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知取気亭主人の四方山話
 

『浮世の憂さは笑い飛ばせ!』

 

2012年11月28日

遅々として進まない3.11東日本大震災の復興を筆頭に、来年度の予算編成を無視するかのような衆議院の解散・総選挙、中国、韓国、あるいはロシアとの領有権争い、一向に解決の兆しが見えない拉致問題、はたまた先行き不透明な世界経済問題など、身の回りには気の滅入る様なニュースに溢れている。しかし、こういった大きな問題は、ダイエットの様に、一個人の努力で解決できるものではない。そんなことは頭では分かっているのだが、何とかしたいと思えば思う程、期待して投票した政治家がその期待を見事に裏切ったり、分裂・合併を演じている――白洲次郎が言ったところの――プリンシパルなき混迷ぶりを見せつけられたりすると、言うに言われぬ妙な苛立ちを覚えてしまう。

苛立ちを覚えるのは、政治の混迷だけが原因ではない。「デフレ、デフレ」と毎日メディアに登場する政治家が連呼しているように、日本自体の経済が長い間停滞していることも原因している。経済が好調でないと、その責任を政治に求めるのは世界共通だ。しかも、メディアは、こぞって先行きの暗い話ばかりを取り上げ、不景気風を煽る傾向にある。煽られれば、一般市民は将来に対して不安感を持つのが通りだ。その上現実の生活が厳しくなって来ると、大多数の人が、大なり小なり社会に対し“浮世の憂さ”を感じることになる。

また、極普通のヒトは、そういった国家を論ずる大きな問題だけに限らず、他人には分からない“憂さ”も合わせ持っているものでもある。所謂、知られたくない個人的な悩み、というやつだ。そして、それも結構多く抱えている。私も例に漏れずで、一人孤独に悶々とする悩みがある。ウェルテルほど若くはないが、これでも、悩み多き人生を送っているのだ。「どんな悩みか」ですって? 沢山ある中から差し支えないものを、幾つか紹介しよう。ただし、他人には内密にお願いしたい。

実は、これまでよく使っていた筈の言葉がスムーズに口をついて出てこない時が、少しずつ増えてきたのだ。加齢の症状としてよく言われる「他人の名前が出づらい」という症状は、自慢ではないが、とうに発症している。それについてはもうベテランだ。そういった初期の症状ではなく、日常会話では然程頻繁に登場しない言葉ではあるが、記憶の引き出しから引っ張り出すときに、時々引っ掛かってしまうようになって来たのだ。思い起こせば2年程前からだ。言いたいことが頭に浮かんでも、それを的確に表現する言葉が思い出せない。私と話をしていて、「日本語が出てこない」と言っているのは、そんな時だ。

大きな声では言えないが、出にくくなったのは言葉ばかりではない。その何と言うか…、悲しいかな、大事なトコロから出る食事や飲んだ液体などの滓の勢いが少しずつ衰え、「往時が懐かしい!」と感じる事が増えてきたのだ。それと、夜中にトイレに行くようになったのも、気掛かりと言えば気掛かりだ。

どれもこれも、経験のない若い人にとっては、一笑に付される他愛もない事柄だ。しかし、私にとっては、どれもこれも初めて経験する事ばかりだ。必然的に、初体験する度に小さな悩みが一つ増え、二つ増え、今では結構“憂さ”に囲まれて生活しているのである。

こんな種々雑多な浮世の憂さを何とか払いたいものだと思っていたら、本をネット販売している会社のメールサービスで、面白そうなタイトルの本を見つけた。タイトルからして、私好みの“笑わせてくれる本”に違いない。「シルバー川柳 誕生日 ローソク吹いて 立ちくらみ」(社団法人全国有料老人ホーム協会+ポプラ社編集部編、株式会社ポプラ社刊)という、長ったらしいタイトルの本だ。タイトルが長いのは、本に収録されている川柳の一編をそのまま使っているからだが、そのタイトルを読んだ瞬間に、この本を読めば“憂さ”の一つや二つ直ぐに晴らしてくれる、と予感させてくれたのだ。

その日のうちに買い求め、直ぐに読んだ。予想通りの面白さだ。これを一人きりで楽しむ手は無いと、次の日家族に見せた。思った通り、家内も次女も大きな声を上げて笑ってくれた。そして、余程気に入ってくれたのだろう。家内は、その日の内に隣の奥さんを連れて来て、嬉しそうに見せていた。面白い本だとの触れ込みで連れてこられ、「どれ程のものだろう?」と疑心暗鬼だったに違いないが、読み始めて直ぐに、腹を抱えて笑い出した。

解説も何もなく、一頁に一編の川柳しか書かれていない本なのだが、頁をめくる度に、「そうそう!」とか「分かる!」などの独り言を言いながら、大笑いをしている。涙を流しながら大喜びしている姿を見ていたら、こちらまで中身を思い出し可笑しくなって来た。自分の憂さを晴らすために買ってきた本で、こんなに喜んでくれるとは思ってもみなかった。思った以上に、“憂さ晴らし”の効果はありそうだ。これなら、一瞬だけかもしれないが、抱えた“憂さ”を忘れさせてくれるに違いない。

憂さを沢山お持ちの皆さん、どうぞ手にとって、腹を抱えて笑ってください。笑う門には福来る、と言うではないですか。笑えば来年は良い年になりますよ!

どれ、私ももう一度笑わせてもらうとするか!

【文責:知取気亭主人】

  

 

『シルバー川柳 誕生日ローソク吹いて立ちくらみ』

【著者】
全国有料老人ホーム協会/編
ポプラ社編集部/編


【出版社】 ポプラ社
【発行年月】 2012年09月
【ISBN】 978-4-591-13072-8
【サイズ】 19cm x 12cm
【ページ】 124ページ
【本体価格】 \1000(税込)
 

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