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知取気亭主人の四方山話
 

『大切にしたい自然のリズム』

 

2013年2月6日

これまで度々「区切りの…」と書いてきた500話に、とうとう到達した。この拙文が丁度その節目の500話目なのだ。内容の良し悪しは別にしていただいて、ともかく足かけ10年に亘る駄文の積み重ねの成果である。この“500”という数字ですぐ浮かんだのが、プロ野球選手のホームラン数だ。ついこの間引退表明した松井氏が日米通算で500本を超えていたというニュースが記憶に残っていたこともあったのだが、日本での500本越えは、868本の王氏を筆頭に、松井氏を加えても9人しかいない。凄い記録なのだ。そう考えると、ホームランより遥かに楽な作業だが、チョッピリ自分を褒めてやっても良いかな、と思ったりしている。「そこで」と意気込むほどの事でもないのだが、ついでにご褒美もやることにして、久し振りにグラス片手に書く事にする。何の脈略も無いが、暦の上では4日の立春で今年の春がスタートしたことだし……。

さて、グラス片手にキーボードを叩く500話目のテーマは、我々生物が生きていくために体に刻み込まれている、自然のリズムについてだ。

先日、奈良県立医科大学の研究グループが「夜間に豆電球を点けて寝ると肥満や脂質異常になるリスクが高くなる可能性がある」との研究論文を発表した、とニュースで報じられていた。夜間照明と体のリスクについては、これまでにも、夜間労働者に肥満や脂質異常症が多く心血管疾患のリスクが高いことが、報告されていたらしい。そのリスクの要因の一つとして、夜間光を浴びることによってサーカディアンリズム(生体の既日リズム)と呼ばれる体のリズムに変調をきたすことが考えられているというのだ。研究では、528名の高齢者の自宅に照度センサーを設置して、夜間曝露照度が平均3ルクス以上(家庭用豆電球程度の明るさ)の群と、平均3ルクス未満の群とに分け比較したところ、前者に肥満症や脂質異常症の割合が1.9倍も多いことを確認したという。豆電球のような極僅かな明かりでも、生体リズムがおかしくなり肥満症になり易い、とは驚きである。

また、研究グループは、日中光曝露が多いほど夜間メラトニン分泌量が多いことを明らかにしているという。メラトニンは、生体リズムの調整のほか、不眠症、うつ病、認知症、癌、高血圧などを予防する効果が報告されているホルモンで、夜間に分泌されるのだという。つまり、これらの研究成果をまとめると、日中は太陽の光を浴びて仕事をし、早寝早起きを心がけて、寝るときは電気を消し暗くして寝るのが、健康的で本来持っている生体リズムに適った生活スタイルだと言える。

確かに、これだけ自由にコントロールできる明かりを手に入れていなかった100年ほど前までは、不眠症やうつ病などの現代病は遥かに少なかったに違いない。今に比べると、栄養不足や医療が未発達であったことから、平均寿命は遥かに短かったものの、逆に現代人よりもずっと自然のリズムに合った生活をしていたのだろう。「元々ヒトは自然の中に生かされているのだ」と考えれば、自然のリズムに合わせた生活をするのが、一番無理がないのは道理である。

しかし、ヒトの底知れぬ物欲は、生来持っている生体リズムを無視し、夜の闇をもコントロールし始めている。その因果として、現代病と名付けられた病気と闘う羽目になって来ているのだろう。複雑な人間関係が織り成すストレス社会であることに加え、このように生体リズムに合わない生活を送ることにより、確かに現代病リスクは高まっているように感じられる。それでは、物言わぬ植物はどうなのだろうか。宇宙から見た地球の明かりの凄まじさを見れば、同じように生来のリズムが狂わされていても不思議はない。季節外れの開花ニュースが増えてきているのは、温暖化ばかりでなく、そのせいもあるのではないだろうか。

夜間照明をすることに拠って開花時期をコントロールしている例として、電照菊が直ぐ思い浮かぶが、菊にとったら迷惑な話である。とは言っても、このように観賞用の花の開花時期をコントロールしている事例は、花の生涯の全てにヒトが携わっているからまだ良い。ところが、年末年始の一時期だけ、しかも彼らにとったら環境としては決してよろしくない街の真ん中で、望みもしない明かりで飾られるのは、大変な苦痛ではないかと心配になってしまう。私が要らぬ心配(?)をしているのは、電飾で飾られた街路樹たちである。

クリスマスの頃になると、至る所で“光のオブジェ”と化した街路樹がお目見えする。ヒトの体に生体リズムがあるように、イヤそれ以上に、街路樹たちにも生体リズムがある筈である。そのリズムが狂いはしないか、と心配しているのだ。ヒトにとっての豆電球ではないが、太陽光に比べれば微々たる光量であっても木肌に直接くっつけられたら、やはり影響は逃れられないのではないだろうか。

しかし、道行く人は“光のオブジェ”に見とれるばかりで、街路樹を気遣う人は少なさそうだ。下の写真に添えた街路樹の独り言ではないが、「“樹命”が縮んでしまう!何とかして!」の叫びが聞こえてきそうである。

【文責:知取気亭主人】

  
街路樹の独り言
「“樹命”が縮んでしまう!」

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