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知取気亭主人の四方山話
 

『遺伝のせい?』

 

2012年7月4日

最近、芸能関係者の訃報が相次いでいる。映画監督の新藤兼人さんを始め、歌手の尾崎紀世彦さんや小野ヤスシさん、そして地井武男さんなどである。いずれも国民的な有名人で、それぞれの分野で一世を風靡した人達だ。そんな鬼籍に入った芸能人の中に、双子姉妹のデュオとして人気を博した「ザ・ピーナツ」の姉、伊藤エミさんがいる。

最初に彼女達の歌声を聞いたのは今から40年以上も前のことだったと思うが、ラジオやテレビから流れてくる彼女達の見事なハーモニーに、“羨ましさ”さえ感じたものだった。そして、双子だからあんなに上手にハモルことが出来るんだ、と出来ない自分を納得させた記憶もある。声がそっくり、音感も似たような能力を持っている、そんな瓜二つのデュオなのだからハモリ易いに決まっている、と勝手に決めつけていたのだ。同じ遺伝子を受け継いでいるのだから瓜二つも当たり前、と単純に思っていたのだが……。そんな考えが合っているのかどうか、ヒントになる記事が朝日新聞に載った。

6月23日の土曜日版、「今さら聞けない+(PLUS)」シリーズに「双子と遺伝子」というタイトルで、特集記事が載った。双子には“一卵性”と“二卵性”がある事は良く知られているところだが、特集記事によれば、遺伝子の組み合わせが原則100パーセント同じなのは一卵性で、二卵性は平均50パーセントしか同じでないらしい。しかも、一卵性の場合は、同性のみの双子しか生まれないらしく、二卵性の場合は異性の双子もあるのだとか。そして、自然妊娠による出産件数も一卵性と二卵性に違いがあって、一卵性は世界の民族や地域に関係なく1千件に4組、一方の二卵性は日本人では1千件に2組で、黒人や白人に比べて少ないのだという。この辺になると、「神のみぞ知る」の領域、正に神秘の世界である。

神秘かどうかは別にして、こういった双子を通して“遺伝”と“環境”の影響を研究している先生達がいる。双子研究と言えば、我々の学生の頃から東京大学教育学部附属中等教育学校が知られているところだが、今回の新聞記事に載ったのは、石川県立看護大の大木秀一教授と慶応大学の安藤寿康教授の研究だ。先の情報は大木教授によるものだ。そして、次の安藤教授の研究成果も大変興味深い。

我が家の家系はどちらかというと太りやすい体質で、子供達もそうだし、孫も、今の見事な食べっぷりを見ていると、恐らくしっかりと受け継いでしまっている。こういった体質、もっと端的に言えば「体重」は、個別に過ごす時間や環境が及ぼす影響は意外と小さく、遺伝の影響が大きいのだそうだ。その度合いを、新聞に掲載されている「双子研究からわかる遺伝と環境の影響」の棒グラフ(以下グラフ1)から読み取ると、“遺伝”は凡そ90%以上も影響を与え、“環境”は驚く程小さくて10%にも満たない事が分かる。となると、我が家の子供達の体重は、恐らく、私の遺伝子が悪さをしていることになる。ゴメン!

「本当に?」と気になる方は、図書館で6月23日の朝日新聞土曜日版を借り、同時に掲載されている「双子ペアの体重の類似度」なる折れ線グラフを見て頂きたい。「成る程!」と納得される筈である。

体重と来れば、次は当然「身長」だ。こちらは、皆さん素直に納得して頂けると思うが、明らかに遺伝の影響の方が大きい。くだんの“グラフ1”から読み取ると、その影響度合いは僅かばかりだが「体重」より更に大きく、遺伝子がしっかりと90%を超す影響力を行使している事が分かる。

さて、ここまで述べてきた「体重」と「身長」は、「遺伝の影響だよ」と言われても、何とか納得もできるし諦めもつく。しかし、「頭が良い、悪い」に関する項目は、親子の複雑な思いが交錯しそうだ。

何時の時代も、学業成績が悪いと、「親からの遺伝のせい」にするか、あるいは「勉強をしないせいだ」と親に叱られるか、はたまた「その両方?」と親子で頭を抱えるか、現実問題としてどこに原因を求めるか悩ましいところである。我が家では、子供が知らないのを良い事に、私の学生時代の素行は素知らぬ顔で棚に上げ、「勉強しないせい」が9割だ、と分かった様な事を言ってきた記憶がかすかにある。では、安藤教授の研究ではどうだろうか?

「頭が良い、悪い」というストレートな調査項目は、記事には掲載されていない。代わって「知能」と「学業成績」の項目が、“グラフ1”に掲載されている。それによれば、「知能」は凡そ75%も、「学業成績」も50%強が遺伝の影響だという。言い換えると、俗に言われる「頭の良し悪し」は環境の影響よりも遺伝に因るところが大きい、ということになる。

もし、これを子供が知っていて、迂闊にも成績の事で叱ろうものなら、「僕がこの程度の成績なのは、お父さんからの遺伝のせいが大きいんだよ!」と逆切れされそうだ。そう考えると、この研究成果、子供の学業成績が悩ましい親にとって、あまり喜ばしいものではないのかもしれない。もしこの事実が一般に知れ渡ってしまうと、子供は勿論、孫にも強いことを言えなくなってしまう私のご同輩が増えたりして……。と言っても、既に新聞記事になってしまっているのだから、「時既に遅し」ではあるのだが……。

なお、上記の以外にも「神経質」や「外向性」、「自尊感情」と「抑うつ感情」など性格に関わる項目も調べられているが、“グラフ1”を見る限り、上記以外は全て環境の影響が勝っているようだ。

【文責:知取気亭主人】

  
ドクダミ
 

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