2013年2月13日
ここだけの話だが、先日家内からとんでもないプレゼントを貰った。これが公になると振り込め詐欺グループの標的にされかねない、そんな大層なプレゼントである。貰った瞬間満面の笑みとなったのだが、少々複雑な思いもしている。そんなプレゼントとは……。
2月14日は、皆さんご存知の通りバレンタインデーである。何時の頃からこんなに華やかに催されるようになったか知らないが、ともかく、巷では“本命チョコ”だの“義理チョコ”だのと、上手いネーミングと逞しい商魂に踊らされ、お菓子売り場はどこもバレンタインデー一色だ。恐らく、今は年に数回しかないチョコレート菓子の稼ぎ時である。それにしてもこの一大イベント、若いカップルや職場でのやり取りとばかり思っていたら、最近は“お礼チョコ”と呼ばれるものまで登場して、お祖父ちゃんを始め父親や兄弟など家族にプレゼントする習慣も浸透してきているらしい。と思ったら、私の全くの思い違い、読み違い。良く似た文字の「お札チョコレート」であった。家族の査読で指摘され、気がついた。危うく大失態をしでかすところだった。しかし、チョコメーカーのあの手この手の盛り上げ方は本当に上手い。踊らされる方としては、脱帽である。
とは言うものの、私も以前から、“義理チョコ”の範疇に入っていたであろうプレゼントを、家内や娘から貰っていた。そして“今年も”頂いた。ただ今年は、初めて「お礼チョコ」、ではなく「お札チョコレート」と印刷された商品を貰った。しかも、驚くことに100万円の札束だ。そう、「とんでもないプレゼント」とは、福沢諭吉先生が印刷された、大きさも厚さも(多分)本物そっくりの、札束箱入りチョコレートのことだ。
面白いプレゼントを用意してくれたものである。どうやら、私が甘いものは苦手でもお金には目が無いことを、家内はどうもお見通しらしい。そして、「何時もお仕事お疲れ様、“本当に気持ちだけだけど”これで美味しいお酒を飲み、美味い物を食べたつもりになって!」という、“優しい意図”があったのかもしれない。しかも、長男も次男も私と同類と見たのか、同じものを買ってきたという。しかし、どこから工面したのか、100万円の札束とは豪勢だ(?)。「実際の買い物に使うと警察沙汰になってしまう」という厄介なことがあるとはいえ、福沢諭吉の顔を見ていると何となく頬が緩んできてしまう。やっぱり、浅ましいところは隠せない……。
そんな私の深層心理はさておいて、「どうせバレンタインもある種のお祭りだから、遊び心のあるやつを」と選んだであろう家内に、“あっぱれ”をやろう。ただ、私は家内と違って甘い物が苦手なのを、付き合いも結構長いし、知っている筈なのだが……。ひょっとして、「貰って喜ぶのは貴方、食べて喜ぶのは私」と、買った時から決め込んでいたのかもしれない。恐るべし、甘党の深謀である。
オット、また得意な妄想が始まってしまった。そんな妄想は忘れ、話を元に戻そう。中身が判らないように包装されたビニール袋を破ると、懐かしい福沢諭吉の顔が現れた。しかも厚みがある。こんなにインパクトがあるものは、見てしまうともうだめだ。バレンタインには少し早かったが、この豪勢な札束の魅力には勝てず、送る方も貰う方も中身見たさが勝ってしまい、11日の月曜日、札束の箱を開け中身の確認と相成った。
一同興味津々だ。札束の箱を開けると、中から1万円札や5千円札、そして1千円札が印刷された小袋が11個出てきた。あまりの小ささに拍子抜けしてしまったが、あくまでお札にこだわるとは面白い趣向だ。何気なく聞いていると、長男の箱には1万円札が2個しかなく5千円札が多いという。それではと、私の札束箱を開けて数えてみた。何と、1万円札が3個もある。他を加えると、全部で5万4千円にもなる。少々大人気なかったが、「どうだ!」と長男に自慢げに言うと、悔しいことに、「俺のは5万7千円になるよ」と返された。どうやら私の方が、5千円札が少なく、千円と印刷された小袋が多かったらしい。
実際のお金ではないが、例え親子でも、負けるというのは悔しいものである。ただ、小袋から出てきたチョコレートは、作り手のこだわりなのだろう、やはりどれもお札の型取りがされている。早速ご相伴に預かった家内達の観察によると、中身は全部同じ1万円札だという。長男に負けて悔しがっていると、家内や娘たちから、「だから変わりないよ」と慰められてしまった。どうも、本当に悔しい顔をしていたらしい。まだまだ人間ができていない!
それにしても、あの手この手で消費者心理を揺さぶり、購買意欲を掻き立てる努力とセンスは見習うものがある。尚且つ、購買意欲には“遊び心”が重要な要素であることも教えてくれる。矢張り、逞しい商魂には易々と
乗せられてしまいそうだ。そんなこともあって、1ヶ月後にやって来るホワイトデーをどうしたものやら、と今から思い悩んでいる。と言うのも、次女の話だと「3倍返し」が世間の常識だというからだ。我が家だけで通用する“世間”なのか、 “都合の良い世間”なのか定かではないが、ともかく3倍返しだという。そんな話をしていたら、1万円札を口にした家内が、「○○の色とりどりのチョコレートが好い」と早くも注文を出してきた。
ひょっとすると、100万もの札束を選んだのは、ホワイトデーの餌だったのかも知れない。恐るべし、我が家の女性陣!
【文責:知取気亭主人】
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「お札」と「お礼」、似ているよね!
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