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知取気亭主人の四方山話
 

『絶食』

 

2013年2月27日

声高らかに宣言するほどのことでもないが、小生只今ダイエット中、である。多分諸兄も同じ状態と推察するが、年末年始の長休み中に“食っちゃ寝そしてまた食っちゃ寝”を繰り返した結果、少々体重が増えてしまったのだ。長休みに入る前に比べると、4キロほど太ってしまい、すんなり入っていたズボンが大分きつくなってきた。このままいくと着られる服が無くなってしまう、と心配になった訳である。

これまでも体重の増減は結構あって、今から30年程前入院した時に一番痩せていて64キロ、それから3年程経ってタバコを止めた直後に一番太って84キロ、都合20キロもの変動幅があった。それが、25年程前から72キロ〜76キロの中で収まるようになり、更に10年ほど前からは大体73キロ前後で安定していたのだ。ところが、欲望の趣くままに続けた暴飲暴食の因果は直ぐに出るものとみえ、休みの半ばには暫くなかった75キロ超が始まり、休み明けには77キロ近くの数値にギョッとさせられた。体の機能が衰えていく一方のこの歳になっても、こと体重の成長は、面白くないことに結構早い。しかも、たかだか4キロなのだが、その余った脂身がどこに付くかも問題となる。

50歳過ぎのお父さんやお母さん方は、風呂場の鏡の前で、異口同音に「こんな筈では…」と呟きながら腹をさすったこともある筈だから、多分分かっていただけると思う。若い頃だと比較的全身に付いていた贅肉が、歳をとると真っ先に腹に付くようになってきてしまうのだ。気持ちはいくら若くても、贅肉は正直である。居心地の良い腹に寄ってくる。その結果、ズボンがきつくなってきたという訳だ。特に、25年近く愛用しているスーツのズボンがきつくなってきた。25年も前のスーツが着られることをちょっと自慢していただけに、「これではいかん!」と一念発起、ダイエットを始めることにした訳である。

ダイエットといっても、これといった特別な運動をしている訳ではない。また、栄養管理された特別なダイエット食を食べている訳でもない。ただ、余分なエネルギーだと確信持って言える「夜のアルコール」のカロリー分を事前にカットしてしまおう、ということで昼間の食事制限をしているのだ。自分ひとりで食事をする時だけだが、1月の半ば頃から、昼間の食事をワカメスープ一杯とミカン3個だけにしている。自慢ではないが、栄養学的な裏付けは全くない。思い付きの成せる技、でやっている。

「効果覿面」とはとても言える代物ではないが、やり始めてひと月ちょっとで、やっと1キロ減った。たった1キロではあるが、嬉しいことに75キロ切りも見えてきた。とは言うものの、減量ペースが余りに遅いのと、時々あざ笑うかのように76キロ超えが訪れるのが少々気になっている。ただ、朝晩は量も質も気にすることなく食べているし、いつもの通り晩酌も頂いているから、こんなもんと言えばこんなものなのだろう。

ダイエットの方法としては、断食ダイエットと呼ばれるものがあって、1、2日、水分だけ取って絶食するとダイエットにもなるし整腸にもなって良い、と聞いたことがある。若い頃、暴飲暴食の直後に、勢いでチャレンジしたことはある。しかし、この歳になると口が卑しくなるのか、たった1日でも絶食は辛くなって来た。朝と昼を抜くのは何ともないが、夜の帳が降りる頃になると、腹が減り床についてもなかなか寝付けない。結局、液体やら固形物やら何かしら口に入れ、絶食は不成立となってしまう。

ところが、お坊さんの世界の話だが、世の中には凄い人がいるもので、比叡山には9日間も絶食する厳しい修行がある。比叡山の険しい山道等を7年掛けて合計千日間も歩く「千日回峰行」という仏教の修行の中に、5年目に700日の満行を迎えると行われる荒行だ。この荒行、絶食だけではなく、断水、断眠、で横たわることさえしてはいけないのだというから凄い。この荒行が済むと、時には84キロにも及ぶ行程を歩き、その後2年掛けて晴れて千日の満行となるらしい。でも、こういった無茶が出来るのは、精神的にも肉体的にもタフな人でなければ難しい。私のような煩悩に支配された俗物人は、ほぼ不可能だ。第一、大事な“絶食の切っ掛け”が見出せない。そう考えると、驚異の精神力と体力を持っている、深海生物のダイオウグソクムシは、何が切っ掛けで絶食をするのだろう。

インターネットで、三重県鳥羽市の鳥羽水族館で飼育されている“ダイオウグソクムシ”が2009年1月2日以来7年間も絶食している、という驚きのニュースを読んだ。「7年間も?そんな馬鹿な!」という事で、早速、鳥羽水族館のホームページを覗いてみた。すると、飼育日記の中に、「7年間も絶食…」のくだりは無かったものの、かなり絶食好きである書き込みがあった(http://www.aquarium.co.jp/diary/archives/1760)。日記によれば、3年以上何も食べなかったというのだから凄い。どうも、この深海生物は、かなりの小食らしい。ともすれば暴飲暴食になりがちな私としては、信じがたい精神構造だ。

ところが絶食に強いのは他にもいて、「地球最強の生物」と言われる“クマムシ”は、飲まず食わずの「乾眠」と呼ばれる状態から10年程経っても蘇生したというから、恐れ入る。(http://wired.jp/2008/09/09/「地球最強の生物」クマムシ、宇宙でも生存可能/

いやはや、人間以外の生物には想像を絶する強者がいるものである。

日頃の暴飲暴食はそっちのけで、かなりの覚悟で始める人間様の絶食と違い、強者生物たちは“たかが絶食”と達観しているのだろうか。きっと彼らには、腹が減って寝られない、という感覚がないのだろう。なんとも羨ましい限りである。

【文責:知取気亭主人】

  
植物も結構強者が多い

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