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知取気亭主人の四方山話
 

『衝撃波の衝撃』

 

2013年2月20日

数少ない友好国の、あの中国でさえ思いとどまらせようとしていたのに、2月12日、北朝鮮は3回目となる地下核実験を強行した。国際社会の度重なる経済制裁と猛反対の中、これらの声を無視する形で強行してしまったのだ。しかも、「これまで行った2回よりもより軽量小型化された核弾頭を爆発させた」との声明を発表したというから、不安はますます募る。これで、北朝鮮は、昨年に強行した事実上の長距離ミサイル発射実験の成功と合わせ、核ミサイル技術を手に入れたことになる。それだけでも不安なのに、これがテロ組織やテロ国家と揶揄される他国に売り渡されるのではないか、と余分な心配もしなければいけない。

韓国国防省の発表によれば、今回行った核爆発の規模はTNT(高性能火薬)に換算して6〜7キロトンと推定され、この爆発によりマグニチュード4.9の人工的な地震を観測したという。ヒロシマに投下された原子爆弾が約15キロトンだというから、この約半分の規模だったことになる。半分とは言え、記録として残されているヒロシマの惨状を見れば、原子爆弾自体が凄まじい破壊力を持った爆弾であることに違いは無い。その上、目に見えない放射能は、沈黙の武器となって長期に亘り人体や地域を汚染し続ける。

かの国が民主主義国家で、理性ある行動が期待できる国であれば不安も半減されるのだが、拉致問題を始めとする国家としてのあるまじき蛮行を見る限り、そんな期待を寄せるのは愚かな事だ、という事が見えてしまうから恐ろしい。分かりきった事だが、核武装などに頼らず、飢餓に喘いでいると言われている国民にもっともっと目を向け、国際社会の中で受け入れられるような施策をすべきである。そうしなければ、いずれ高いツケを払う事になるだろう。核爆発の凄まじさ恐ろしさが、自国に降り掛かった時のことを考えるべきだ。

そういう意味では、核爆発の恐ろしさを垣間見るような自然現象が、ロシアで起こった。宇宙という壮大な実験室が、世界の誰にも、どの国にも、そしてどんな民族にも憎しみを抱かせることがない形で、しかも原爆を使わず、莫大なエネルギーの凄まじさを世界中に見せつけてくれたのだ。こんな事は滅多にあるものではない。北朝鮮の地下核実験に時を経ずして起こったのも何かの縁だ。この出来事を教訓に、北朝鮮は直ちに核開発を止め、世界の国々も、核廃絶の決定を早急にしてもらいたいものである。

テレビや新聞で大々的に報道されている様に、カザフスタンに近いロシア中部のチェリャビンスク州に大きな隕石が落下した(現地時間、15日午前9時20分頃)。そして、衝撃波と見られる爆風によって窓ガラスが割れたり、壁が壊れたりして、1,200人を超す人が怪我をし、3,000棟に及ぶ建物に被害が出たという。被害は半径100キロもの広範囲に及び、“この世の終わり”と、恐怖を感じた人達も沢山いたらしい。米航空宇宙局(NASA)は、この隕石の大気圏突入時の大きさを、直径が約17メートル、質量は1万トンと推定している。また同様に、大気圏突入時の速度を、時速約64,000キロ(秒速約18キロ)と推定している。音速の凡そ50倍にもなる。

これだけの猛スピードで大気圏に突入すれば、衝撃波が発生するのは無理からぬことだ。また、音速をわずか超えたばかりでも凄まじい音なのに、幾ら遥か上空だと言っても音速の50倍となれば、想像を絶するエネルギーを持った衝撃波が発生したに違いない。尚且つ、上空でこの隕石が爆発したというから、テレビのニュース映像に映し出される閃光や衝撃波の凄まじさも、何となく納得できる。そして、遥か上空で発生した衝撃波なのに、あれほどまでのエネルギーを持っていたことには驚かされる。一体、隕石はどれくらいのエネルギーを持っていたのだろうか。

NASAは、この隕石が放出したエネルギーをTNTに換算して約500キロトンと推定しているという。ヒロシマに投下された原爆の凡そ33倍にもなる。これが、ヒロシマやナガサキと同じように600mを切る低空で爆発したなら、あるいは地上に激突していたのなら、とんでもないことになっていた。勿論、大気の抵抗があるから、余程大きな隕石でない限り地上に到達することはないだろう。しかし、地球上に残されたクレーターやその痕跡が示すように、可能性はゼロではない。今回の隕石騒動では、幸い亡くなった人はいないようだが、莫大なエネルギーの持つ破壊力の凄まじさを、まざまざと見せつけた。

今回のようなレベルの隕石落下は、数十年に一度のペースであるらしい。そう言う意味では、大気というバリアーに守られてはいるものの、地球はかなり危険性の高い状況にあると言える。

被災した人たちには申し訳ないが、今回の衝撃波が、核爆発によるものではなく隕石によるもので本当に良かった。エネルギーはヒロシマで炸裂した原爆以上の規模であるが、放射能による被害がないことだけでも救いだ。あの凄まじい爆風を見せられると、改めて原爆の恐ろしさを感じずにはいられない。この隕石による被害を体験しただけで、この世の終わりを感じた人たちがいるのだから……。

北朝鮮は、核ミサイル開発にひた走るのではなく、その技術や情熱を国民のために使うべきである。勿論、アメリカやロシア、そして中国など核保有国も、一刻も早く核廃絶を実現し、これまでのパワーを地球の安全のために振り向けて欲しいものである。さすれば、隕石による危険性を低減する方法を見出すことができる、かも知れない……。

【文責:知取気亭主人】

  
北陸の冬には珍しい筋雲(隕石ではない)

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