2013年5月22日
18、19日の土日、毎年定例となっている庭木の剪定をした。大きくなり過ぎて隣家に迷惑掛けないようにするのと、丁度今頃の季節に大発生するチャドクガを防止する目的もあって、この四方山話の第一話のとき以来、殆ど毎年やっている。ご存知の方も多いと思うが、チャドクガは結構厄介な相手で、手を抜くとツバキの木は丸坊主にされるわ、触るのは勿論、運悪く彼らの粉が風に舞って我が身の皮膚に付いただけでも、凡そ10日もの長い間激しい痒みに悩まされることになる。ところが、自然に対しては何でも興味を示す私は、しなくてもいいのに、どちらも経験してしまっている。あの激しい痒みがトラウマになっていることもあり、天候や仕事の関係で時機を逸した年は除いて、この時期の剪定は毎年欠かさないようにしているのだ。
「剪定」と言っても沢山の木をやった訳ではなく、どちらも2.5m程の高さに抑えてある、ツバキとコブシの木だけである。たった2本なのだが、俄か植木屋気取りで形を整えようと意気込むものだから、意外と手間暇が掛かる。その上、孫娘が遊びに来るとあって、凡そ半日ずつしか時間が取れず、結局土日の二日がかりとなってしまった訳である。
それでも、俄か植木屋を自認していることもあり、秋の金木犀と合わせ二度やる剪定作業を楽しみの一つにしている。そして、毎年、剪定後の樹形を見ては、親方気取りでたったひとり悦に入っている。ただ、家族からの評価はイマイチ高くない。どうも「庭木の管理はお父さんの責任」と端から思っている節があって、こちらから誘い水を掛けないと、期待する褒め言葉が中々返ってこない。尤も、つつましい家庭菜園に付いては、「プランタで育てているイチゴや野菜の管理は、妻の領分」と私も下駄を預けているのだから、「お互い様」と言えばお互い様なのだが…。
さて、そんな“お互い様の作業”をしている、と想像して頂こう。「御爺さんは山へ芝刈りに、御婆さんは川へ洗濯に…」ではないが、私がコブシの剪定を、妻が野菜の世話をしていると、隣の奥さんが妻に声を掛けてきた。井戸端会議の始まりだ。次から次へと盛り上がっていく会話を聞くとはなしに聴いていると、女性陣が我々男性陣より長生きする理由が良く分かる。声が大きくて元気、そして何でも会話のネタになる。そんな彼女達の“井戸端会議能力”の高さに、改めて感心させられてしまう。
話は次々と繋がっていき、「去年育てていた野菜の種が飛んで、今年又こんなに芽が出てきた…」と我が家の生命力旺盛な野菜たちの話にまで発展してきた。そんな会話を木の上から聞いていたのだが、妻が思い出したように、「そう言えば…」と、庭の片隅に突然姿を現した植物に話を振った。昨年“緑のカーテン”にとゴーヤとキュウリを育てた、俄か作りの花壇の片隅に、突然アザミらしきモノが姿を現したのだ。よくよく見ると、妻が毎年「採りに行きたい」と言っている、山菜のアザミにそっくりだ。
以前、私たちが採っていたアザミは、元々は結婚したての頃住んでいた地元の人に教えてもらったもので、静岡の従兄弟から「ミズアザミ」ではないかと教えられて以来、我が家ではずっと「ミズアザミ」と信じてきた、好物の山菜だ。柔らかい茎を灰汁出しした後醤油味で煮つけたものを貰ったのだが、妻はこれをえらく気に入って、以来チョクチョク近くの山に採りに行っていた。植物自体に詳しくない私たちは、曖昧な記憶を頼りに、目星を付けたアザミを採ってきていた。そして、貰ったのはこれに違いない、とずっと信じてきたのだ。
そのアザミの特徴を隣の奥さんに伝えると、「私も知っているから見せて」と言う。「近くの大学にもあるのよ」と言いながら見てもらうと、「どうも違う」と言う。大学に生えているアザミの特徴を言うのだが、木の上で聞いていると、「ここがこうで、あそこがこうなっている」と言われても良く分からない。妻が「でもこれまで食べてきたのはこのアザミだと思うけど…」と自信なさげに言うと、「でも私が知っているのと違う」と断言されてしまった。では、我々が「美味い、美味い」と言って食べていたのは一体何だったんだ、と俄かに心配になって来た。そこで、ネットで調べてみた。
調べてみて驚いた。何とアザミは日本だけでも60種類以上もあるのだという。そして、どれもが食用になる、とある。その中には、勿論、従兄弟が教えてくれた「ミズアザミ」もある。あることはあるのだが、山菜としてのアザミは、茎が伸びる前の新芽を食べるのが一般的らしい。ネット情報の殆どは“葉を食する”と書かれていて、“茎を食べる”と書かれているものは意外と少ない。必然的に、茎が伸びる前の写真か、茎は伸びるだけ伸び先端に花を咲かせている写真が殆どだ。茎が50〜60pも伸びた、我が家の庭に突然姿を現したくだんの植物を特定しようとしても、中々できない。葉っぱにはアザミ特有の刺毛があるから、アザミに違いない、とは思うのだが…。
ただ、葉っぱだけを見ていると確かにアザミにそっくりなのだが、アザミ特有の赤紫とは違う黄色の花を見ていると、もしかして「似て非なるモノ?」、とも思えてくる。“チャドクガ”と“蝶”ほどの違いはないにしても、である。
そこで、いつも頼りになる会社の仲間に調べてもらうことにした。その結果判明した名前が、“オニノゲシ”だ。アザミと同じキク科だが、外来植物だという。心配していた通り、私たちがいつも採ってきたアザミとは違うらしい。食べられないことはないようだが、やっぱり「似て非なるモノ」であった!残念!
【文責:知取気亭主人】
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オニノゲシ
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