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知取気亭主人の四方山話
 

『養子縁組』

 

2012年7月18日

これまでに何回か話題提供しているので読者の中にはご存じの方もいると思うが、私達夫婦には、4人の子供がいる。20代後半から30代前半にかけての4人で、既に全員社会人として巣立っている。その4人兄弟の一番下(次男)が、養子に入ることとなった。養子先は家内の実家、養親は義弟夫婦だ。家内の実家は、どうしたことか一代置きに子宝に恵まれず、その度に養子を迎え入れている家系だ。そして、義弟夫婦がその代に当たり、心配していたことが現実になって、今回の養子縁組となった訳である。

話は3、4年前から具体化し始めていたのだが、両家ともズルズルと先延ばしを繰り返し、とうとうここまで来てしまった。今年になって、次男が「養子に行っても良いよ」と手を挙げてくれて、やっと今回の段取りとなったのだ。

15日の日曜日、お互いによく知る家族同士だが「一応けじめを付けよう」ということで、形ばかりの養子縁組の宴を催した。35度を超す猛暑の中、静岡から凡そ6時間掛け、仲人役の伯父さん夫婦と義弟夫婦が金沢まで来てくれた。我が家に初めて来た伯父さん夫婦は、静岡よりも北にある金沢のあまりの暑さに驚いていたが、そんな時候の挨拶もそこそこに、「宴までの空いた時間に、役所に届け出る書類を書こう」ということで、「養子縁組届」を記入することとなった。

養子となる次男が成人していることもあり、届け出書類はいたって簡単だ。必要事項を記載したくだんの「養子縁組届」と、後は養子と養親双方の「戸籍謄本」と「住民票」を添付するだけである。「養子縁組届」の記載内容もいたって簡単だ。養子と養親そして証人2人、それぞれの氏名、生年月日、現住所、本籍を記入・捺印すればお仕舞いだ。印鑑も実印でなく認印で良いというから驚きだ。したがって、当然のことながら印鑑証明も必要ない。証人となる要件も、厳格な縛りは無いらしく、私と伯父さんで事足りる。次女から手続きは簡単だと聞いていたものの、「本当にこれで良いの?」と拍子抜けするくらいあっさりとしているのだ。次女ではないけれど、「これでは、知らない間に養子にされ、保険金殺人などの事件に巻き込まれても不思議は無いな」と変なところで感心してしまった。

尤も、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」があって、「普通養子縁組」に当たる今回のケースは手続きが簡単になっているらしい。それに比べると、幼児などを養子に迎える「特別養子縁組」は、ずっと厳格なのだという。それでも、養子縁組の基本的な規定は、次の5項目だけで、至って簡潔だ。

(1)養親は成人に達していること。未成年者の場合は、結婚していること。
(2)養親は養子よりも年上であること。
(3)養親と血のつながりのある、祖父母やおじさん、おばさんを養子にはできない。
(4)未成年者を養子にする場合は、夫婦2人とも養親になる。
(5)既婚者が養子になったり、養子をとったりする場合は、配偶者の同意が必要。

読めば、どれもこれも規定されて当然な項目ばかりだ。中でも(2)と(3)は至極当然過ぎて、思わず笑ってしまった。「“養子”には“子”という字が付き、“子を養う”という意味にも通じるのだから当たり前だろう」と私などは思ってしまうのだが、金の亡者にもなると、あの手この手を使ってお年寄りを騙し、財産目当ての違法養子縁組を画策するのだろうか。それとも、こんな規定を作る以前に、そんな事件があったのだろうか。そんな要らぬ詮索をしてみたくなる、余りに当たり前の項目だ。尤も、一時メディアを賑わした生活保護の不正受給について、不正受給のノウハウ(?)がインターネットに堂々と載っているというから、違法養子縁組も犯罪者にとっては“当然”の範疇なのかもしれない。

それにしても、両家がズルズルと先延ばしにしてきた割には、余りに簡単な手続きで、正直拍子抜けだ。ただ、法律上の手続きなどというものは、案外こういったものなのかもしれない。とは言うものの、――親の気持ちを忖度して――次男が手を挙げてくれたことや、気になっていた今回の儀式が無事済んだことには、ホッとしている。そして、一抹の寂しさを感じているのも正直なところだ。嫁に出す親の心情に似ているのかな、とまだ果たせないでいるそんな心情に思いを重ねてみてもいる。

「幾つになっても親は親」、そんな至言を噛みしめているこの頃である。

【文責:知取気亭主人】

  
ガクアジサイ
 

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