いさぼうネット
賛助会員一覧
こんにちはゲストさん

登録情報変更(パスワード再発行)

  • rss配信いさぼうネット更新情報はこちら
知取気亭主人の四方山話
 

『出でよ!今竜馬!』

 

2013年1月9日

年末年始は、酒好きにとって堪らない時期だ。大手を振って飲むことが出来るし、正月気分に浮かれ何時にも増して気分良く酒が進む。「以前に比べると随分減ったな」と実感しつつも、今年もまた、休みの期間中毎日ほろ酔い気分に浸ってしまった。「酒の無い 国に行きたい 二日酔い また三日目に 帰りたくなる」の狂歌ではないが、酒飲みは、どうも飲むことに関してだらしなくていけない。勿論、私も例に漏れず、である。

そんな状態であるから脳が覚醒しているのか甚だ心配ではあるのだが、例年正月休みは、グラス片手に読みかけの本を読んだり、一年の計画を立てたり、仕事の準備をしたりしている。ただ、酔いが回ると、区切りがつかなくてもそのまま寝てしまう。そんなところが酒飲みの酒飲みらしさではあるのだが、御蔭で、文字として書き残すことの少ない読書は、余程面白い内容でないと記憶に残ることはまず無い。ところが、今年は、酒を飲みながらでも記憶に残る面白い本を読むことが出来た。これもある仲間のお蔭だ。

前置きが多少長くなるが、私がその本を手に取った経緯を説明しておこう。年の瀬も押し迫った昨年の暮れ、会社の仲間がある本を持ってきた。さる会社の社長から頂いた本だという。四方山話のネタに困っているという話を聞いているからこの長休みに読んでみたらどうか、という。彼の話しぶりからして、どうやら本音はもう少し先にあるらしいのだが、ネタ探しに苦労していることは本当だし、本のタイトルも気になったので、正月休みに読むことを約束して、貸してもらうことにした。そして、グラス片手に…、となった訳である。その本のタイトルを「目を覚ませ日本! 21世紀の竜馬よ!」という。

「坂本竜馬財団」という至極分かり易い名前の財団が高知にある。随分前に設立されたと思いきや、昨年(2012年)の4月に産声を上げたばかりらしい。その設立間もない「坂本竜馬財団」のメンバーが中心となって、台湾・李登輝元総統の快気祝いに台湾を訪れた時の表敬訪問記が、くだんの本である。副題に「台湾・李登輝元総統“魂(こころ)”の提言」とある。表敬訪問の経緯は本を読んで頂くとして、李登輝元総統と財団との繋がりが坂本竜馬である事はお察しの通りだが、「元総統は熱烈な坂本竜馬信奉者で台湾竜馬会の名誉会長でもある」と書かれていて、そんじょそこらの龍馬好きではないらしい。日本人としては、有難くも嬉しい話である。

さて本の内容であるが、少々一般的な本と異にしていて、李登輝元総統の講演録(第一部)と訪問団メンバー35人の表敬訪問記(第二部)からなっている。したがって、講演録以外は統一された視点で書かれている訳ではなく、35人の感じ方や表現の仕方が少しずつ違っていて、皆それぞれ個性的である。ただ、竜馬が大好きなこと、そして今回の表敬訪問で李登輝元総統に心酔してしまったことが、どの文章の根底にも流れていて、表現などに統一性は無いけれど、全員から同じ“熱い思い”がひしひしと伝わって来た。これは稀有な事である。如何に竜馬や李登輝元総統が慕われているかが窺える。

今回の表敬訪問で初めて李登輝元総統にお目に掛かった方も沢山いたようだが、たった一度の交流で人を虜にしてしまうとは、余程人間的魅力に溢れているのだろう。それに比べ、これだけ敬愛されている竜馬や李登輝元総統を羨ましく思ってしまうのだから、スケールの小さな自分が恥ずかしくなってくる。

竜馬は日本人なら誰もが知っていて、テレビや映画、或いは小説で度々取り上げられている事からも分かるように、彼を好きな日本人は沢山いる。しかしながら、外国である台湾に「台湾竜馬会」が作られていて、龍馬の考え方や生き方が海外にまで影響を与えていることには驚かされる。その上、その名誉会長にその国のトップに上り詰めた人が就任しているとは、その方がいくら京都大学に学んでいたとはいえ二重の驚きである。余程竜馬に関し勉強されていて、学ぶことが多かったのだろう。嬉しい限りである。

そんな竜馬好きな李登輝元総統は、講演の中で、今の日本を憂い、「日本はね、新しい竜馬を見つけないといけない」と熱く語っていたという。また、日本の政治家を見ていて、「大臣になりたくてなった大臣ばかり」と看破していたらしい。私も同感だ。「“台湾革命”は坂本竜馬の船中八策と大政奉還をイメージして成し遂げたんですよ」と語ったという彼からすれば、今の日本は歯がゆくて仕方がないのだろう。正に「出でよ!今竜馬!」の心境に違いない。全くもって同感である。そんな、李登輝元総統の講演録は、頷きながらあっと言う間に読ませてもらった。

ともかく、読みやすい。そして、不思議な本である。魅了する場面がある訳ではない。また、息をのむ様な展開がある訳でもない。ただ、李登輝元総統と35人の人間性がそうさせるのか、読後が極めて爽やかになる本である。正月ボケの脳を活性化するのにうってつけの本だ。「どうしても」という方には、グラス片手に…、も可能な本である。

なお、李登輝元総統は、昨年の6月に「日台の心と心の絆〜素晴らしき日本人へ」という本を上梓したという。私自身読んだことは無いが、きっと日本人へのエールなのだろう。3.11東日本大震災に対し世界最多の義援金を贈ってくれた台湾元トップの日本に対する熱い思いを読み取って、自信を取り戻し、日本を洗濯するための勇気を貰うのも、一年のスタートとして相応しいことかもしれない。

【文責:知取気亭主人】

  

 
目を覚ませ日本!21世紀の龍馬よ!
台湾・李登輝元総統“魂”の提言
「坂本龍馬財団」李登輝元総統快気祝い表敬訪問記


【出版社】 坂本龍馬財団
【発行年月】 2012年11月
【ISBN】 978-4-88255-145-4
【サイズ】 縦18cm
【ページ】 234ページ
【本体価格】 \1000(税込)
 

Copyright(C) 2002- ISABOU.NET All rights reserved.