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知取気亭主人の四方山話
 

『レッドリスト』

 

2012年9月5日

先日の8月28日、環境省から、絶滅の恐れのある野生生物のリスト、所謂レッドリストが公表された。同省の報道発表資料によれば、レッドリストは5年毎に見直されていて、今回は第四次になるのだという。リストの対象は、動物の①哺乳類、②鳥類、③爬虫類、④両生類、⑤汽水・淡水魚類、⑥昆虫類、⑦貝類、⑧その他無脊椎動物(クモ形類、甲殻類等)の8分類、植物では⑨植物Ⅰ(維管束植物)、⑩植物Ⅱ(維管束植物以外:蘚苔類、藻類、地衣類、菌類)の計10分類群である。今回の報道発表は、その中から⑤汽水・淡水魚類を除く9群について取りまとめられている。そしてその内容に、ショックを受けている。

昨年に続く今年の夏の異常なまでの暑さにこれほど苦しめられると、地球環境の悪化はもう疑う余地がない。これ程までの急激な環境変化は、多くの野生生物にとって、環境に適応しようとする進化のスピードを遥かに凌いでおり、生き地獄に違いない。地球温暖化で生息可能域が増える生物もいることはいるが、殆どの生物にとっては、適応できる地域は明らかに減少している。

適応できる地域・環境が減れば、当然絶滅への一本道を辿ることになる。ただ、一気に「絶滅」と判断される訳ではなく、階段を一段一段上るように、危険度(ランク)が増していく。下の表は、レッドリストを作るにあたって、環境省が定めたカテゴリー(ランク)の概要だ。この表に沿ってカテゴリーが決められる。

さて、今回の発表によれば、“絶滅危惧種Ⅰ類(CR+EN)”、及び“絶滅危惧種Ⅱ類(VU)”に選定された、所謂「絶滅のおそれのある種」は、3430種となり、第三次リスト(平成18年〜平成19年公表)の3011種から419種も増えているという。特に、昆虫類や貝類に増加が多く見られた、としている。貝類が増えたのは評価対象の拡大もあるらしいが、これだけ絶滅危惧種が増えたという事は、日本の自然が、野生生物にとって依然厳しい生存環境である事を如実に物語っている。

そんな中で、以前からその生存が取り沙汰されていた「ニホンカワウソ」がとうとう“絶滅(EX)”と判断され、“絶滅の恐れのある地域個体群(LP)”のカテゴリーに入れられていた「九州地方のツキノワグマ」も、「既に絶滅している」と判断されリストから削除されてしまった。この他、「ダイトウノスリ」という猛禽類も、“絶滅(EX)”と判断されている。

こういった、これまで一縷の望みを掛けていた生物が「絶滅」の判断が下されたことに対し、関係者や地元の人達の落胆の様子が報道されているが、その心情は良く分かる。しかし、これらに関しては、長年目撃情報が無かったというから、ある程度予測されていたことでもある。ところが、次の生物に関しては、そんな危ない状況にあるとは露ほどにも思っていなかっただけに、正直ショックを受けている。その生物とは、ハマグリだ。「その手は桑名の焼き蛤」とシャレにも使われた、あのハマグリである。

ハマグリは、子供達がまだ小さい頃に、海水浴に行ってはアサリやバカガイと共に良く取った貝だ。 “この手”と“この足”には、 15年ほど前の当時の感触がまだ残っている。あれから取りに行ってはいないが、こんな僅かな間に“絶滅危惧種Ⅱ類(VU)”にリストアップされてしまうとは驚きである。

ハマグリと言えば、浜焼きやバーベキューの定番、と言うほど身近な貝だ。そして、魚屋さんに行けば今でもよく目にすることが出来る。なのに、絶滅危惧種だというのはなんだか腑に落ちない。ところが、報道発表資料によれば、国内で流通しているものの多くは、中国や韓国から輸入されている外来種だというのだ。日本固有種のハマグリは、1970年代の5〜20%まで落ち込んでしまっているらしい。このままいくと、白碁石は勿論、バーベキューの人気メニューからも姿を消す日が近いのかもしれない。

この様に、誠に残念なことに、日本における野生生物の“絶滅種”も“絶滅危惧種”も増えてきている。当然、環境の悪化は日本人の足元にも忍び寄ってきている。しかし、人間の生存に関わる環境変化は、長い時間を掛けて徐々に徐々に影響を及ぼすため、人間が持つ都合の良い鈍感なセンサーでは察知できそうもない。残念だが、こういった絶滅が危惧される野生生物をセンサー代わりの指標として、忍び寄る危機を感じるしかないのが現実だ。

レッドリストから横道にそれるが、5月25日の朝日新聞朝刊に、「定期点検のために停止している関西電力高浜原子力発電所近くの湾内で、南方系の魚介類が衰弱・死亡していることが、研究者の調査で分かった」との記事が載った。湾内で取水され冷却用として使われた後、戻されていた海水――取水時より6〜7度も高くなった温排水――が止まり、海水温が下がった影響とみられている。これなども環境変化が急激に行われた極端な例だが、移り住んだ南方系にとっても、元々生息していた魚介類にとっても、迷惑千万な話である。

そうかと思うと、環境が改善されたため魚介類の漁獲量が減り続けている、という嘘のような話もある。因果関係はまだ疑問符付だが、「漁獲量の減少は、瀬戸内海で続けられた工場排水制限や下水道整備によって、植物プランクトンを育てる窒素やリンなどが減り過ぎたことが一因だ」とする研究者もいるという。海に供給される川の多くが、野山を浸透した水ではなく、アスファルトの上を流下する水に支配されている様では、栄養塩の減り過ぎも分からないでもない。因みに、汚れているとばかり思っていた大阪湾も、その透明度が3mから6mに改善された、というから驚きだ。なんだか、「白河の 清き流れに 魚絶えて 昔の田沼 今ぞ恋しき」の狂歌に似ているが、瀬戸内海にとっての「昔」が江戸時代なのか、あるいは昭和の高度成長時期に当たるのかを良く考える必要がある。

いずれにしても、高浜原発の話も瀬戸内海の話も、人様のその時の都合で勝手に環境が変えられた典型的な例だ。そこに生息している生物にとっては、全くもって迷惑な話なのである。環境の変化が生物に及ぼす深刻な影響は、今のところまだ人間の手前で留まってはいるが、いずれ我々の生存が脅かされる時が訪れはしないか、気がかりである。我々は、その光景を成す術もなく見ている事しかできないのだろうか。人間そのものがレッドリストに載らないためにも、もっともっと環境負荷の少ない生活が求められている。

なお、レッドリストは環境省のホームページ( http://www.env.go.jp/ )からダウンロードできる。

【文責:知取気亭主人】

  
モリアオガエルは、今のところリストアップされていない
 

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