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知取気亭主人の四方山話
 

『しきたり』

 

2012年9月19日

ある地域や国に伝えられている伝統文化は、受け継いだ今を生きる人達が大事に守り続けていかないと、やがて人々から忘れ去られる運命にある。残念な事に、そういった運命に曝されている伝統的な文化や風習が、日本には沢山ある。

人口の流出で出来なくなった村祭り等はその最たるもので、少子高齢化が叫ばれて久しい日本では、探せば至る所にあるだろう。また、昭和の時代までは各家庭で作られていた“おせち料理”も、最近ではインターネットで注文が出来るようになり、母から娘へ、あるいは姑から嫁へと受け継がれてきた日本の伝統文化と家庭の味が、俄かに怪しくなって来た。伝統文化に経済活動と同じような効率化や手軽さを求めてしまうと、軽んじられてしまうことは目に見えている。それは、伝統文化というものが、総じて「面倒だな!」と感じてしまう“しきたり”が結構多いからに他ならない。しかも最近では、伝統文化関連の商品を扱う店の方で万事取り仕切ってくれることが多く、そういった“しきたり”を知らなくても困ることはあまりない。しかし、“しきたり”の意味合いや当時の時代背景を良く知らないと、とんだ恥を掻き、「常識が無いね!」と一刀両断されてしまう場合もある。

15日の土曜日、或るお宅への手土産を買いに、近くの店に行ってきた。次男の婚約がほぼ整い、次の16日に先方のお宅に挨拶に行くことになっていて、その時持参する手土産だ。「御目出度い席へのお土産」ということもあり、「相応しい菓子はあれだ、これだ」などと見て回りながら、菓子処金沢ならではの華やかな和菓子に決めた。そして、「熨斗(のし)はどうしますか?」と質問された。

挨拶に行く事の次第を簡単に説明すると、「結び切り」で良いですねという。“水引”に色々な形があることは多少知っていたが、呼び名は知らなかったので、「結び切り」ってどんなんですか、と聞いてみた。すると、「婚礼などに使う熨斗は、“解けない様に”という意味を込めて結び直しのできる蝶結びではなく、結び切りという水引の形を使うのですよ」と説明してくれた。「成る程」と納得して帰ったのだが、まさか次の当日もこの熨斗紙でひと騒動になるとは思ってもみなかった。

「結び切り」を知ったその日の夜、次男が養子に入った義弟夫婦が我が家に着いた。遅い食事をしながら、明日の打ち合わせをしていると、彼らが持参したお土産に熨斗紙が付いていない事が分かった。「一応改まった席だから、熨斗は付けないと失礼だろう」と話がまとまり、明朝、熨斗紙を買いに行く事となった。

朝になり、コンビニを数軒回ったのだが、どこにも売っていない。祝儀袋や香典袋等の熨斗“袋”は置いてあるのだが、熨斗“紙”は無い。店員に聞いても扱っていないという。さてどうしたものか、と運転しながら思い悩んでいると、大手スーパーが店開きしているのが目に入った。どうやら、たった今開店したらしい。

生活用品売り場に急ぎ商品棚を探すと、有りました、ありました。熨斗紙が数種類並べられている。しかし、良く見ると、「結び切り」がない。全て「蝶結び」だ。店員に聞くと、「これしかない」という。ここでなければ仕方がないな、と諦めかけたのだが、「もしや?」と思いサービスカウンターに行って聞いてみた。すると、我々の願いを聞き届けてくれたのか、「結び切りもありますよ」という嬉しい答えが返ってきた。ただ、水引の本数が5本と10本があるという。どう違うのかと聞くと、正式に婚儀が整った時に10本、そうでないその前の段階の時は5本のものを使うのだという。またも初めて聞く事だ。ここでも、今日の挨拶の目的などを話し、結局5本でOKということになったのだが、お蔭で、手土産として恥ずかしくない体裁を整えることが多分出来た、と思っている。無理なお願いを聞いてくれた店員に感謝、である。ただ、帰ってきて調べてみると、水引の本数が5本とか10本というのは、どうも判然としない。そんな説明が出てこないのだ。

「日本人のしきたり」(飯倉晴武著、青春出版社)を読んでみると、「一般的に」という但し書きは付いているものの、慶事の時は3本または5本にして使い、弔事の時は2本または4本にして使う、と記されている。何度読み返しても、10本は出てこない。また、買い求めた「蝶結び」と弔事用「結び切り」の熨斗紙に印刷されている水引の本数を数えてみると、7本になっている。この本数も、本には出てこない。一体、どうしたことだろう?

考えるに、印刷のなせる技なのかもしれない。印刷ではない本来の紙紐の水引を使った場合、本数が増えれば増えるほど手間暇がかかる。しかも、3本や5本でも十分華やかさが表現できる。ところが印刷になると、ボリューム感が表現できない為、5本でも何となく貧弱に見えてしまう。そんな欠点を補う為に本数を増やしたのではないか、しかも印刷なら簡単に増やすことが出来るから、と推察するのだが如何だろうか。それとも、地域性があるのだろうか。勝手な想像は楽しいのだが、水引の本数が持つ意味は、分からないままだ。読者の方でご存知の方がいたら、ぜひ教えて頂きたいものである。

ところで、水引の結び方には、「蝶結び」や「結び切り」の他に、「両輪結び」や「あわび結び」という呼び名のものもあるそうだ。興味を持たれた方は、「日本人のしきたり」を読まれると良い。他の“しきたり”についても書かれているので、「常識が無いね!」と一刀両断されることは多分ないだろう。

【文責:知取気亭主人】

  
 

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