかり、少子高齢化の減速に明るい兆しを期待したい。せめて、63年前の半分位の出生数には、戻ってほしいものである。

【文責:知取気亭主人】  

 

 


 ハナニラ(花韮)

  

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