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知取気亭主人の四方山話
 

『孫に学ぶ心理学』

 

2013年1月30日

1月10日、長男夫婦に二人目の子供が生まれた。私たち夫婦にとって二人目の孫となる、元気な男の子だ。帝王切開だったこともあり自然分娩よりも少し長く入院していたのだが、19日の土曜日、母子共に我が家に帰ってきた。我が家の家族全員が楽しみに待っていたご帰宅である。楽しみにしていたのは、大人ばかりではない。先に生まれた2歳4ヶ月になる初孫の長女も、首を長〜くして待っていた。それは、彼女の様子を見ていれば、痛いほど良く分かる。待っていたのは、勿論、恋しいママである。

帰ってくるなり、初孫の様子が変わった。予想はしていたが、これまでとは違う見事なまでの甘え方である。当人を除く家族全員が予想していたことでもあり、我々が特段驚いている訳でもないのだが、これほどまで我慢していたのかと思うと、逆にその幼気振りが可哀そうになってしまう。兎に角、今は両親べったりなのである。しかし、家内からレクチャーを受けていたこともあってか、長男夫婦も上手に対応をしている。加えて、後ろでデンと構え控えている家内の存在も、孫娘にとってはとても大きい。それに比べると、これまで多少なりとも「おじいちゃん」と言って甘えていたあの時はどこへやら、私は少々寂しい事になっている。

観察をしていると、幼いながらも既に赤ちゃんを弟だと認識しているらしく、寝ているところに近づき名前を呼びながら体を触る仕草は、とても優しくて愛らしい。ところが、それと自分が甘えるのは別のことらしく、ママが赤ちゃんを抱っこしていると、家内に赤ちゃんを抱くよう指示し、空いたママの膝にチャッカリ座ることもあるという。どうやら、「オッパイをやるのは仕方ない」と諦めているようなのだが、それ以外は自分を優先して欲しいらしい。勿論、そういった欲求も可能な限り叶えてやっている。

ただ、夜寝る頃になると、ママと赤ちゃんが2階に行ってしまうのが寂しいのか、なかなか寝ようとしない。体は眠いのに、である。そして、俗に言われる駄々をこねるようになってきた。またあるときは、父親のスマートフォンでお気に入りの歌を聞いていて、突然大粒の涙を流しながらしくしくと泣き出した。何がそうさせたのかは良く分からなかったが、そんな姿を見ていると、一層愛おしくなる。長男の後日談だと、映像の中の動物の主人公が可哀そう、と言っていたらしい。十分甘えられない自分と重ねた可能性もあるのだが、豊かな感性が芽生えている事だけは確かだ。こんな風にして、周りと関わりながら、少しずつ人格は形成されていくのだろう。

 

人格と言えば、心理学者のアブラハム・マズローが提唱した5段階からなる「欲求階層説」の人格理論が、良く知られている。次の5段階だ。

 

第1段階:食べたい、寝たいなど生きていくための本能的欲求、「生理的欲求」

第2段階:危険に曝されず安全・安心な暮らしがしたい、という「安全の欲求」

第3段階:集団や社会に所属・適合し、仲間との愛情・友情を充足したい「社会的欲求」

第4段階:自分の能力を認められたい、尊敬されたい、という「尊厳の欲求」

第5段階:自分のビジョン(夢)を実現させたい、という「自己実現の欲求」

 

二人の孫を見ていると、この欲求階層説に良く当てはまる行動をしていることに気付く。赤ちゃんが「おなかが空いたよ」と泣くのは、「生理的欲求」によるものだ。授乳期を過ぎた幼児が人見知りするのは、第2段階の「安全の欲求」がそうさせるのだろう。我が家の初孫がママにべったり甘えるのは、愛情を充足したいという「社会的欲求」が芽生え始めているからに違いない。

マズローは、第4段階までを外に満足を求める低次の欠乏欲求、第5段階を内的な満足を求める高次欲求と定義した。しかし、低次だからと言って子供だけが、また逆に高次だからと言って大人だけが持っている訳ではない。それも、幼い孫を見ていると良く分かる。第3段階までは先に述べたとおりだし、第4、5段階の欲求も既にその片鱗を見せている。

褒められると同じ行動を繰り返すのは、第4段階の証だろう。また、何でも大人の真似をしたがったり、自分のやりたいことを完遂しようとしたりする行動は、第5段階の芽吹きと考えれば合点がいく。まだ3歳にもならない小さな幼児でも、既に人格形成が始まっているのだ。この様に考えると、人格形成においては、幼児期から青少年期の大人の接し方がいかに大事か分かる。したがって、人格形成に悪影響を与えるような接し方は、手本となる大人として、厳に慎まなければいけないと思う。そう考えた時、地方公務員の退職金削減問題で、生徒を置いてけぼりさせた格好で早期退職していった先生達は、子供達にどのような影響を与えるのだろうか。

 

今メディアを賑わしている先生達を始めとする公務員の早期退職問題は、人それぞれ状況が違うから一概に言えないものの、「お金に困らない安心できる暮らしがしたい」という「安全の欲求」からくる人が圧倒的に多いのだろうと思う。勿論、制度にも問題がある。しかし、生徒は先生を選ぶことができない。卒業式や終業式を目の前にして、学校を去る先生の行動は、残された生徒の心にどんな手本として残ったのだろうか。心配である。

教師になるためには、「発達心理学」等を学ぶ筈である。早期退職した先生の中には、教頭や担任を持った先生もいると聞く。また昨今は、破廉恥な罪を犯す先生も多い。そんなこんなを考えると、生徒の心模様が読み解ける、そんな心理学を今一度学び直してもらいたいものである。

【文責:知取気亭主人】

  

 姉ちゃんの 心知らずや スヤスヤと
 

 

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