2013年6月19日
前話でも書いたが、今回が四方山話11年目のスタート号となる。取り敢えず21年目を迎えられるよう、気分も新たに頑張っていきたい。今から10年経っても男性の平均寿命には届かないから、体力的には多分大丈夫だと思う。ただ、“三日坊主の遺伝子”をしっかり受け継いでしまっているから、ある日突然気力が失せて、中断させてしまうのが心配なところである。しかし、三日坊主と共に受け継いでいる“意地っ張り”が少しは頑張ってくれるのではないか、と期待もしている。プラス、「これから10年間継続させて21年目を迎える」を“目標”にすれば、萎えることが増えて来るであろう気持ちにも張り合いが出て、中断を防止してくれるのではないかと考えている。
この“目標”、何事をするにも無くてはならないものである。一番分かり易いのが、スポーツの世界だろう。プロ、アマに関係なく、スポーツの世界では“目標”が明確である。だからこそ、日々の辛い練習に耐え頑張れるのだ。プロともなれば、尚更ハッキリするし、より高い“目標”を持つことが要求される。そして、その“目標”に対する結果がどうだったか、も厳しく問われることになる。それは、チームは勿論、個人であっても、事業主である以上当然問われ、翌年の契約金に大きく影響することになる。
この様に、個人なり団体なりが活動する時には、必ず“目標”を持って行動を起こす。そして、その“目標”に向かって全力を尽くす。その活動の期限や区切りが来た時には、それまでの達成度やプロセスを検証し、次の行動に向けて行う改善の基本データとするのである。これは、当たり前のことである。“目標”は、子供の遊びや勉強なども含め、ヒトが自らの意思で行動を起こすときには、必ず持っているものである。そういった目標を持たないと、ヒトは努力できない。それほど、“目標”というものは、ヒトの活動において重要なものだと思う。ところが、そんな重要な“目標”が設定されないまま震災復興事業が行われていた、というから驚いて仕舞う。その事業とは、福島県内で行われている「除染作業」である。
14日の金曜日、カーラジオから流れてくるNHKニュースに耳を疑った。福島県内で行われている「放射性物質を取り除く除染作業」で、国と福島県内の市町村の90%近くが、「放射線量をどこまで下げるか」という“数値目標”を条項に盛り込まないまま業者と契約をしていた、というのだ。既に1兆円を超える巨額の費用が投じられているというのに、である。
NHKが国と32の市町村に今年4月までの契約内容について情報公開請求やアンケート調査を実施したところ、国と福島県内の28市町村が、契約に具体的な“数値目標”を盛り込んでいないことが分かったという。その理由として、「国内で例が無いため除染効果がどの程度あるのか知見が乏しく、“数値目標”を決めるのは難しい」としているらしい。しかし、NHKの取材によれば、作業に携わった人の中には、「ずさんな作業が出てきている」と指摘する人もいるらしい、(http://www3.nhk.or.jp/news/web_tokushu/2013_0614.html)。それは、もっともな話である。
“数値目標”が無くて、検査・検証は、一体どうやってするのだろうか。「どこまで放射線量が下がったか」、あるいは「放射線量が除染前と比べどの程度低下したか」など調べれば分かる筈なのに検証できない訳だから、「除染作業」という行為だけが検査の対象になってしまう。極論すれば、「やったかやらなかったか」だけが問われることになる。仮に、ずさんなやり方をして除染効果が然程なかった「●工区」と、丁寧なやり方をして●工区以上に効果があった「◎工区」があったとしよう。数値目標が無い契約では、どちらも「除染作業」さえしていれば、検査は合格という事になる。どう考えても、理不尽だ。
「国内で例が無いため、除染効果がどの程度あるのか知見が乏しい」というのは、確かにそうだろう。しかし、“数値目標”が無ければ、工夫も目標達成に向けての努力も生まれない。国内に例が無いならば、「我々の手で模範例を創ろう」とか、「その技術を何とか確立して、万が一の場合の世界のお手本にしよう」などの発想は、出てこなかったのだろうか。ましてや、政府を挙げて原発を輸出しようとするならば、そして世界に例を見ない原発事故を経験した国であるならば、それ位の発想が出なければいけない。また、「除染効果がどの程度あるのか知見が乏しい」と言うが、それならば、これまで行われた除染作業のデータ蓄積は出来たのだろうか。そのデータから割り出した効果的な方法とその効果について、分析は行われているのだろうか。今のままでは、どんなやり方が最も効果があるのか、そういった検証もままならないのではないかと心配になってしまう。
環境省は「目標を設けると、それよりも下げようという業者の意欲を逆にそいでしまう恐れがある」と話しているらしいが、本当にそんなことを考えているのだろうか。百歩譲って仮にそうだとしても、全てに安全な数値を設定すれば、何も問題は無い。復興庁幹部が被災地や関係する市民団体などを中傷するツイートを繰り返していた問題も含め、本当に被災者のことを考えているのか疑いたくなってしまう。知見の乏しい慣れない仕事に加え、人手不足による激務など、関係機関の職員も大変な苦労をしていることだとは思う。しかし、一番大変なのは被災者であることを、決して忘れないでいてほしい。
【文責:知取気亭主人】
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花の色で放射線レベルを測定できる指標植物は無いものだろうか? |
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